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第11話

私は即座に体の跡をスマホで撮って送った。

付けたメッセージ「お兄様の傑作よ」


小雪の目が鋭く光り、勢いよくスマホを投げ捨てようとした。


昨夜、兄が用事があると言って急いで出て行ったのは、真希と密会するためだったんだ!!!!!

真希は死ね、拓海も罰を受けるべきだ!


ドアを開けて拓海が入ってくる。

小雪は咄嗟に手を引っ込め、目つきは再び澄んだものに戻った。


拓海が彼女をじっと見る。さっき、小雪の表情が歪んで見えたような……


「お兄様、どうかされました?」

見直すと、小雪の瞳は澄み、蒼白い頬の可憐で純粋な妹のまま。さっきは見間違いだったのだろう。

「退院したいって言ってたから、手続き済ませたよ」

小雪は拓海の様子が普段と変わらないのを見て、探るように言った「兄、今回は……一緒に帰らないわ」


拓海は少し驚いた「どうして?」

江藤小雪は唇を噛んだ「お義姉様が気を悪くされるから」

何度か前のように、兄が引き留めてくれると思っていた。だが今回は、拓海が「わかった」と答えた。


「南山に別荘があるんだ。君の好みで内装してある。まずはあそこに住んでくれないか。あの女は……気性が荒いから、俺から言っておく」

小雪は静かに、拓海が自分の荷物をまとめるのを見つめていた。


シーツを握りしめる手に、少しずつ力が込められていく。

拓海……ついに真希に心を動かしたのね。あの女と一緒になるなんて、私が許さない。


少し休んだ後、拓海が買わせた服に着替え、出かけようとした。

ちょうど戻ってきた拓海と鉢合わせた。


彼は大小さまざまな食材の包みを手に提げている。

「レタスとオクラ、それに鯉を買った。手料理してあげる。」

どれも私の好物ではない。

たぶん、これらは全部江藤小雪の好きなものなんだろう。


「お気遣いなく」私は外へ向かう。

彼は遮った「出かけるのか?」

「ええ」


拓海は荷物を置いた。

「話し合うべきだと思う」

「私たちに話し合うことなんて何もない」

彼をかわして外へ出ようとすると、彼は私の手を掴んだ。


「今までは……態度が悪かった。反省している。これからは、しっかり暮そう。小雪にこれ以上迷惑をかけないでくれ」

結局は江藤小雪を守るためだった。


「拓海、はっきり言わせてほしいの?」あの女を生かしておくなら、全員まとめて道連れよ!江藤小雪のことが好きだって、知らないと思っているの?彼女の写真を見ながらオナニーしてるのも、全部お見通しよ!」


拓海の平静な表情がひび割れた。

「お前……」

「そうよ、全部知ってるの。警告したでしょう?私にかかわらないでって。それなのにあなたたちは何をした?『しっかり生きていこう』の一言で、あなたたちが私に与えた傷や屈辱を水に流せと?寝言は寝て言って!」


彼の手を振りほどき、彼の険しい表情など全く意に介さず。

「この件、これで終わりにはしないわ。江藤小雪の評判を台無しにしたくなければ、私に近づかないことよ」


江藤小雪が拓海との関係を明かそうとしないのは、逆に私のチャンス。

人を刺激するなんて、私だってお手のもの。


私が狂って江藤小雪を壊すのを恐れているなら、もうこれ以上絡んでこないはずだ。

ドアを開け、最後にもう一言付け加えた。

「昨夜のことは、犬に噛まれたと思ってやるわ」


ドアの内側で、拓海は深いため息をついた。眉間を揉みながら頭を抱える。最大の秘密がばれたのだ。


今回は真希を簡単にはなだめられそうにない。彼女がここまで怒っているということは……小雪をまた傷つけるかもしれない。


配下にメッセージを送り、真希を監視して過激な行動を起こさせないよう命じた。



あと二日でここを離れられると考えると、真希は気分が高揚し、食欲も湧いてきた。

道端で串焼きを食べながら座る。

ちょうど楽しんでいるときだった。


数人のチンピラが向かいに座り、先頭は金髪の男だ。

「ねえちゃん、一人?」

無視する。

「俺たちと遊ぼうぜ」先頭のチンピラが突然、私の体を触った。


私は手にした串焼きをいきなり彼の顔に投げつけた「失せろ!」

チンピラたちが指さして喚く「このクソ女、覚えてろよ!」


こうしたチンピラは最も厄介だ。彼らが去るとすぐに、私は会計を済ませて立ち去った。


ホテルに戻り、シャワーを浴びてゆっくり休もうとした。

突然、ドアが蹴り破られた。


私は驚いてベッドから飛び起きた。


「誰だ!?」

「俺だ」

拓海が冷たい風を纏い、ボディーガードに護衛されて室内に現れた。

彼の陰鬱な眼差しは、私の背筋を凍らせた。


「何の用よ?」

「連行しろ」

「ちょっと!」

ボディーガードに説明も聞かず車に引きずり込まれた。

私は激怒しそうだった。


「夜中に突然私を拉致するなんて、何をする気!?」


拓海の全身に重い低気圧がまとわりついている。

「真希……俺はお前とちゃんとやっていく覚悟を決めたのに。なぜ小雪を傷つけることをやめない!」


江藤小雪にまた何かあったのか?

「拓海、もしかして江藤小雪の髪の毛一本でも抜けたら、全部私のせいってこと?」

「まだ言い訳する気か!」


パン!

写真が私の顔に叩きつけられた。

そこには私が数人のチンピラと同席している様子、中にはチンピラに顔を触られている写真もあった。


「私を盗撮したの?」

拓海はもはや清らかな仏の子から、是非も弁えない悪魔へと変わった。


彼の冷たい視線がゆっくりと私の顔をなぞる。

「なんて美しい顔……そして醜い心臓」

彼は私の髪を掴み、無理やり顔を上げさせた。


記憶の中の真希は、気は強いが悪い娘ではなく、むしろ時々間抜けで可愛らしいところがあった。

だからこそ結婚相手に彼女を選んだのだ。

だが今の彼女は何をしている?

小雪に嫉妬し、繰り返し陥れようとしている。罰を与えても反省せず、むしろエスカレートする一方だ!


「お前を尾行させていなかったら、お前がそんなに邪悪だとは知らなかった……小雪をレイプさせるなんて!」


江藤小雪がレイプされた?

「違う!私の仕業じゃない!彼女を恨んではいるけど、女の子の名誉を傷つけるような真似はしないわ」


「否認か?」

拓海は写真のチンピラを指差した「これがお前がチンピラを使って小雪に暴行を加えた証拠だ!」


「たかが写真数枚で私を有罪にするつもり?納得できないわ。そのチンピラたちは?彼らを見つければ私の冤罪が証明できる!」

「フッ……奴らは自供したぞ。お前が黒幕だと!」


私はあまりに甘く考えていた。

誰かが故意に冤罪を着せようとするなら、何もしなくても罪人にされてしまうのだ。

このチンピラと遭遇した瞬間から、私を陥れる罠はすでに始まっていた。


江藤小雪……お前は本当に恐ろしい。

私を陥れるためなら、自分自身にそこまで酷い仕打ちをできるとはな。


「代償は払ってもらう」


不吉な予感がした。

江藤小雪の今回の件は重大すぎる。もし彼らが私の仕業と決めつけたら、私に待っているのは何だろう?

身震いするような寒気が走った……


「行かないわ!降ろして!」

ドアはロックされ、開かない。背後には拓海の陰鬱な眼差しがある。

しばらくすると、車は廃墟となった荒れビルの前で停まった。


「降りろ!」拓海に引きずり降ろされ、無理やり七階へ連れて行かれる。

そこに座る白い影が一目でわかった。

あまりにも見慣れた、江藤小雪だ。


「小雪、真希を連れてきたよ」

小雪がゆっくりと振り返る。彼女の顔には暴行されたような青あざがあり、まるで壊れかけの陶器の人形のようだった。


怨みを含んだ一つ一つの音節「お兄様」

「いい子だ、主犯を連れてきたから。まず降りておいで?」

拓海は慎重に声をかける。


彼の手は震えていた。最愛の人を失うかもしれない恐怖が、細胞の一つ一つを緊張させている。

「悔しい……お兄様。もう汚れてしまった。憎い!」江藤小雪が絶叫する。


「小雪、お兄様にどうしてほしい?彼女を殴る?罵る?何でも言ってごらん。お兄様は何でもするから。だから降りてきてくれ」

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