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もしも、あの日に
もしも、あの日に
シュガーソルト
異世界ファンタジー戦記
2025年06月22日
公開日
5.2万字
連載中
人生には「もしも」と思う日がある。 もしも、あの日に異なる選択をしていたら。 もしも、彼と出会わなければ。 軍の名門に生まれながら“落ちこぼれ”と呼ばれたクラウスと、 完璧な貴族と讃えられたレオナルド。 相容れないはずだったふたりの少年は、 いつしか親友となり、家族を持ち、それぞれの「守りたいもの」と向き合っていく。 ――これは、「もしも」が積み重なった人生で、 静かに、それでも確かに、希望を繋ぎ続けたふたりの物語。 本作は、二章《幼少期》編までで主要キャラクターたちの価値観や生い立ち、 家族との関係を描いています。 そして三章以降、彼らの歩む道は大きく動き出していきます。 少しずつ変化していく彼らの姿を、そっと見守っていただければ幸いです。 ◆小説家になろう様で先行掲載中!

《プロローグ》

プロローグ

 王国において〈貴族〉とは、単なる特権階級ではない。


 かつて、〈貴族〉というのは、〈魔術〉を扱う者に与えられた称号であった。

 土地を切り開き、民を魔獣の脅威から守り、導き、歴史を紡ぐ。その使命を果たすには、〈魔術〉という力が不可欠だった。


 魔術の才能が〈血〉によって受け継がれるという事実が、貴族による支配の正当性を裏づけてきた。


 だが、建国から数百年の時が流れ、すべての貴族が剣を振るう時代が終焉を迎えると、〈血〉以外に価値を見出す者たちが姿を現した。


 これまで通り血統による才を宝とする家、家の歴史を誇る家、資産や政治を重んじる家。


 現代の〈貴族〉とは、それぞれに異なる信念と伝統を抱える者たちの集合体である。


 これは、始まりの物語。


 貴族社会の歪みの中で、寂しがり屋の少年が“友”と出会い、やがて〈英雄〉と呼ばれるまでの長い旅路である。

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