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第2話 異世界仕様

 映画ランボーが好きでミリオタになった俺。

 もちろん、作品の全てが好きだ。

 愛してるといってもいい。

 それでもどれが一番かと問われたら6作目、

〈ランボー ファイナルイーター〉と迷わず答えるだろう。


 ファイナルに相応しく、敵はゼリビアという悪党しかいない孤島の小国。

 そんな国を相手に、サバイバルナイフ一本で立ち向かうその姿。

 それは正に戦場の神だった。

 最終的にキルした人数は8,125人。

 ぶっちゃけ、異常である。


 そこで活躍したのが、

 この〈RANBO-06 FEファイナルイーター〉、愛称ランボーだった。


 まるで体の一部のようにしっくりとくる。

 異世界で3年近く握っていたのだから当然といえば当然だ。


 その異世界から再び俺は現代へと舞い戻った。

 しかも、どうやら俺にとっておあつらえ向きの現代日本へと。


 いいね、そうこなくっちゃ。


 社畜で生かされる旧現代日本がナイトメアモードならば、この新しい現代日本はカジュアルモードみたいなもんだ。

 俺はランボーのを握りしめると、玄関に向かった。


 ゴブリンはまだ馬鹿の一つ覚えみたいに玄関ドアを叩いている。

 インターホンでも押せば、シュールで笑えるのにな。


 俺はドアの殴打が止まった瞬間に鍵を開け、すぐさまドアを開いた。

 外開きのドアがゴブリンの頭に直撃。

 体勢を崩すゴブリン。

 201号室の男の頭が刺さった槍が、手から落ちた。


 よく見たら腐りかけだ。

 ぐろいな、おい。


 俺は一歩足を踏み込むと、ランボーでゴブリンの首を横に削ぐ。

 どす黒い血を噴出させるゴブリン。

 その腹を蹴って倒すと、左右に目を向ける。


 左に2体。右に3体。

 計5体のゴブリンが騒動に気づいて、俺という敵を認識する。


 結構いるな。


 ただの感想であり恐れは微塵もない。

 常人の感覚じゃないよなぁ、と思わず笑ってしまう。

 お仲間を倒されて警戒しているのか、途中まで来て足を止めるゴブリン達。


 じゃあ、俺から行ってやるかと、左にいる2匹のほうから仕留めることにする。


「ギャアアッ、ギャギャアアッ」


 と、もはや聞き飽きたゴブリンの威嚇の声。

 そのゴブリンが慌てたように剣を振り上げる。

 相変わらず程度の悪いもん使ってんなぁなどと思いつつ、振り下ろされた剣を難なくパリィ。


 あれ?って感じのゴブリンが首から血を飛散させる。

 それを目撃した後ろのゴブリンが、慌てふためき奇声を上げる。

 その奇声が自らの断末魔に変わるのに2秒。

 俺のランボーが、ゴブリンの首を掻っ捌いた。


 人型モンスターを殺すには、首を切ってしまうのが手っ取り早い。

 だがデメリットとして血の噴出量の多さがある。

 大事な服ではないが、モンスターの血が掛かるのは気持ちのいいものではない。


 あいつらは別のところにするか。


 残りは3匹。

 俺はゴブリンが使っていたなまくらを拾い上げると、即席の二刀流にする。

 ゴブリン達は何か吹っ切れたのか、恐れを知らぬゾンビのように突っ込んでくる。


 俺は転がっているゴブリンの死体を蹴り飛ばす。

 先頭を走ってくるゴブリンがその死体につまづく。

 前のめりに倒れたところになまくらを叩きつけてやる。

 切れ味が悪いのか、頭に食い込んだ剣はそのまま抜けなくなった。


 後ろの一体が、頭から剣を生やしたゴブリンを飛び越えてくる。

 飛び越え様に槍で突き刺そうとしてくるが、食らう俺じゃない。

 漫画のようにヒョイっと避けると、その脇腹にランボーを突き刺す。

 そして槍を奪うと、後続のゴブリンめがけて投げつけた。


 超高速で飛ぶ槍はゴブリンの右目に直撃。

 そのまま吹っ飛ぶようにして階下へと落ちていった。


 ――やはりな。

 今の槍を投げたときのりょ力で明確に分かった。


 


 詳細に述べれば、膂力のほかに、心構え、立ち振る舞い、技術、体力、反射神経など、自分のステータスに関わることが半端なく高いレベルにある。

 まるで強くてニューゲームの主人公のようだ。


 但し、武器はそうではないようだ。

 十分に切れ味がよく使い勝手のいいランボーだが、常識の域は出ていない。


 と、そのときそのランボーが光った。

 次に眼前に浮かび上がってくる文字列。

 まさかこれは――、



【RANBO-06 FE のレベルが1→3に上がりました】

【殺傷力 262→ 292】rankD

【親和性  0→  12】rankG up!

■材質/ブレード

 鉄



「は、ははは。ここは本当に現代日本かよ」


 思わず笑ってしまう。

 まさか武器も異世界同様にレベルアップするとは思わなかった。

 と同時に、モンスターがいるならそれもアリかと納得する。


 殺傷力はさておき、親和性。

 このステータスもあるということは、も手に入るわけか。


 今のところ階下からゴブリンが来る気配がない。

 俺はとりあえず自室に戻る。

 今後のことを考えなくてはならない。


 最大級激甚災害の表示と、俺が出くわしたこの状況。

 そこから考えうる一つの結末。


 少なくとも、この現代日本にはモンスターが溢れている。

 しかもそのモンスターは、異世界オベーリュア産の可能性が高い。

 だが、そのモンスターがなぜ現代日本にいるのかは不明だ。


 俺が関わっているのか?

 分からない。

 分からないなら考えても仕方がない。時間の無駄だ。

 今やるべきことをやればいい。


 まず、〝生きた人間に会うこと〟。


 そいつが年端もない子供でなければ、この状況になった理由を知っているだろう。

 案外、このアパートの部屋のどこかにまだいるかもしれない。


 俺は準備を整える。

 ここに留まるつもりはない。


 別に異世界オベーリュアにいたときのように、世界を救ってやろうなどという気概も情熱も、ましてや使命感もない。

 あるのは肥大化した好奇心と、わずかばかりの責任感のみだ。


 サバイバルナイフは念のために、ほかに1本持っていこう。

 万が一ランボーを無くしてしまったときのためだ。

 まあ、無くすことはないが、だからこその念のためというやつである。


 あとはガスガンだな。

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