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拝啓 未来人様
拝啓 未来人様
四森
文芸・その他
2025年06月20日
公開日
1,233字
完結済
今書いている文章は、読んでくれる未来の人への手紙なんだ・・・

詩『拝啓 未来人様』(全文)



 文章を書く ということは


 すぐに伝えたい ことだけじゃない


 同じ時代を 生きる人だけに


 伝えたいこと だけじゃない


 もちろん 同じ時代の人にも 伝えたい


 けれども 未来人のあなた にも伝えたい


 未来では 私は死んでいる


 未来人から見たら 過去人の私にとって


 夏目漱石や 芥川龍之介 太宰治


 彼らが 既に亡くなっている


 人だと思っている のと同様に


 未来人の あなたにとっては


 私はすでに 死んだ人


 フランツ・カフカ が良い例だ


 カフカは 生きている時


 あまり 評価されなかった


 でも今 カフカの名を冠した 賞まである


 カフカにとっては 同時代の人ではなく


 カフカにとっての未来人が 評価をしたのだ


 まあ何も 同時代の人が 読んでくれるのに


 越したことはない


 けれども 漱石や芥川や太宰が


 彼らにとっての 未来人の私に


 向けて書いた わけではない と思うけれども


 それでも 彼らのバトンを 受け継いで


 そして 私は未来人に ちゃんとバトンを


 渡さなければならない


 もしかしたら 同時代の人から


 評価されない 言い訳に 聞こえるかもしれないね


 まあ それはそれで 仕方がない


 ちゃんと 同時代の人にも 評価されたい


 それは それとして


 今書いている 文章は


 未来人への 手紙なんだ


 未来人への メッセージなんだ


 そう 未来人とは あなたのことだよ


 あなたにとって 私が 何者かって


 私の 文章からしか お伝えできないんだ


 でも 未来人にとって 過去人の


 私のことが 少しはわかってくれたら 嬉しいな


 くどいようだけれど 同時代を生きる


 あなたに向けても 書いている


 あなたも 未来人に向けて メッセージを残してほしい


 私の言葉が 残るかは 心もとないから


 みんなで たくさん 書いて


 未来人が 読む文章を 多く残そう


 みんなで 未来人への 手紙を書くんだ


 こんな 些末で 矮小なネオページ作家・・・


 いや 自虐は 流行らないね よそう


 みんな 自信を持って 未来人への


 手紙を 書こう


 そんな 決意表明が もしかしたら


 同時代のあなた ではなく


 未来人のあなた に刺さるかもしれない


 未来人のあなた ではなく


 同時代のあなた に刺さるかもしれない


 表現って わからないから


 思いがけないところに 刺さる


 刺さってくれて ありがとう


 もし 私の文章が


 あなたの心に 引っかかったとしたら


 それは 私の成果ではなく


 あなたの感性が 優れているんだ


 残念なことに 漱石には読んでもらえない


 芥川にも 太宰にも 私の文章は


 読んでもらえない


 でも あなたがいる


 同時代の あなた かもしれないし


 未来人の あなた かもしれないし


 読んでくれて ありがとう


 これって とんでもない奇跡なんだ


 同時代の皆様 未来人の皆様


 どうか どうか


 バトンを繋ぐことを 忘れずに


 人類が終わる その日まで


 過去人は 未来人へ メッセージを紡ぐ


 でも 一番 心を動かしたいのは


 あなただ


 同時代のあなた


 未来人のあなた


 あなたが 読んでくれたから


 私は 存在すると


 私は 存在したと


 そういうことに なれる


 同時代人か 未来人か 分からないけれど


 あなたに 感謝


 あなたも あなたの使命を


 でも そんな偉そうなことを


 言える立場じゃ なし


 とにかく 過去から 今 そして未来へ


 連綿と繋がる 時空の


 私の文章は 時空を 旅に出る


 未来人のあなた 私の文章を


 かわいがって ください


 もちろん 同時代のあなたも ありがとう


 感謝



 【おわり】



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