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第5話 それぞれのスキル

 拳武闘争けんぶとうそうというチームの人たちが傘下へ加わったわけだけど。いまだによくわかっていないんだよね。


 とりあえず、状況を確認しようと思って自宅へと来ていた。アパートの一室なんだ。オートロックだったアパート。入口は不具合で作動していなかったんだ。


 でも、入ろうと思ってちょっと力を入れたらガラスが割れて……。


 チームの人たちに「流石っす! ガイさん!」って容貌の眼差しを向けられてしまった。別に、これっていいことじゃない気がするんだけど。


 僕の部屋、1Kだから狭いし、十三人が入るにはかなり狭い気がするんだけど。しょうがないよねぇ。そんなこと言ってられないし。


 入口でスイッチを押すと天井に着いているライトが点いた。電気は来ているみたいでよかった。急いで中へと入ってテレビをつけると映像が映った。


『これは、史上最悪の事態になっていると言っていいでしょう! 世界中へ隕石が落ちて来たかと思ったら、謎のモンスターが現れているのが現状です!』


 この出来事は、世界中で起こっているみたいだ。こんな時に中継で現状を伝えようとしているテレビの方々には頭が下がる思いだ。


『ある人にインタビューしたのですが、謎のモンスターはゴブリンじゃないかというのです。ゲームやライトノベルで出てくる異世界の生物の一種なのだそうです。なぜ、そんなモンスターがこの世界にいるのでしょうか⁉』


 やっぱりゴブリンだという認識で合っているようだ。だとしたら、急いで戦う準備をしないと大変なことになるぞ。だって、ゴブリンは……。


「ガイさん、顔色を見ると気が付いているんだろう? ゴブリンが最初のモンスターだとすれば……」


「うん。ラノベでゴブリンは序盤に出てくる雑魚だもんね」


 これまで読んできた本の知識になってしまうけど。その知識ではゴブリンは最初に倒されるようなモンスターである。ようは雑魚なはずだ。


 それでも、現代の平和ボケしている日本人にはなすすべがないだろう。もしかしたら対抗するためにスキルというのがあるのかもしれないけど。


 スキルはユニークスキルなんだろうか?

 それとも、汎用スキルもある?

 一人一人が違うスキルだとしたらピンキリだと思う。


 その辺みんなはどう考えているんだろう?


「あのさ、スキルってユニークなものだと思う?」


 みんなへと聞いてみる。


「それは、唯一無二という意味?」


 アカリさんが会話へ入って来た。自分も気になっていたのだろう。自分のスキルがユニークかどうかが気になっているのかもしれない。


 もしかしたら、治療が早く終わったのはそのせいもあるのか?


「はい。だとしたら、色んなスキルがあることになるし、もし悪いことに使う人がいたら……」


 僕の言葉にショウくんとチームの人たちは頷き合っている。何か知っているのかな?


「ガイさんの傘下へ入った以上、隠し事はしない。俺のスキルは徒手格闘」


「徒手格闘って、自衛隊とかでするやつだよね?」


 自分の中で知っている知識を総動員して聞いてみた。ショウくんはニコリと笑った。


「そっ。俺は元自衛官。問題を起こして辞職したけどねぇ。拳武闘争は、ほぼ元自衛官なんだ。だから、国を守りたい気持ちはある。みんな問題を起こしちゃってやめたけどね」


 それって大丈夫なの? 僕の中で問題を起こすような人って恐い人っていうイメージがあるんだけど? 普通のおっさんには刺激が強すぎるよぉ。


「まぁ、重大なのはそこじゃないのねぇ」


 ショウくんは横にいたスキンヘッドの男へ視線で合図する。


「自分のスキルは、狙撃であります!」


「私は、操縦であります!」


「自分は、徒手格闘であります!」


 十人の男女のスキルが明らかとなり、狙撃が二人、操縦が一人、徒手格闘が四人、ナイフ使いが三人だった。このスキルを知ることでわかったことがある。


 まず、ユニークスキルと汎用スキルがあるということ。そして、今までの経験が恐らくスキルに関係しているということ。


「はぁ。皆が話したのなら、仲間になった私も話すわ。私のスキルは、再生」


「えっ?」


 名前から明らかにユニークスキル。再生なんて漫画やラノベの世界でしか聞いたことがない。凄まじいスキルだということがわかる。


「わぁお。アカリ姉さん。半端ないっすねぇ」


「それ、褒めてるの?」


 睨みを聞かせているアカリさんへとニコニコしながらのらりくらいと答えるショウくん。この二人は相性があまりよくないみたいだ。


「アカリさん、凄いですね。恐らくユニークスキルでしょう。はぁ。僕も言わないとですね……」


 そう口にすると、ショウくんとアカリさんは首を横へ振った。


「別に、知らなくてもガイさんはガイさんよ?」


「俺は、知らなくてもガイさんへ着いていきます!」


 二人の気持ちも有難いけど、なんか腹の探り合いをするのとか面倒だし。他のチームの十人なんて目をキラキラさせてまっているんだから。言わない選択肢はないよ。


「僕のスキルね。【情けは人の為ならず】っていうんだ」


 僕の言葉に皆が固まっている。なんでだろう?


「さすがはガイさんっす。明らかにユニークスキル。しかも、強力な物と思われるっす!」


 ショウさんが、急に下っ端感を出してきた。今まで同党の感じだったのになんで急に下に着いたのだろうか?


「ガイさん、ゲームの話ですけど、四文字熟語、ことわざみたいな昔から日本へ根付いているような言葉のスキルって強力だということが判明してるんっすよ」


 そんなことあるんだ。でも、『情けは人の為ならず』だよ? 全然強力な感じしないんだけど?


「不思議そうっすね?」


「なんか弱そう」


 僕がそう言うと、クスッとアカリさんが微笑んだ。笑った顔が可愛くて見惚れてしまった。


「ガイさんらしいスキルじゃないですか。私の第一印象はお人よし、ですよ?」


 それは悪い意味なのか、いい意味なのか。悩むところだね。でも、その言葉に大きく頷いているのはショウくんと拳武闘争のみんなだった。


「俺達と対等に話してくれている時点でいい人は確定してるっすもんね」


 十人全員が頷いている。なんでだろう。人は見た目じゃないというのは僕、人生で経験しているからね。良い人そうな人ほど陰口言ったりしているし。


 逆に、こういう強面の人の方がそういうの嫌いでいい人だったりする。これは、僕の経験則だけど。だから、精神病を患ってから、何気に強面の人と仲良くなったりすることが多かった。


「僕ね、はっきり言ってくれる人の方が好きなんだ。だから、みんないい人でよかったと思ってるの」


 なんか、チームの中には泣いている人もいる。なんでだろう。っていうかこの部屋の人口密度ヤバいんだけど。


「取り乱していて申し訳ないっす。ここにいる者はみんな見た目で虐げられたり、いじめられたりしてきた者達なんっす。病気で髪がなかったり、地毛があかるかったり。ピアスは海外では普通ですし」


 あぁ。奇抜な人だと思っていたけど、みんなそれぞれ理由があってこういう容姿だったんだ。恐いと思って申し訳なかったな。


 なんか仲良くなれそうだなぁ。これから、本格的に人助け、していこうか。

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