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第114話  幽霊は再会の香り



 次の日。

 朝からみんなでシェローさんの家に向かった。

 シェローさんに、イオンさんとシャマシュさんを紹介するためだ。


 イオンさんとシェローさんは顔見知りであるらしい。

 イオンさんがアイザックに師事していた頃に、何度か話したことがあるのだとか。


 だが、顔見知りだからといって、ほがらかムードで面談できるとは限らない。

 ふたりの関係はちょっと複雑――というか、シェローさんが副団長をやっていた傭兵団『緋色の楔スカーレット・ウェッジ』が潰れた原因の一端がイオンさんにあるからだ。

 イオンさんとシェローさんが会うということは、どうしてもその時の事抜きにはいかない。シェローさんがイオンさんを受け入れるかどうかは、つまり、シェローさんがイオンさんを許すかどうかという話になってくるのだ。


「……イオンさん。緊張してますか?」


 馬の背に揺られながらの道すがら。

 ディアナと二人乗りしたイオンさんに訊く。

 ちなみに二人乗りだが、イオンさんが前である。そして――当然といえば当然だが――イオンさんは卓越した乗馬スキルを持っていた。伊達に元将軍ってわけじゃないらしい。

 祝福が失われたからといって、それまでに成長した分までなかったことになるわけじゃない。あくまで天職の補正分は「成長率」だけなんだろうから。

 イオンさんが口を開く。


「……正直に言ってしまえば、緊張しています。あの方は本当に団を大事にしていましたから、私のことを許すとは……考えにくくて……。なんというか……苛烈な方でしたし」

「苛烈……?」


 シェローさんが苛烈。

 苛烈ってどんな意味だっけ? なんかこう狂犬的な人を指す言葉だっけ?

 いや、現在のシェローさんはわりとホノボノとした感じだけど、傭兵時代は違ったのかもしれない。なんせ『怪物ジャガーノート』なんて二つ名を付けられちゃうような人なのだ。

 うーむ。


「けっこう、交流あったんですか? シェローさんと」

「そうですね。私がザックから指導を受けている間、あの方がずっと側に控えていましたから」

「へぇ。どうしてシェローさんも?」


 イオンさんは、お姫さまの『天職教育』としてアイザックに師事していたはず。

 必要ない人物を側に置くのを国サイドが許すとは思えないんだが。

 俺の問いに、イオンさんは思い出したかのように顔をほころばせて答えた。


「ふふ。あの方を自らの護衛として側に置くというのが、ザックが私の教師をやる条件だったのですよ。ザックは元々王宮を信用していませんでしたから。あの方とふたりならば、なにがあっても切り抜けられると笑っていました」

「へぇ。仲良かったんですか、アイザック氏とシェローさんは」

「そうですね。ちょっと妬くくらいには。……侍女たちなどは、あのふたりが禁断の仲だという良からぬ妄想を繰り広げていたくらいで……」

「ああ……」


 アイザック氏は見たことないけど、きっと礼儀正しい美青年だったのだろう。

 そして、それと仲が良い、一見粗野でマッチョなシェローさん。

 うーん……。てか、二人が親友となるとアイザック氏もシェローさんと同い年くらいだったのかな。いや、シェローさんの年齢もよく知らないんだが、レベッカさんの歳から逆算すると、それなりの年齢のはずだが……。

 まあ、年齢は精霊石があるこの世界ではあんまり関係がないっちゃないんだが。


「……それと、アヤセさん」

「なんです?」

「私のことは、これからイオンと呼び捨てでお呼びください。私はただのイオン。あなたのメイドなんですから」

「ん、ええー……」


 呼び捨てかぁ。

 イオンという名前自体が偽名なんだし、呼び捨てでも別にいいっちゃいいんだが、でもなぁ……。

 なんつーか、イオンさんってイオンさんって感じなんだよな。

 歳は俺のほうが上かもしれないけど、一国のお姫さま相手に呼び捨てってのは、どうも拒否反応が……。


「この二人にも、呼び捨ててくれるよう頼みました。あなたの奴隷が呼び捨てなのに、主人が敬称付けではおかしいでしょう?」


 二人ってのはディアナとマリナのことだ。


「そうなの? マリナも?」

「イオンのことはイオンと呼ぶんであります。頼まれたのであります」

「ディアナは?」

「私はもともとイオンと呼んでるのです」


 そっかー。

 昨夜、ディアナとマリナはイオンさんと一緒に寝てるから、そこで少しは打ち解けたのかもしれない。

 もしくは、屋敷での序列を決める戦いがあった可能性も否定できない……。いや、それはさすがにないか。

 でもまあ、ディアナはともかく、マリナも呼び捨てにするってんじゃな。俺も呼び捨てで呼ばないわけにはいかないだろう。

 それに、これから別人として生きていくのなら、事情を知っている俺たちこそ、協力していかなきゃダメだし。呼び捨てにするのも、その一環だろうな。

 よし。


「じゃあ、イオンと呼ばせてもらいます。もともと偽名ですしね」

「はい、お願いします。アヤセさん……ありがとう」


 イオンさんは、真正のお姫さまだけあって、俺からするとちょっと高貴なる雰囲気がありすぎるというか、オーラが違いすぎて呼び捨てにするには気が引けるんだが……。

 ま、そのうち慣れるだろう。


「なぁ、アヤセくん」

「なんですかシャマシュさん」


 シャマシュさんは、マリナと二人乗り。もちろんマリナが前だ。

 褐色コンビの二人乗りである。馬よりラクダのほうが似合いそうだ。


「えっと、ほら、それ。私のことも、当然呼び捨てで呼んでくれるんだろう? イオンが呼び捨てなら、君の奴隷である私がさん付けではオカシイもんな? うん」

「あー……。ハイ、マぁ」


 シャマシュさんもか。


「ほらほら、恥ずかしがらなくてもいいんだぞ。シャマシュと気楽に呼んでくれ。奴隷なんだから! そして、気楽に呼び出して用を言い付けてくれ!」

「うーん」


 どうも、シャマシュさんは、シャマシュさんって感じなんだよなぁ。

 なんてったって、全然年上だもんな。たぶん神官ちゃんより上。呼び捨てにしづらい。


「いや、やっぱりシャマシュさんは、シャマシュさんがいいな」


 少し考えて、俺はそう答えた。


「そんな!」

「だって、今は立場がそうなってるってだけで、シャマシュさんのほうがずっと歳も上ですし。ちょっと呼び捨てにはしづらいですもん。……ま、いつか気が向いたら呼び捨ても考えますから、それまで辛抱してください」

「む、むぅぅううう……。仕方がない……」


 なんとかナットクさせることに成功した。

 いや、別に納得はしてないか。不満顔だ。


「ほら、あんまり我儘言って困らせちゃダメよ、シャマシュ」


 イオンさんがチャチャを入れる。

 俺とかと話す時と、シャマシュさんと話す時とでは、感じが全然違うんだよな、イオンさん。気を許してるというか。


「イオンは黙っててよ! 自分ばっかズルいじゃないか!」

「だって、私はアヤセさんより年も下だし。ただのメイドのイオンだもん」


 イオンさんが朗らかに笑う。

 力の抜けたその自然な笑顔に、シャマシュさんが一瞬目を見張った。


「そうだなぁ。うん、まあ…‥イオンが幸せそうならそれでいいか……」

「ちょっとシャマシュ! 急にそういう感じになるのやめてよ!」


 イオンさんとシャマシュさんは本当に仲がいい。ケンカするほど仲がいいというのは陳腐だが、イオンさんにとって、シャマシュさんは本当に特別な存在なんだろう。

 イオンさんが俺のところに来ると決めたのも、シャマシュさんの存在があるからってのが大きいはずだ。あの時、もしも、ただ身の上話を聞いて、イオンさんだけを俺が匿うという話になったとしても、イオンさんは首を縦には振らなかったに違いない。 



 そんな風に話をしながらポックポックと歩き、シェローさんの家の前。


 イオンさんとシェローさん、ふたりの対面は、本当はもう少しだけ時間を置こうかと思っていた。イオンさんにも、心の準備が必要かもしれないし、まず生活に慣れてからでも遅くはない。

 シェローさんにとって傭兵団がどういう存在だったのか、俺は詳しいことはなにも知らない。団長だったアイザックとの関係も聞いたことはない。団の規模すら、詳しくは知らないのだ。

 だから、その傭兵団が解散となる原因となったイオンさんに、シェローさんがどういう感情を抱いているのか。

 実際のところは、うかがい知ることはできない。


 家の前でレベッカさんが洗濯物を干していたので、声を掛けた。


「おはようございます、レベッカさん」

「あら、ジロー。おはよ」

「今、シェローさんいます? 機嫌とか大丈夫そうですか? イオンさんと会ってもらおうと思うんですけど……」

「イオン……? ああ……ルクリィオン姫か……。そうね。うん。まあ、ダイジョウブ……じゃないかなぁ?」

「ちょっと不安な答えですね……」


 レベッカさんにとっても未知数ということなのかもしれない。

 まあ、話を聞けばイオンさんが悪くないのはわかると思うが、感情の部分はまた別のものだ。俺はその傭兵団の当事者でもなんでもないから、なにも言えない。


 でもまあ、案ずるより産むが易しというしな。イオンさんには覚悟を決めてもらおう。

 ここで、これから暮らすのに避けては通れないことなんだから。


「じゃあ、イオンさん。行きましょうか」

「アヤセさん。イ、オ、ン! でしょう?」

「あっ、そうでした。イオンイオン」

「敬語もいりませんよ。砕けた口調でどうぞ」

「気をつけるよ。じゃあ……いこう」

「はい。お願いします」


 扉に手を掛ける。

 と、シェローさんが家から出てくるのはほぼ同時だった。

 身長2メートルはありそうな、筋骨たくましいシェローさんがヌッと間近に立つと、なんというか、本能的にビビる。

 今となっては優しい人だとわかっているけれど、イオンは話したことあるといっても、そこまで親しかったわけではあるまい。大丈夫なんだろか。

 ふと振り返り、イオンを見る。

 しかし彼女は、まったく物怖じせず、凛とした佇まいのままシェローさんを見上げている。


「おっ、ジローか。ちょうど良かった、こないだ言ってた訓練メニューだが――」


 俺に気付いて話し初めたシェローさんだったが、俺の後ろに凛と立つ人物イオンに気付いて、言葉を失った。

 ……いや、これは絶句というやつだろうか。


 シェローさんはまるで幽霊を見た人のように固まっている。

 先に口を開いたのはイオンだった。


「……ご無沙汰しておりました。シェローおじさま」


 真っ直ぐシェローさんの目を見て、頭を下げるイオン。

 その言葉を聞いて、シェローさんの顔にみるみる理解の色が浮かぶ。


「お…………お……お姫さん……? なのか? ルクリィオン姫……か…………?」

「……はい。ルクリィオンです。今はイオンと名乗っていますが。……本当は、こんな風に顔を出せないということは重々承知しています。ですが――」

「おお!よかった! 生きてたんだな! あんなことがあって、お姫さんも、もうとっくに死んじまったとばかり思ってたんだぞ!」


 くったくのない笑顔を見せるシェローさん。暗ーいイオンとは対照的だ。

 恨んでいるとか許してないどころか、ぜんぜん気にしてない様子だ。


「あ……あの。ザックのこと……私を恨んでいないのですか……?」

「はっはっは。お姫さん、そんなことを気にしていたのか? こう言っちゃ身も蓋もないが、世間知らずのお姫さまが嵌められたってことぐらい、俺たちは全員わかってたよ。レベッカのやつはいろいろ複雑だったようだが、まあ、あれは特別だ」


 わははは、と楽しそうに笑うシェローさん。

 とっくに死んでしまったと思っていた昔の知り合いが突然現れて、喜びが隠せないといった様子だ。本当に、恨んでいるとか欠片もなさそう。


「アイザックのことは残念だったが、仕方がねぇ。うちの団は正規軍より遥かに強かったから、最初から恨みを買っていたのさ。お姫さんはダシに使われただけで、被害者みたいなもんだ。気にすることないぞ」

「おじさま……」

「痩せたな、姫さん。苦労したんだろ」

「……はい……う、う……」


 シェローさんが優しく語りかけると、いろいろ溜まっていたものが溢れるように、イオンの両目から涙がこぼれた。

 本人からすれば、シェローさん――つまり元『緋色の楔』のメンバーに恨まれているかもしれないというのは、それはそれでストレスだっただろう。

 それが、恨まれていないどころか、生存を喜ばれるとは思ってもみなかったに違いない。


「うっ、ううう……。よかったよ、イオン……」


 横を見たら、シャマシュさんまで泣いてた。



 ◇◆◆◆◇



 イオンさんがさっぱりと泣き止んでから、シェローさんに事情を話した。

 といっても、シェローさんは元々の事情を知っているので、それほど説明する必要はなかった。

 逃げて、魔族に匿われていた。

 うちで暮らすことになった。

 大まかにはそれだけだ。


 事情を知ったシェローさんは、大きく頷き言った。


「お姫さん。こういう形で出会ったのも、ル・バラカの思し召しだろう。ジローは俺が見込んだ男だ。こう見えて頼りになる。ジローも、お姫さん……いや、イオンのこと、頼んだぞ」

「買いかぶりすぎですよ。ですが、イオンのことは任せてください」


 実際には、イオンをどう扱うかはまだ決めかねている。

 メイド暮らしもいいだろうが、ずっとそれだけというわけにもいかないだろう。本人にだって、希望する暮らしや未来があるだろうし。あの屋敷にずっと閉じこもってメイド暮らしをするってのは、ほとんど尼や修道女と同じだからな。


「あ、それとこちらが、イオンを匿っていた魔族のシャマシュさんです」

「うん。新しくアヤセくんの奴隷になったシャマシュだ。よろしく」


 紹介時にも奴隷押ししてくるシャマシュさん。あんまり美人の奴隷ばっかり増えると、「ご主人さまエロです」と言いふらして歩いてるみたいな感じがなくなくない?

 ぶっちゃけ、ちょっと照れくさいよな。童貞なのに性豪みたいじゃないか。


「シェロー・ロートだ。お姫……イオンも魔族に匿われてたなんて運が良かったな。俺からも礼を言う。ありがとう、ルクリィオン姫を助けてくれて。これからよろしく」

「ふふふ、イオンを助けたのは全くの偶然だったのだけどね。私にとっても幸運だった」

「ところで、お前さん……魔族というからには、召喚術は使えるんだろう? ちょっと頼みたいんだが……ああ、今すぐではないが――」


 どうやら、ガチ戦闘訓練用に召喚魔獣を出して欲しいのだそうだ。

 金なら払うから! と、シェローさんにしては珍しいお願いである。シャマシュさんが、俺にどうする? と聞いてきたので、もちろん了承した。

 やっぱり戦闘狂なところは変わってないんだな。ヌルい戦いしかなくて、けっこうストレス溜めてたのかもしれない。平和だからな、エリシェ。


 ◇◆◆◆◇


「なあ、アヤセくんさえ良ければ、イオンに新しい祝福を授けたらどうかと思うんだ」


 シェローさんの家でそのまま茶を飲みながら思い出話に華が咲いた後、シャマシュさんが唐突に切り出した。

 イオンは、獄紋を背負わされ祝福を失った。精霊石を使って獄紋を祓ったのはついこの間のことである。

 てか、祝福って再取得可能なの?


「ん? ああ、大精霊ル・バラカの祝福はもう受けられないよ。一度失った祝福は帰らない。だから、イオンが良ければの話でもあるんだが、これは」

「どゆこと?」

「うん。私は、夜天女神ヴァースの巫女でもあるんだ。だからね、ル・バラカの祝福はダメだが、夜天女神の祝福なら授けてやれるんだよ。もちろん、ヴァースの祝福でも天職もお導きもあるし……」


 お、おおお! そっか、別の神様の祝福受ければいいんだ。まさに、捨てる神あれば拾う神ありというわけだな。


「い、いいのかしら。私が……新しく祝福を授かってしまっても……」


 イオンは少し躊躇があるようだ。

 アイザックとのことを気にしているのかもしれない。自分だけが、幸せになる準備を始めているような感じがあるのかも……。

 いや、実際そうなのだ。

 いつまでも喪に服すのもまた人生かもしれないが、現代人の俺からすると、それは極端すぎる。

 イオンだって、幸せになっていい。

 どれだけ願っても幸せになれない人はいくらでもいる。イオンだって、幸せになれるかどうかなんてわからない。

 だったら、せめてそれに向けて人生を生きるのは間違ったことじゃないはずだ。


「イオン。シャマシュさんの祝福を受けよう。……それに、うちで働くにしても、天職はあったほうがいいし。それに、どういうのが出るのかわからないから」

「そうだな。お姫さん……いや、イオン姫……じゃなくて、イオンか。間違っちまっていかんな。……とにかく、祝福は授かったほうがいい。あんたがアイザックの件で引け目を感じる必要はないし、やり直すなら新しい祝福は必要だろう」

「そうねー。今日から、本当に生まれ変わって、イオンとして生きていくケジメにもなるんじゃないかしら。私も、あなたのこと、これからただのイオンとして接する。だからこそ、その祝福を授かるべきだと思うわ。新しくここでやっていくならね」


 シェローさんとレベッカさんも、新しい祝福に賛成する。

 そりゃそうだ。受けても得あれど損はない。

 夜天女神ヴァースというのがどういう神かはわからないが、大精霊ル・バラカのほうがもっとわからないから問題ない。

 ……いや、ル・バラカはモチーフを神殿でよく見るからちょっとわかる。羽が生えた牛だ。神官ちゃんが角生えた帽子を被ってるのは、あれのモチーフなのだ。

 まあ、それはいい。イオンの祝福だ。


「……いいのでしょうか」

「いいでしょ、全然。お導きだってあるかもだしさ」

「ほんとうにできるの? シャマシュ」

「もちろんだとも。私は偉大なる魔術師であると同時に、偉大なる召喚術師でもあり、さらに偉大なる巫女でもあるのだ」

「そこまで尊大にならなくてもいいけど」

「うう……イオンは私に厳しい……」


 実際、シャマシュさんは有能だ。神官ちゃんあたりと同じレベルの人間なんだからな。


「じゃ、シャマシュさん。いっちょやったって下さい」

「任されたよ! 私が最高の祝福を与えてやろう」


 ドンとシャマシュさんが胸を叩き、そのままイオンに祝福を授けることになった。

 夜天女神の祝福といっても、何度か見た大精霊の祝福と手順は変わらない。術師が手を握り、呪文を唱えるだけだ。


「イオンも準備はいい?」

「はい」

「どういう天職が出るだろう。やっぱり、『将軍ジェネラル』が出るのかな」

「それはなんとも……」


 実際どうなんだろう。

 元々、将軍の天職を得て、実際に将軍になるためにいろいろやってたらしいのだし、普通に考えれば、また『将軍』が出るのが筋のような気がする。

 いや、神様によって出る天職に偏りがあるとか……そういうのもあるのかも……?

 他に選択肢があるわけでもなし、考えたって仕方がないことだけども。


「じゃあ、始めます。イオン、手を」

「はい。よろしくね、シャマシュ」

「うん」


 手を握り、頷き合うふたり。

 シャマシュさんが呪文をひとつ紡ぐごとにオーラが溢れ出す。


 そして、一際強い輝きの後、祝福の儀式は無事に完了した。




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