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第5話 BB弾スチール

 ゴブリン・レッドナイトは巨体とあって、いい的ではある。

 ――あるが、鎧と盾の防御力の前に今のH&C P30Lウィックでは歯が立たない。


 生身の部分を狙ってもいいが、そこそこ強靭な皮膚だったはず。

 大したダメージを与えることはできないだろう。

 よってRANBO-06 FEランボー での接近戦という選択肢しかない。

 ――のだが、それは少々もったいない。


 ゴブリン・レッドナイトのレベルは170くらいか。

 異世界オベーリュアでは、こいつは最初の強敵だった。

 一端の戦士となった俺が、3人の仲間達と苦戦の末に勝てた相手だ。


 そのときのランボーとウィックは確か、レベル50ほど。

 つまり、現状レベルが一桁の両武器を使用して倒せばどうなるか。

 両武器のレベルは一気に上がることになる。


 やっぱり、ウィックである程度ダメージを与えて仕上げにランボーでサクっとヤるのがいいよな。


 プラン決定。

 まずは、雑魚敵ゴブリンをウィックで始末。

 そのウィックのレベルが上がったところで、ゴブリン・レッドナイトを迎え撃つ。


 突っ込んできたゴブリン・レッドナイトが鋼の剣を振り下ろす。

 モーションがでかくて、避けろと言っているようなものだ。

 俺は左方へ飛んで避けると、そばにいるゴブリンに銃口を向ける。


 バシュッと心地よい音。

 発射されたBB弾が、ゴブリンの腹に命中。

 身をよじって、その場に倒れるゴブリン。

 BB弾が皮膚を貫通して内臓にダメージを与えたのだろう。


 殺傷力は最初の5から62と、12倍。

 相手はモンスターの中で最弱のゴブリン。

 当たり前といえば当たり前の結果だ。


 じたばたしているゴブリンの額にBB弾をお見舞い。

 すると、血走った両目をかっと見開き、すぐに静かになった。


 ランボーを使う必要はなさそうだ。

 俺は2体目、3体目、4体目と順調にウィックでゴブリンを仕留めていく。

 その間、ゴブリン・レッドナイトは俺を追いかけている。

 が、俺が旋回しながら逃げているので、一向に追いつけない。

 そのまま走らせておくとしよう。

 いざ、対決のとき疲労で動きが鈍くなるかもしれない。


 5体目のゴブリンを倒し、BB弾が尽きる。

 マガジンを交換しようと思ったが、3本全て使い切っていた。


 くそ、めんどくせぇな。


 俺はゴブリン達から距離をとると、ウィックからマガジンを抜き取る。

 次にリュックサックからBBローダーを取り出し、ローダーの先端をマガジンのBB弾挿入口に差し込む。


 プランジャーを何度か押してBB弾を満タン装填。

 再びマガジンをウィックに戻し、セット完了。

 息を吹き返したウィックが次々にゴブリンを彼の世にお届け。

 残りの一発が、最後のゴブリンの首にめりこんだ。


 よし、ゴブリン達を全てウィックでせん滅した。

 これでレベルが4でも上がれば、殺傷力が100は超えてくるか。

 100あれば、ゴブリン・レッドナイトの体にある程度のダメージを与えることができるはずだ。


 すると、ウィックが光る。

 きた。レベルアップの時間っ。



H&C P30Lウィック のレベルが7→11になりました】

【殺傷力 62→ 100】rankE↑up!     

【親和性 42→  62】rankF

 ■弾丸

 BB弾プラスチック→BB弾スチール

 ■ステータス

 クリティカル7% 



 殺傷力がキリよく100。いいね。

 あとはBB弾がプラスチックからスチールへと、硬度が上がったようだ。

 この状態のウィックなら、ゴブリン・レッドナイトに少しはダメージを与えることができるだろう。


 さてそのゴブリン・レッドナイトだが、しわくちゃな顔を更に真っ赤にして怒り心頭のようだ。


「お前の頭は腐ったトマトか」


 そんな突っ込みが聞こえたのか、殺意を漲らせて突っ込んでくる。

 盾と鎧で完全防備のつもりだろうが、さてレベルアップしたウィックはどこまでできるか。


 俺は左足に狙いを付けて、ウィックを三発撃つ。

 鋼で覆われていない太ももに吸い込まれる。

 ゴブリン・レッドナイトの体勢が崩れた。

 スチールと言ってもBB弾。

 やはりダメージはそれほど通らないが、殺傷力と硬度の向上がBB弾に速度と重みを与えたのだろう。


 つまずいたようにつんのめさせて、壮大に転倒するゴブリン・レッドナイト。

 俺は横に避けつつ、ゴブリン・レッドナイトの頭に残りのBB弾を連続して発射。


 ゴブリン・レッドナイトは視界を確保するためなのか、兜は付けていない。

 それが仇となって全弾ヒット――を想定したのだが、BB弾は全て盾に弾かれた。


 いや、今の絶対、まぐれだろ。


 BB弾切れということもあり、立ち上がる前にランボーで足を再起不能にしてもいいが、もう一つあるBBローダーを使うことにする。


 BB弾なら山ほどある。

 ウィックがBB弾仕様の内は、残量など気にせずに使っていこう。


 BBローダーでマガジンにBB弾の補充完了。

 マガジンをウィックに戻したところで、ゴブリン・レッドナイトが立ち上がる。


 さあ、どうする?


 ――と待つ俺じゃない。

 一旦、ウィックをホルスターにしまったあと、地面を蹴ってこちらから打って出る。

 まさかこっちから攻撃を仕掛けてくるは思わなかったのか、慌てて剣を振り上げるゴブリン・レッドナイト。


 俺は横転している車に飛び乗ると、そこから更に跳躍。

 ゴブリンレッドナイトの剣が宙を斬る。


 人間離れした膂力りょりょくにより、俺はゴブリンレッドナイトの頭上を越えて、背後へと回る。

 落下していくその最中。

 両手で握ったランボーの刃がゴブリンレッドナイトの甲冑を上から下へと切断。


 甲冑は基本的に正面からの攻撃を想定している。

 ゆえに、背面の装甲は軽量化のため薄い場合がある。

 ゴブリン・レッドナイトの鎧は、その脆弱な部分が脆弱なままだったようだ。


 縦に赤い筋の入った、生身の背中が現れる。

 外しようがない大きな的。

 俺は円を描くように、全25発のBB弾をほぼ密着状態で背中に打ち込んだ。


「ガアアァァァッ!?」


 激痛ではないが、それなりに痛いといった感じの声。


 じゃあ、これはどうだ?


 俺は、円の中心にあるであろう心臓を、力を込めてランボーで一突きにする。


「ガ……ァ……」


 急速に生命の灯が消えていくゴブリン・レッドナイト。

 深く突き刺さったランボーを引き抜くと完全にこと切れたのか、小隊の長は前に突っ伏した。


アディオスじゃあな


 さてレベルはどうなるかな……?


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