俺は、地上帰還に必要なライフレベルの半分を達成したが、巨砲の喪失感が半端なく、地べたに崩れ落ちたままでいた。
なのにエア爺さんが呑気な声で祝福するから腹が立った。
《Lv 500達成おめでとさん!》
「何がおめでたいんだよ。こんな粗末なブツで地上に戻っても、ヘンタイ道を全うできないじゃないか!」
こんなサイズではぞうさん踊りぐらいしかできない。
「ぞうさん、ぞうさん、おーはなが……短いのね(泣)うわーん!」
俺は涙を流しながら腰に手を当ててフリフリと踊った。
”ヘンタかわいそうwww”
視聴者の同情が身に染みる。でも本音で言えば、赤スパチャが今すぐ欲しい。もちろん巨砲にも戻ってきて欲しい。
「同情するよりスパチャくれ」
”生意気www”
”スパチャの価値なしwwww”
しまった、同情を引いてスパチャをもらう計画がおじゃんになってしまった!
《そう嘆くな。レベル達成のご褒美を見れば、元気になるぞ》
エア爺さんが話し終わるか終わらないうちに、ふわーっと愛用コートが降ってきてピタッと俺の身体にフィットした。
「おおおお……」
俺は、あふれる涙を腕で拭い、美女が目の前にいないのに久しぶりにコートを開
「あっ?! 俺の伝家の宝刀が戻ってる!」
コートを開いたら、さっきまでのぞうさんはどこに行ったのやら、俺の巨砲は無事にそそり立っていた。涙が滝のように流れて大事なコートの襟を濡らしてしまった。
「おい、爺さん、いったいどういうことなんだ?!」
《また態度が……でもまあ、よい、巨砲帰還のお祝いに許してやろう。お散歩犬モンスターの時に経験したじゃろう? もっとも初体験はまだだだろうがな》
俺は、図星を当てられて焦った。
「余計なことを言ってないでさっさと説明しろ!」
《まーた態度が悪いのう……》
「初体験のことは、そっとしておいてくれ……いや、ください。それよりさっきのこと、教えてくれませんか?」
《そうじゃ、その態度じゃ。お前さんの巨砲は、ヘンタイ・モンスターが望む物に変身できるんじゃよ》
「でも俺の巨砲が俺の股間でポケットピストルに化けたとして、アイツのブツが俺の巨砲になったのはどうしてだ?」
《お前さんの巨砲が錯覚を起こさせたんじゃよ》
「ふーん?」
《納得してないみたいじゃな。とにかくお前さんの巨砲は、優秀な魔法使いってことじゃ。魅了の魔法だって使うじゃろう?》
確かに俺の巨砲は美女を魅了する。俺はエア爺さんの説明に納得した。決して単純だからじゃないぞ!
俺は、
「俺のような一流のプロと言われるようになるには、どんな条件がいると思う?」
俺はデューク西郷を思い出しながら、真剣な表情でスマホに向かって尋ねた。だが視聴者もエア爺さんはピンと来ないようだ。
プロとは、もちろんヘンタイのプロのことだ。
《はて?》
“意味不明wwww”
“ヘンタ、何言ってるんだ?”
反応が悪いことは気にしないことにした。眉毛を吊り上げて決め顔でスマホに向かって俺は答えた。
「……10%のサイズと20%の絶倫………そして、30%のヘンタイさ……残る40%も……サイズだろう……な……」
ほとんどの視聴者もエア爺さんもさすがにピンと来たのではないかと思ったが、エア爺さんの答えはなく、チャットには?だけが流れてきた。
仕方ない、俺から名乗るか。
「俺のまたの名は、ゴリゴ
“なんじゃそりゃあ!”
俺の鼻はべちゃッと潰れていて鼻の穴が大きいから、子供の頃はよくゴリラとかゴリとか言われていやだった。だが、31歳になった時に思ったのだ。ゴリはゴリでもゴリゴ
え、とっくに31歳を超えてるだろって?! いいんだよ、
《あー、やっと分かったぞ。元ネタは露出狂だろ?》
「違う! 俺は露出狂じゃない! 巨砲を見せてあげる親切なヘンタイだ! いや、デューク西郷だ!」
やっぱりトレンチコートがいけないようだ。デューク西郷はいつもスーツを着てるもんな。
《あー、デューク西郷か。似ても似つかないな。デューク西郷は、自分から寝る女を選べるんだぞ。お前はD貞じゃろう?》
「う、うるさいっ! 俺の巨砲がデカ過ぎるから、手合わせできないだけだ!」
《悔し紛れにそんなことを言わなくてもいいぞ。単に相手が見つからないんじゃろ?》
「違うぅぅ~」
“ヘンタ、さっきから爺さんと絡んでばっかりだな”
“ヘンタイ・モンスター退治はどうした?”
“悠長にしてて時間は大丈夫なのか?”
俺はエア爺さんに分かってもらえなくて悔しかったが、残り時間を指摘するチャットを見て急に時間が気になってきた。なんと言ってもここは地下。1日中薄暗くて何とか自分の周りが見えるぐらいなので、時間の感覚が全くない。
「今日は俺がここに落ちてきて何日目になる?」
《うーん、4日目かのう?》
「えっ?! あと1日しかないのか?! なのに俺が今まで遭ったヘンタイ・モンスターはたったの2匹だぞ? このダンジョンにはヘンタイ・モンスターがあふれているんじゃなかったのか?」
《ちょっと前まではあふれておったんじゃ。だがお前の前にこのダンジョンに落ちて来たヘンタイが勇者レベルだったんじゃ。ヘンタイ魔王まで昇天させてしまったもんじゃから、残るヘンタイ・モンスターはごくわずかになってしもうた。HenTubeのヘンタイ・ダンジョンチャンネルも開店休業状態だったんじゃ》
「なんじゃそりゃあ?! 話が違うじゃないか!」
《じゃから視聴者も久しぶりのヘンタイ・ダンジョン配信に喜んでおるんじゃ》
「喜んでいるなら、もっとスパチャくれたっていいじゃないか」
《スパチャあげてすぐに地上に帰られたらつまらないじゃろう? だからギリギリまでLv 1000達成させないのじゃ》
「他人事だと思って!!」
《その通り、他人事じゃな。だが視聴者もお前さんにここで終わってほしくないと思っているはずじゃ》
“明日まで俺達を楽しませてくれ”
“地上に帰ったらヘンタイ道を全うしてくれていいからさ”
視聴者は、エア爺さんの言う通りに思ってくれているみたいだ。俺は感激の涙を流した。
「ありがとう! ヘンタイ王におれはなる!!!!」
“おおー”
“ヘンタがヘンタイ王宣言www”
“やるなー”
チャットを見て俺は更に気をよくしてスマホに向かって再び宣言した。
「今からおれが!!!! お前らの”伝説のヘンタイ”になってやる!!!!」