目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第2話 ステータス?

 自分のパワーに戸惑っている場合ではなく、子供を助けるために場所を移動する。電車は線路から落ちて道路へと叩きつけられていたようだ。


 道路へと救助した人を並べているわけだけど、一体ここからどうしたらいいのかわからない。近くの病院と言うと町医者みたいなところになるけど。この時間にやっているわけがないだろう。


「お医者さんいませんかー!」


 声を上げて野次馬のように集まっている人へ呼びかける。すると、手を上げた女性がいた。


「私、看護師です!」


「すみません。僕は素人で、ここにけが人がいるんですけど、どうしたらいいかわからなくて……」


 並べている人を指してそう訴える。すると、女性は容体を見て脈を測ったりしている。後は任せようかなと思い、次のけが人を探しに行こうとした時。


「うわぁぁぁぁ! なんだあいつ!」


 逃げ惑う男性がこちらへと駆けてくる。男性越しに走ってきた方向へと視線を向けると、見たことのない化け物が歩いていた。


 これは現実なのか?

 夢じゃない?

 あんな化け物見たことがない。いや、ある……か?


 ゲームで見たことがあるような。凄くリアルなゴブリンみたいだ。ただ、あれはゲームの世界、ラノベの世界での話だ。


 それがこんなリアルで遭遇するなんて思ってもみなかった。ゲームと同じなら、奴らはなんでも食うし、女好きだ。


 ゴブリンの向かい先には看護師の女性がいる。


「くっそっ!」


 守らなきゃ!


 突如、視界が移動した。目の前にゴブリンがいたのだ。咄嗟に腕でガードすると爪で引っ掛かれた。痛みが走るが、本当に爪で少し引っ掛かれたくらいの痛みだった。


 んっ? あんまり痛くない。


 顔が近い。


「来るな!」


 腕を思いっきり払いのけるとゴブリンの首はねじ切れて吹っ飛んでいった。残された身体は力を失い、その場に倒れ込んだ。


「有難う御座います。あれはなんなんです?」


「僕にもさっぱり。無事でよかったです」


 看護師の女性は少し顔が赤かった。熱でもあるのだろうか。まさかこんな平凡な四十のおっさんに惚れたわけでおあるまいし。


「他にも救助が必要な人を探してきます。連れてきてもいいですか?」


「もちろんです! 私にできることがあれば何でもします!」


 女性があまり何でもしますというのはどうかと思うが。それを僕がいったら、ナルシストみたいに見られてしまうだろう。そんなキザなセリフは言えやしないよ。


 再び電車の中へと足を踏み入れる。改めて見ると、もう確実に死んでいるであろう人と、原形を留めていない人もいる。あまり見たくない。


 後ろにも車両があると思うのだが、入口が潰れていて隣の側へはいけない。


 窓から入るか?


 僕にそんなことできるわけがない。そう思ったが、さっきから訳が分からないが、力が発揮されているみたいだからちょっと車両を登ってみる。


 引っ掛かりに指をかけて身体を持ち上げようとしてみる。足が浮き、楽々指の力だけで身体が持ち上がる。自分のしていることの意味が分からなかった。


 とりあえず、登れたので、隣の車両へ行き、窓から様子を見る。この車両は斜めになっていて、車両が歪んでいるから窓が開かないようなのだ。


 中の人が気づいて口が助けてと言っている。その人はたまたま無傷だったのだろう。奥の方へとどく様にジェスチャーで伝える。


 面で割った方が広範囲に割れるだろうと思い、平手を窓へ叩きつけた。破裂音の様な音が響き渡り、粉々になったガラスが飛び散った。


 中で一部始終を見ていた男性は目を見開いて固まっている。


「す、すごい力ですね……」


「いやー。僕もいまいちわからないんですけどねぇ」


 手を差し伸べると、男性がその手を掴む。力を込めて引き上げると、今まででは考えられないくらい軽く人を持ち上げることができた。


 そのまま車両の上へとのせると、男性は恐る恐る歩を進めていて危なっかしいと思ってしまった。なので、お姫様抱っこをして飛び降りた。


 着地すると周りに集まっていた野次馬に拍手された。


「すごいっすねぇ!」

「おじさん、力持ちですね!」

「凄い人もいるもんだ」


 こちらも頭をペコペコと下げながら怪我人の方へと向かう。看護師の女性が治療をし終えていた。どこかのいい人がコンビニから包帯やら消毒液やらを持ってきてくれたらしい。


 近くにドラッグストアもあったので、協力してもらったようだ。謎のゴブリンはまだ現れていないが、また現れる可能性がある。


「あれ? なんかダメもとで自分のことを知りたいと思ったら、なんか出て来た!」

「えっ! ホントだ!」

「俺も見れた!」


 みんな自分のことが分かったようだ。一体、この世界はどうなってしまったのだろうか?


 僕も、自分のことが知りたいです。

 すると、自分の目の前に青みがかったウィンドウが現れた。何か書いている。


【ステータス】

 名前:日戸 鎧(ひと がい)

 スキル:情けは人の為ならず

     >身代わり

      :指定した人の前へと現れる

     >巡る力

      :受けた攻撃の威力を三割増しで返す

     >情け

      :敵に放つ攻撃を寸止めすると自分が回復

     >気遣い

      :周りの気配を敏感に探る

     >手助け

      :攻撃受けている人を助けると五分間防御力、攻撃力共に三割アップ


レベル:53

 SRT:112

 VIT:105

 DEX:122

 AGI:87

 INT:152

 LUK:324


 こんな表示がされていた。俺は理解が追い付かなかった。スキルが情けは人の為ならずとある。レベルが上がっているのは人を助けたからか?


 それともゴブリンを一体倒したからなのか。だとしたらこの世界のレベルはインフラがヤバいと思う。


「きゃあぁぁぁぁ!」


 南の広場の方で悲鳴が聞こえた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?