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第6話 黄金のちくびーム

 俺が伝説のヘンタイ宣言してからすぐに、ぼぅーっと暗闇が光った。ヘンタイ・モンスターが現れる兆しだ。


 トレンチコートを着たしごできビジネスウーマンといった体の美女が目の前に現れた。ヘンタイとは全く縁がなさそうに見える。でもヘンタイ・モンスターなのだから、この女性もこの世のヘンタイに未練を残して死んでいるのか。もったいないな。


 彼女は、俺の姿を見てすぐにビシーッと指差して糾弾した。


「あんた、変態ね? そのコートを開いたら、裸なんでしょう?」


「その通り~!! ちなみにヘンタイはカタカナのヘンタイよん♪」


 俺はコートを勢いよくバッと開いた。巨砲が古代エジプトのミン神のようにそそり立っているのが彼女にも見えるはずだ。


「何よ、変態は変態でしょ!」


「それが違うんだなぁー。カタカナのヘンタイは、皆様に喜んでいただけて世の中のためになるヘンタイなのです」


「どっちもどっちの変態よ! そんな汚いモノ、見せないでちょうだい!」


「汚いなんて傷つくよ。ひどいなぁ……まあ、確かにヘンタイ・ダンジョンに落ちてから洗ってないけどさ……」


「く、臭そう!!」


「でもそれがまたいいでしょ? ほんとは大好きで見たくてうずうずしてるんだよね? ここはヘンタイ・ダンジョン、本音を言っていいんだよ」


 彼女は、俺の巨砲をけなしつつも、目を覆う指の間はスカスカでちゃんと巨砲を凝視している。視線が気持ちいい。俺の水鉄砲は臨戦状態になった。


“まさかこれで終わりなわけないよな?”

“そりゃないよ”

“最後までもっと楽しませてくれ!”


 あっけなさ過ぎてスパチャどころか、投げ銭の入る音も聞こえない。ここはブレイクスルーが必要だ。


「あたたたたたーっ!」


 俺は、ビジネスウーマン・ヘンタイ・モンスター(長ったらしい!)のおっぱいを両手で交互に揉んで決め台詞を叫んだ。


「お前はもう死んでいる!」


 その途端、バチーンと巨砲に衝撃が入った。俺は股間を押さえて地面にもんどり打った。今にもぶっぱなしそうだった巨砲はそれどころでなくなり、瞬時に縮んだ。


「ギャアアー! 痛い! 痛いよぉ……折れたらどうしてくれるの?!」


“女心が分からないアホwwww”

“自業自得www”

“死んでるのは確かだろ?”

“死んでいてもヘンタイに未練がある美女モンスターだろ?”

“じゃあヘンタイ・モンスター心が分からなかったんだなww”


 俺の巨砲をひっぱたいた美女ヘンタイ・モンスターは、俺のコート開で昇天しなかった。巨砲に物理攻撃を受けると言う多大な犠牲を払ったのにそれはない。


「どうすりゃいいんだ……」


 まもなく股間の激痛は引いたものの、俺は展望が見えなくて途方に暮れた。


 しかし、さすがのヘンタイ・マイスターの俺だ。美女ヘンタイ・モンスターの着ているトレンチコートに目が留まった。


「お姉さん、コートを開いてみたくない?」


「な、何言ってるの?!」


「そのコートの下は裸なんでしょ? 俺に見てもらいたいんだよね?」


「そそそそそ、そんなわけないでしょ!」


 慌てて噛んでる感じが怪しい。


「ヘンタイ信号みんなで渡れば怖くない! さあ、俺の掛け声で一斉にコートを開こう! いっせーのーで!」


 俺は掛け声と同時にコートを全開にした。でも美女ヘンタイ・モンスターはもじもじしてコートを1センチぐらい開けたかと思ったら、すぐにバッと閉じてしまった。


「見ーえちゃった、見えちゃった、いいもの見えちゃった!」


「えっ?! 見えちゃった? 嘘でしょう?」


「眼福だったよ。もっと見せて?」


 美女ヘンタイ・モンスターが言う通り、嘘である。あまりにもちょっとだけ、しかも短時間しか彼女がコートを開かなかったので、何も見えなかった。


“おれ見えなかったwwww”

“バカ、余計なこと書くな”


 美女ヘンタイ・モンスターがそのチャットを見つけるのを視聴者の誰かが心配してくれたみたいだ。幸いなことに、彼女はそれどころじゃなくてチャットを見ていなかった。


「見えちゃったって……どこ?」


「全部。その綺麗な身体全部見えたよ。もう1回見せて。もう1回俺のも見せてあげるから」


 俺はコートをもう1度開して巨砲を見せつけた。今度は手で目を隠さず、美女ヘンタイ・モンスターはしっかりと俺の巨砲を目に焼き付けている。


「素敵……サイズと形が最高……」


「もうしっかり見たね? 俺の巨砲は高いよ?」


「でも……」


 美女ヘンタイ・モンスターは、コートを開かずに未だにもじもじしている。でも太腿を擦り合わせているあたり、ているようだ。


「じゃあ、コートを開けるのを手伝ってあげる。いいね?」


「え、ええ?!……」


「必殺、ちくびーム!!」


 コート以外は丸腰だったはずの俺の頭の中に急にその呪文が浮かんだ。呪文を唱え終わると同時に俺の乳首に金色のピアスがカチッとはまり、そこから黄金色の光が彼女のコートに走っていった。


 光を受けた彼女のコートは、ぱぁーっと光って左右に観音開きしていく。その下の身体は、本物のおパンツ仮面のようにボンキュッボンだった。コートを開いた光は黄金の糸のように彼女の乳首に絡まっていき、俺と同じ金色のピアスになった。


「う……ヤバ……これはクル……ダメだ、うううーっ……」


 ここでぶっぱなしてしまうとLv 10減ってしまうので、限界まで我慢したが、駄目だった。彼女のピアスにまでぶっぱなしてしまった。


「ご、ごめん!」


「ううん、ありがとう……コート開の気持ちよさを教えてもらえてよかった……これででも心置きなくコートを開けます」


 彼女の姿は徐々に薄くなっていったが、俺達のピアス同士に結ばれた黄金色の光の糸は、まだはっきりと見えていた。


「私達、運命の黄金の糸で結ばれてるのね。嬉しいわ……ありがとう……」


 それを聞いた途端、俺は彼女の名前を知りたくなった。お散歩犬モンスターもおパンツ仮面もその他大勢のヘンタイ・モンスターだったのに、このしごできビジネスウーマンさんだけ、彼女個人を知りたくなったのだ。


「ま、待って! 君の名前を教えて!」


 彼女は何か言いかけていたが、言葉が出てくる前に彼女の姿は、完全に消えてしまった。それと同時に黄金色の糸も消えてしまった。


「そんな……また会いたいよ……」


【【【感動のラブストーリー!】】】


 ピランピランピラーンと今までで一番ド派手な効果音が鳴り、『赤スパチャ』とテロップが流れた。


“誰だよ!”

“あと1日楽しめたのに!”

“余計なことしやがって”


「ありがとう! 視聴者の皆様、ありがとうございます!」


 俺は胸の痛みを隠して視聴者の皆様に感謝した。


 俺のLvは無駄撃ちで10減ったけど、彼女の昇天分(泣)の100と赤スパチャの300が増えて891になった。


――地上に帰れるまであと一息だ!


 俺は男泣き兼ヘンタイ泣きをした。


 赤スパチャの特典の回復ポーション『ティンケル』を飲めば、更にLv 300が増えてLv 1000を超えて地上に帰られる。俺は固唾を呑んで空中の画面を見守った。


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