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第6話 拠点と新チーム

 人助けをしようと言ってもどうやったらいいものか。しかも、こうしている間にも人が襲われているかもしれないし。


 ゴブリンの次があるとしたら、レベルを上げて対応できるようにしておかないと先が思いやられるね。このままだと確実に人類は滅亡するだろうから。


「みんなに相談してもいいかな? どうやったら人を助けられるかな?」


 しばしの沈黙の後、スキンヘッドの男性が手を上げた。手でどうぞと合図すると口を開いた。


「はっ! まずは、どこかの場所に救護施設を設けてはどうでしょうか? 怪我人が多いと思いますし」


「たしかに。アカリさんもいることだしね」


 僕はそう思って口にしたのだけど、ショウくんは深刻そうな顔をしている。人を助けるだけではダメだということだろうか。


「ショウくん、何か言いたそうだけど?」


「はい。アカリ姉さんのスキルはバレやすいじゃないっすか。そうなると、人々は我先にと助けを求めに来ます。そうなっと……」


 そう言われて初めて懸念していることが想像できた。こんなに人が怪我したり亡くなったりしている時に再生できるような人が現れたら。


 例えば、生き返らせてくれという人もいるだろう。自分の彼女を先に助けてくれとか、自分の身勝手な要望を言ってくる人もいるかもしれない。


 それもこれも、パニックになっていて冷静な判断ができなくなっているからなんだけどね。アカリさんが矢面になってしまうのを気にしてくれている。


「確かにその通りだね。僕が浅はかだった」


 提案してくれたスキンヘッドの男性もショボンとしてしまった。いや、いい方法だと思う。救護施設を設立して人を助けるのはありだと思う。ただ、どうやって治療するかを考えればいいのではないか。


 仕切りを作って治療の場面をみせない様にしようか。それなら大丈夫だと思う。けど、今度はこっちを疑われるリスクがある。


「恐らくっすけど、国も動くはずっすよ。だから、遅かれ早かれ、救護施設は設置されるはずっす」


「なるほどね。それなら、やることはモンスターを駆除することかな?」


 ショウくんは僕の質問に頷いてくれた。やっぱり皆を命の危機にさらさなきゃならないのか。誰かがやらなきゃいけないことだけど。どこかに隠れる選択肢もあるんじゃないかな。


「それか、隠れる……とか」


 刺青の入っている女性が声を上げてくれた。隠れるという選択肢があると思っているあたり、考えが柔軟なひとみたいだね。


「ちなみに、隠れるとしたらどこがいいんだろうね?」


「隕石に近くないところがいいんじゃないっすか?」


 この話に乗ってきたショウくん。別に戦いたいというわけでもないのだろう。けど、国を守るためにはモンスターと戦うのが一番いい。それは誰もがわかっている。


「どこに隕石が落ちたのかわかればいいね」


 ショウくんが視線を移す。視線の先には一人パソコンを操作していた人がいるのだけど、その人は操縦がスキルだと言っていた。パソコン関係のことも得意なんだろうか。


「アイ。どうだ?」


「SNSで騒がれている情報をAIでまとめてみました。その情報をもとに、東京の安全と言える区画を割り出そうとしたんですが。見てください」


 パソコンに映し出されていたのは東京の空から見た感じの地図だ。そこにはバツ印が点いているところが何か所かあり、その周りが丸で囲われている。それに、すべて赤く染まっている。これの意味するのは?


「全部赤いな?」


 ショウくんが正直にそう口にすると、それに頷いた。


「東京だけで隕石が落ちてきたのは四か所。北が練馬、東が葛飾、南が世田谷、西が立川」


「えっ? 全方位に隕石が落ちてきたの?」


 そんなに東京だけで落ちてきてたの?

 そんなことってあるわけ?

 だって、全世界で隕石が落ちてるんだよね?


「そうなんです。要するに、囲まれているから出ることが困難だと思います。ようするに、隠れる場所がありません」


 なるほど。それだと、堅牢な場所を真ん中に作るのが一番いいかもしれないな。そこから徐々に攻めて隕石からモンスターが出てくる原因を探る。


 地図を拡大して場所を探す。


 あぁ。いいところがあるじゃん。こんな時に使わないでしょ。


「ここを僕たちの拠点にしようか」


「うっはぁ! 大胆っすねぇ!」


「ガイさん、なんか思考が振り切ってない?」


 僕の指した所を見たショウくんと、アカリさんは顔が引きつっていた。まさか国会議事堂を拠点にしようというとは思わなかったのだろう。


 でも、誰もがわかるところだし。こんな時に国の機関なんて機能しないんだから。国の重鎮たちが何人死んだかもわからないし。


「ここなら、守りを固めることができると思う」


「よっしっ! チーム名を決めようぜ! アキト、なんかいい案あるか?」


 ショウくんはピアスをしている細身の男性を指すと、意見を聞いた。この子がこういう名前を考えるのに適している人材なんだろう。


「ガイさん。やはり、目的は人助けですかい?」


「うん。それをブレずにやりたいな」


 顎に手を当てて目を瞑り、何やら思考を巡らせているようだ。なんかカッコいい名前を考えてくれんだろう。


「人類救済チーム(Humanity Relief Team)、通称HRT(ハート)」


「さすがアキト、中二病がいいかんじだぜぇ」


 ピアスの男を見ると、ニヤリと笑みを浮かべている。


 確かにカッコいい。これでいこう。まずは、国会議事堂に行かないとね。


「じゃあ、さっそく行こうか」


「よっしゃあ! HRTハート始動!」


「「「おすっ!」」」


 やっぱり僕より、ショウくんの方がリーダーっぽいけどなぁ。

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