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第9話 戦力になりそうなカップル

 カップルを助けた後に、とりあえず小学校の中へと入った。アカリさんが驚いたように近寄ってきて、腕を確認している。


「ちょっと! 無茶しないでよ! 刃物を素手で受け止められるわけないでしょう⁉」


 その言い分に全くその通りだよねと思いながら頭を搔いて「いやーー」と言ってごまかしてみる。なんとかスキルで血も止まったし別に大丈夫かなぁって思うんだけど。


「これ、一歩間違えたら腕が無くなってましたよ?」


「だよねぇ。危なかったよ」


 僕は心の声をそのまま話したのだけど。


「危なかったよじゃありません! 人を助けることは確かに大事です! ガイさん、優しいしわかりますけど、自分のことも考えてください!」


 顔を近づけて怒ってくるアカリさん。なんだか、顔が近い気がするけど……。


「ア、アカリさん。近いですよ……」


「はっ! すみません! とにかく、気を付けてくださいね!」


 心配してくれているみたいだし。ここは素直に頷いておこう。


「は、はい。そうですね」


 素直に返事をすると、納得してくれたようで奥へと戻って行った。その背中を追いながら一緒に三階の教室を目指す。


「あ、あのー。ここに人がいるんですか?」


 カップルの男性が聞いてきた。心配も無理ないか。


「生き残っていた人達がいたんですよ。ただ、そんなに多くないですよ。一つの教室へ納まるくらいです」


「私たち、来て大丈夫だったんですかね? 食料のこと考えたら、人は増えない方がいいんじゃ……」


 言っていることはごもっともだった。それに、人は増えない方がいいだろうと思う。食料も限られているわけだし。


 「そうなんですよね。でも、協力してくれる人を募って連れて行きたいと思っているんですよ。あっ、申し訳ないけど、スキルを聞きたいなと思うんですけど……」


 ショウくんにスキルを聞くのは本当はマナー違反だと言われた。だから、無理して話してくれなくていいけど。それだとこれからの計画を建てられないと思うからねぇ。


 聞こうと思ったのだけど、カップルの二人とも首を傾げている。「スキルってなんだろう?」と話している。どういうこと?


「ガイさん、みんながスキルに目覚めているわけではないっすよ?」


 ショウくんに指摘されて初めて知った。


「えっ? そうなの?」


「そうなんすよ。知らなかったですか? 大半の隠れたり逃げたりして戦っていない人って言うのは、スキルに覚醒してないんっすよ」


 横に並んで階段を昇りながらショウくんが教えてくれた。あれ? もしかして、HRTの中にもいるのかな? 戦い向きじゃない人。


「ショウくん、今のチームの中に戦えない人っているの?」


「そうっすねぇ。戦えない人はいないっすけど、苦手なのはいます。アイとかはPC関係の方が得意なので。ただ、元々チームにいたやつらは戦えるようにしていたんすよ」


 そりゃそうだよね。得意不得意はあるよね。それでも、戦えるってんだからすごいよねぇ。じゃあ、カップルの人たちにスキルはないんだね。


「なんかすみません。変なことを聞いてしまった。モンスターと戦った人たちの中にはスキルという特技のようなものに目覚める人がいるんです」


「えぇっ? そんなゲームみたいなことがあるんですか? 自分、ゲーム大好きでプロゲーマーなんですよ。FPS系なんですけど……」


 驚くのも無理はない。でも、スキルに目覚めていて損をすることはないだろう。それに、FPS系が好きならもしかしたら戦闘系のスキルに目覚めるかもしれない。


 体の線は細いけど、何か支援系だったら嬉しいかもね。


「いいね。もし、なにか変化があったら教えてね」


「はい!」


 男性が元気に返事をすると、女性も手を上げた。別にいつ話をしてくれてもいいんだけど、なんでか手をあげなければと思ったみたい。


「はーい! 私、料理が好きなので担当しまーす!」


「ありがとう。僕たちもまだ来たばかりで役割分担できてないから、先生に聞いてみるね」


 教室で待っていた先生と避難してきていた生徒家族が待っている教室へと入ると、驚いた眼で見られた。なんでだろう?


「あっ、あのっ、消えたのは超能力的ななにかなんですか?」


 男性の先生から聞かれたので、素直に答えた。


「それは、スキルといいまして僕のスキルなんですよ。なさ──」


「──すまないっす! これ以上は言えないんす。勘弁してください!」


 途中でショウくんに口を塞がれた。そして、前へ出ると頭を下げてくれている。なんで話してはダメなんだろう?


「あっ。もしかして、凄いスキルなんですか?」


 先生が戸惑いながら聞くとショウくんは頷いた。


「さっき見たことは、他言無用でお願いします。かなり重要なガイさんの情報になるんす。すみません!」


「いえいえ。無理に聞こうとは思っていません。守ってもらったんです。なんでもいいです。話しませんから、安心してください」


 僕も頭を下げると、現状どうやって過ごしているのかを聞いてみた。聞いてみたけど、現状はかなりまずい状況だった。


 女性の先生が話してくれたんだけど。


「実のところ、食料はありません。みんな空腹に耐えてもらっている状況です」


「そうなんですね。事態は深刻ですね」


 どうにか食料共有して貰わないとは。国は何をしているんだろう。もう夜が明ける。救援は来ないのだろうか。


 今の状況を知らなかったのも、テレビを見られる部屋に行くのはリスクがあるからだろう。そんなことを言っていては、物資の確保はできない。


「近くにコンビニがあったはずです。何か食べ物を調達してきましょう」


「うん。そうだね。でもさ……」


 僕が言い淀むとショウくんは頷いた。何か考えがあるみたいだ。


「一先ず、何か食料を探してみます」


「すみません! 助けてもらった上に食料まで頼ってしまって!」


 先生二人がこちらへ頭を下げると、教室に避難していた人たちも頭を下げた。


「いいんですよ。僕たちには幸い戦う力があるみたいだから。じゃあ、行ってきますね」


 教室を後にしようとしたとき。


「待ってください! 自分も連れて行ってください」


「いいですけど、危険ですよ?」


 僕が警告としてそう話すと、眼がギラついた。


「一応、これでもFPSゲーマーです。使えると思いますよ?」


 いい案だなぁと少し思慮を巡らせながら、ショウくんの顔を見ると軽く頷いている。連れて行っても大丈夫だろうということだろう。


「そうですね。一緒に行きましょう」


「HRTの半分置いて行きますよ」


 ショウくんがそう提案してくれて、確かに守りが必要だと思い、その考えに賛同した。誰が残るかはショウくんへと任せるとすぐに選抜してくれた。


「じゃあ、行ってきます」


 新しい仲間との食料調達の任務が始まる。

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