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第13話

しかし、過ちを犯したなら罰を受けるべきなのに、なぜ彼女はそんなに引きずっているんだろう。


拓海は長い間、私をじっと見つめながら考え込んだが、結局わからなかった。


小雪からの電話を受けた。

「お兄様、私を追い出そうとしているの?」

小雪はついさっき、拓海の部下から国外へ送り出すと告げられていた。

電話は、それが本当かどうか確かめるためだった。


「小雪、国外であらゆる準備を整えた」

「なぜ?」


すべてを終わらせたかったからだ。

真希と小雪の争いを、そして小雪への妄想を。

小雪は、自分みたいな汚れた心の兄を受け入れるはずがない。彼女を台無しにもできない。


送り出し、残りの人生を幸せで平穏に過ごさせること――それが彼にできる最高の愛だった。

拓海に直接そう告げられ、小雪は泣き崩れて何度も気を失った。


こうなるはずじゃなかった。

自分の想定では、拓海と真希は完全に決裂し、あの事件を経た兄は完全に自分を愛し、心配し、自分以外を求めず、一生自分を大切にし、あらゆる手段で守ってくれるはずだったのに!

一体どこで間違えたのか?


彼女は髪をかきむしりながら、狂気の眼差しで見据えた。

そうだ、自分があまりに平静すぎたせいか?

そう、彼女はレイプされた被害者だ。狂うべきだった!


「ボス、小雪お嬢様が自殺騒ぎを起こしています」


拓海は病床の私を見て、額に軽くキスした。

「すぐ戻る」


江藤小雪も手首を切っていた。

拓海が駆けつけた時、小雪は手首を押さえ、誰も寄せ付けないように包丁を構え、悲壮な表情を浮かべていた。


「小雪」

拓海の姿を見て、小雪は崩れ落ちた。


「兄さん、私を捨てないで。汚れてなんかない、ちゃんと洗ったから。汚れてなんかない!」


拓海は彼女の手首の、もうすぐ回復しそうな傷を見て、真希の骨の奥まで達していた深い切り傷を思い出した。


彼女は本気で死を望んでいた。

一方で小雪は、ただ自分を従わせたかっただけだ。

この妹は、彼が思っていたほど純粋ではなかったようだ。


拓海は近づき、落ち着いて小雪から包丁を取り上げ、丁寧に彼女の傷の手当てをした。


江藤小雪は拓海の答えを待ち続けた。


手当てが終わると、拓海は彼女の両手を握り、最も優しい口調で最も残酷な言葉を告げた。

「向こうでは、家も使用人も全て整えた。やりたいことを何でもして、残りの人生を自由に生きていける。僕もよく会いに行くから」


それでも追い出すというのか。

もう彼は自分を心配していない。彼は自分を捨てたのだ。何をしても、拓海はもう自分の元には戻らない。


小雪の心の最後の防衛ラインが崩れた。

拓海が手に入らないなら、彼を壊してやる…。



翌日、拓海に連れられて病院に行った。

「ここで待ってて、車を取ってくる」

彼は真希の頭を軽く叩き、駐車場へ向かって歩き出す。


少し離れたところで、小雪が力強くハンドルを握っていた。


真希、これでお終いだ。


ブォーン!

エンジンが唸り、周囲から悲鳴が上がった。

「逃げろ!この車おかしいいぞ」


拓海が振り向くと、一台の車が真っ直ぐに真希に向かって突っ込んでいくのが見えた。

もちろん私にも見えた。

拓海の慌てた表情も、彼が駆け寄ってくる姿も、瞬く間に私を押しのけたのも。


そして、彼は飛ばされた。

私は視線を動かし、地面に叩きつけられた彼から血が流れ出るのを見て、それから車を、運転席で狂乱した表情の小雪を見た。


拓海は重傷で入院し、小雪は逃亡した。

拓海の部下たちが彼女を探していた。

私は拓海のベッドの脇に座り、彼がどんどん見知らぬ存在になっていることに気づいた。


記憶の中の月影のような存在は、次第にぼやけ、呼吸器をつけた病床の人物と重ならない。


もし今、呼吸器を外したら死ぬだろうか…。


残念ながら、実行する機会はなかった。

首筋に刃物が当てられたからだ。

振り向かなくても、相手が誰かはわかる。


「よくも来たな」

小雪はキャップとマスクで顔を隠し、目の下にくっきりと隈ができていた。

どうやらこの一夜は、彼女にとって辛いものだったようだ。


「真希、本当に運が強いわね。何度殺そうとしても死なないんだから!」

私は微動だにせず、首筋に刃が赤い痕を残す。


「あの別荘の火事、お前がやっただろ?わざと私の部屋をロックして、焼き殺そうとしたんだ。それに今度のレイプも、お前の自作自演だ」


江藤小雪はすでに狂乱の淵にいた。

彼女は認めた。

そうよ、全部私がやったのよ!でもね、兄さんが私を捨てて、国外に追い出して自生自滅させようとするなんて思わなかった!お前は死ぬべきだ、拓海も死ぬべきだ、お前たち全員死ぬべきなの!」


私は信じられなかった。

拓海が小雪を国外で自生自滅させるなんてありえない。きっと万全の準備をして送り出すはずだ。小雪を守るためだろう。


残念ながら、人食い花は所詮人食い花だ。


「江藤小雪、自分の何が間違っていたか分かっている?」

「私に間違いなんてない!」


真希は独り言のように言った。

「病院に来るべきじゃなかった」


何?

ドアの外で、拓海のボディガードたちが突入し、江藤小雪を押さえつけた。

実は最初から、江藤小雪が来ることは分かっていた。

彼女は自信過剰だ。自信過剰な者は大きな失敗をするものだ。


江藤小雪は閉じ込められた。

拓海は翌朝、目を覚ました。


目覚めてすぐに、江藤小雪に関する知らせを受けた。

警察に突き出したと。


殺人未遂の罪で、有罪となれば、死ななくても十数年は刑務所に入ることになる。


そして昨夜の二人の会話も証拠として録音していた。

拓海は低い気圧を漂わせ、私は彼の正面に座り、彼と見つめ合った。


「何か言いたい」

「どうすれば小雪を許す?」


予想通りだ。

小雪を守らない拓海は、もはや拓海ではない。

違うのは、心がもうそのことで波立つことはないということだ。


私は小雪との会話を拓海に聞かせた。

「彼女は君を殺しかけたんだぞ?それでも守るのか?」

「あれは全部事故だったんだ。彼女は怒っただけ…」


拓海、もし君の口調がもっと確信に満ちていたら、私もすべてが事故で、小雪の軽率な発言だったと信じたかもしれない。


でも、彼が目も心も見えなくなり、どうしても小雪を守ろうとするなら、この二人に機会を与えるべきだろう。


私は離婚届を差し出した。

「サインして」

拓海は書類の一番上の大きな文字と、左下にある私の署名をはっきりと見た。

本当に離婚したいと思っていたのか…。


彼はサインを拒否できなかった。

私はサインしなければ絶対に告訴を取り下げないと主張した。

拓海はついに、自分の名前を書いた。


よかった、すべてが終わった。

私は急いで大使館へ向かい、新たな生活を迎えようとした。

だが、日曜日で休館だと告げられた。


もう一日待たなければならない。

この一日一晩はホテルで過ごそう。


目を覚ますと、見知らぬ倉庫の中だった。

隣には、同様に縛られた江藤小雪が横たわっていた。


私たちは誘拐されたのだ…


「目覚めたか?」

頭の上からかすれた声がした。

例の金髪のチンピラだ。


私は全身の血が凍る思いだった。

動こうとしても手足が縛られているのに気づいた。


「何をするつもりだ?金はもう払ったぞ!」

金髪の男の顔には何本もの傷跡が走り、肉がめくれ上がって醜く歪んでいた。片腕もなく、歩くのも不自由そうだった。


彼は私の頬を平手打ちした。

「クソ女、お前たち二人のせいで、俺と手下はお前の男に散々な目に遭わされたんだぞ。金で解決できると思ってんのか?今日こそ、代償を払わせてやる!」


今回のことは金で解決できる問題ではないと分かった。

「焦るな、すぐに分かるさ」

本当にすぐだった。30分もかからなかった。

鉄の扉が暗闇の中で鈍く耳障りなきしむ音を立て、そして聞き覚えのある声を聞いた。

「来たよ」

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