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最終話  ネトオク男よ永遠に! の香り



「ほう……これが『降誕の明星ジ・アルケミー』ですか……。宝石とうかがっておりましたが……大きいですな」


「形容しにくい形状ではありますな。だが、この輝きと硬さ。宝石としか言い様がないでしょう。……しかし、このような品でよかったのですかな? これは卑金属を金へ変換できる品とはいえ、それなりの魔結晶も必要になりますし、御用商であるソロ家で欲しがるようなものでもありませんぞ」


「ハイエルフの秘宝をいただけるというだけで、十分ですよ」


 光沢のある絹の衣に身を包んだソロ家筆頭、つまりヘティーさんとエフタの父親であるソロ氏が、ディアナの父親である最後のハイエルフと話している。

 ここは、エルフの里からほど近い街の町長の家の一室。

 俺はディアナの精霊魔法で姿を消して盗み聞いていた。


「では、いちおう機能の説明を。まず、使うには術者が必要ですぞ」

「魔術が使えるものなら、誰でも大丈夫ですかな?」

「ある程度、術に長けた者。できれば魔族がいいでしょうな。こちらは、私の古馴染みの魔族で、ディーンと申すものです」

「……はじめまして。ディーンです」


 仮面を付けた全身真っ黒ローブの魔族。ディーンと名乗る男が頭を下げる。


「では、基本の錬金をお見せしましょう。『降誕の明星ジ・アルケミー』に卑金属を入れます。今回はこちらの白銅貨で試します」


 男が『降誕の明星』のフタをパカっと開けて、白銅貨と魔結晶を入れた。

 ソロ家の親父と、ディアナの父親が見守る中、ディーンはなにやら呪文を唱え始めた。

 そして、しばらく後にまたフタをパカっと開けた。


 そして中から、金色に輝く白銅貨を取り出す。

 見事に金ピカ。まさに錬金術だ。


「……ほう。確かに。……しかし、君、ずいぶん可愛い手袋をしているのだな」

「…………」


 ふと気になったという風に、ソロ氏が言う。

 確かに、特徴的だ。そのロバの刺繍・・・・・が施された手袋は。


「あとは、私達は里でパンを焼くのに使っておりました。精霊文明時代、神々が愛用した神器から生み出されるパンですからな。それも祭の時だけですが」

「パン……ですか。それもできるのですかな?」

「時間をいただければ。ディーン頼むぞ」

「かしこまりました」


 ディーンが手袋を外し、懐からなにやら取り出す。


「材料を入れます」

「なんだそれは。米……?」

「米です」


 ディーンは半分無視するかのように、『降誕の明星』に材料を投入していく。

 手早く投下して、フタを閉め、スイッチポン。


「おおっ……!」


 神器に光が灯り、ガタガタと動き出した。

 先ほどの金を錬金する時には見られなかった動きだ。


「このまま、数刻おまちくだされ」

「そんなに」


 ~数刻後。


「おおっ! すごい!」


 ピーッと音がして、やおらディーンはフタを開けた。

 中にはミッシリと美味しそうなパンが焼き上がっている。

 まさに神の奇跡だ。


「食べても美味しいですぞ。どうですかな?」

「うむっ! さすがは精霊文明時代の遺物。心が洗われるような味ですな」


 ホクホク顔のソロ氏に、なんとなく罪悪感が湧いちゃったりして。

 だが、この男が現皇帝と画策し、イオンを追い、アイザック氏を殺し、そして、ヒトツヅキの前だってのにエリシェからハンターを金で引きぬいたのだ。ディダを殺したへティーさんに対する嫌がらせのつもりだったらしい。

 だから、これくらいの報復はさせてもらう。

 ……まあ、単純に『降誕の明星ジ・アルケミー』を渡したくないってだけでもあるが。


「では、いただいていきますぞ。今後共、ハイエルフ様とは懇意にしていきたいものですな」

「はっはっは。次の代はまだまだ先になるでしょうが、また『特別なお導き』の時は、サポートのほどよろしく頼みますぞ」


 ディアナの父親(正確には違うのだが)も、なかなかタヌキだ。

 次の代なんてないのに。


 そうして、ソロ家の親父は去っていった。

 精霊文明時代の秘宝『降誕の明星』だと信じて、ご飯からパンを作れるホームベーカリーを部下に運ばせて。電源装置込みだから、けっこう重いぞ。


「……これで良かったですかな、婿どの」

「婿どのはやめてくださいよ、でも完璧です。ありがとうございます」

「お父さまも、思ってたより嘘が上手だったのです」


 俺といっしょに透明化して事の顛末を見守っていたディアナが精霊魔法を解除する。


「シャマシュさんもお疲れさまでした」

「いやぁ、私はやっぱりこういう演技ごとは苦手だよ。大丈夫だったかい?」

「……まあ、多少ダイコンでしたが、いい感じにぶっきらぼうさが出てましたよ」

「こんな見た目だからね。しかしまさか、性別を変える魔法まで使うなんてエンシェントエルフってのは恐ろしいもんだな」


 術者のディーンこと、シャマシュさんにかけた魔法もディアナが解く。

 性別逆転魔法。最初なんだそりゃと思ったものだが、元がMMORPGだと考えると、ありえる話かもしれないなんて思ったりして。

 でもまあ、いい感じの変装になった。


「まあ、とにかくもうここには用もありませんし、戻りましょう。みんな、首を長くして待ってるでしょうから」


 俺たちはディアナの転移魔法で、ディアナの実家、つまりエルフの里へ飛んだ。

 精霊魔法を十全に使えるようになったディアナは、並外れた天才術師だ。普通は、『精霊術師』の天職を得ずに、ここまでの精霊魔法を使いこなすなんてありえないのだそうだ。

 ちなみに本人は未だに天職が未設定である。

 もう「お嫁さん」だから、どうでもいいとかなんとか……。まあ、人生はまだもう少し長い。冬の間にでもじっくり考えればいいだろう。


 輝く精霊力に包まれて、転移は一瞬。

 気付いた時には、エルフの里の広場にいた。


 巨大な巨大な大木。世界樹の麓では、たくさんのエルフ達が暮らしていた。

 エルフの里。金髪の長耳美人さんが、山程いらっしゃるこの世の楽園だ。

 まあ、新婚であるところの俺は、そんなものに心を乱されたり乱されなかったりだが、それはさておき。


「ただいまー」


 ハイエルフの館。

 ディアナの実家に入ると、みんなが出迎えてくれた。


「おかえりなさいであります!」

「どうだった? やっぱり悪そうな親父だった?」

「せっかくのチャンスなんだから、ブッ殺せばよかったのに……」

「悪そう……というか、普通のオッサンでしたよ。ヘティーさんには似てませんね」


 マリナとレベッカさんとへティーさん。


「ありがとうアヤセさん。私も最後の意趣返しができてスッとしました」

「まあ、あんなもんじゃほとんど嫌がらせっていうか、イタズラみたいなもんだけどね」

「……私が術者の役やりたかったのに」

「魔術使えないと、魔結晶を消すトリックが使えないでしょ」


 イオンとエレピピ。


「あれ? 神官さまは?」

「エルフの里に初めてきたテンションで、飛び跳ねながら出てったっきりですよ、ボス。かくいう私も、こんな珍しい場所に来れて感無量です!」

「エトワちゃん、全身の毛が逆立ってたもんね。私もこんなキレイなものが見れて、感動しちゃった」


 エトワとオリカ。


 ヒトツヅキが終わって、みんなで観光がてらに来たのだ。

 ディアナの転移魔法は一度に10人まで転移できる性能で、知っている場所ならどこでも飛べるという便利さだ。

 特別なお導きが達成され、そして結婚の報告をする為に、実家であるエルフの里へ来たのだった。


 エルフの里は本当に森の中にあった。

 本当に地平線の先まで森だ。その中にひときわデカい樹が立っていて、それが世界樹なのだという。世界樹は、それこそ東京タワーくらいあった。縦にも横にもだ。並のデカさじゃないぞ。


「婿どの。これが本物の『降誕の明星』です。貰ってくだされ」

「これが……」


 ディアナの父親が、平べったい金色の大きい石を持ってくる。

 石というか、宝石というか、見ようによっては皿にも見える。


「では、失礼して……『真実の鑑ザ・ジャッジメント』!」


 ―――――――――――――――――――――― 

【種別】

 管理者用固有アイテム No.7


【名称】

 降誕の明星ジ・アルケミー 


【解説】

 ハイエルフのみ使用可能な錬金用の宝石

 レシピを渡してハイエルフにアイテム合成してもらおう!


【魔術特性】

 なし 


【精霊加護】

 不滅 ∞ 


【所有者】 

 ジロー・アヤセ  


 ――――――――――――――――――――――


「ひ、ひえええええ……」


 マジもんのお宝でござったか……。

 ハイエルフだけが使えるんじゃあ、もしソロ家の親父に渡してても使えなかったってことなんだな。

 まあ、うちはディアナがいるから使えるだろう。しかも、たぶん夢幻さんのタブレットを紐解けば、錬金レシピとやらもカンニングし放題……。

 ちょっと世界的なパワーバランス崩れまくっちゃいそうだし、自重が必要かもな。


「それに、婿どの。この屋敷にはまだまだ精霊文明時代のお宝がありますが、すべてあなたにお譲りします。有意義に使ってくだされ」


「いいんですか?」


「もう私にはハイエルフの力もありません。これからは余生を諸国漫遊でもしながら、過ごす予定ですからな。まあ、ナンナは残りますから、なにか困ったことがありましたらナンナに訊いてくだされ」


「そういうことならば、いただきましょう」


 ディアナの父親は、ディアナ共々、最後のハイエルフとなる。

 もしディアナが『特別なお導き』を失敗していたら、父親がハイエルフの真実をディアナに話し、何十年後かに父親が次代のハイエルフとなる分身体を作り引退、ディアナはそれを見守る母親役をやることになっていたのだそうだ。そして、父親の分身体が『特別なお導き』を失敗したら、今度はディアナが分身体を生んで、父親の分身体が父親役になり――

 ハイエルフはずっとずっとそうやってきた。

 だが、それも今代で終わり。ハイエルフは事実上滅亡する。


 ちなみに「ナンナ」というのは、ディアナの前身体である元ハイエルフだ。ずっと前にナンナが『特別なお導き』を失敗し、その後に生んだ自らの転生体がディアナなのである。ナンナは、ディアナにハイエルフとしての力をすべて受け渡し、自らは普通のエルフとして余生を過ごしているのだ。

 まあ、エルフだけに全然見た目若いですけどね! ディアナが「おばあさま」なんて呼ぶから何事かと思ったわ。

 さらに、このナンナはセレーネさんを生んだハイエルフでもある。まあ、ハイエルフは男女一人ずつしかいないのだから当然だが。


「……しかし、今回のこと、大丈夫ですかね。あとで怒って攻めてきたりとか」

「はっはっは。婿どの、ここはエルフの里。人間は絶対に自力で入っては来れない場所。心配はありません」

「ご主人さま。この場所には、お屋敷に張られた結界の何千倍も強力な結界が張られているのですよ?」


 まあ、そうね。俺たちはディアナの魔法でワープしてきてるからいいけど、普通に入ってくるには、かなりの情熱が必要だろうな。

 帝都にはたくさん雇われエルフがいるだろうけど、みんなハイエルフのシンパだから裏切るってこともないだろうし。

 そもそも、エルフは管理者側だから、人間が戦いを挑むのは無謀だ。


 しばらくして神官ちゃんが戻ってきて、みんなでエルフ式のご馳走をいただいた。

 いやぁ、俺もついにイモムシ食べたけど、想像してたよりはるかに美味しくて、なんだかちょっと負けた気分だったよ。



「じゃあそろそろ帰るか!」


 みんなに声を掛ける。

 もう用は済んだ。すでに一泊してるから、そういつまでも遊んでもいられない。

 というか、ディアナの精霊魔法を使えば、またいつだって来れる。

 帰りだって、クラン特典のテレポート魔法で一瞬だ。


「帰ったら、冬籠りの準備をしなくてはならないのです。本格的に冬が来る前に」

「雪がけっこう降るんだっけ? 訓練もできないし、なまっちゃうな」

「……ふふふ、そんな余裕はきっとないと思うのですよ?」


 意味深に、妖艶な微笑を見せるディアナ。

 全身を覆っていた刺青がなくなり本物の美人になったディアナに、しばらくなんとなく気後れして、距離感を測りかねていた。

 ディアナは美人だ。100%ドストライクのエルフ! である。

 本当はもっとテンションアゲアゲになりたいところだけど、今まで過ごした歴史が邪魔して、未だ初夜すらまだだったりするのだ。

 もう結婚したのだし、自然とそうなるべきなのに。

 しかし、冬か。

 寒いのはちょいと苦手だな。


「余裕ないの? まあ……うちは鏡があるから、物資のことで困ることはないだろうけど、雪に閉ざされるとなるとなぁ」

「冬にやることは、もうちゃんと決まっているのですよ、ご主人さま」

「そうなの?」

「そうであります!」


 マリナまで同意する。

 俺だけが知らない予定が冬のあいだ中、詰まっているのか?


「それでなにするの?」

「……そ、それは……」

「子づくりであります!」


 言いよどむディアナに代わって、元気よくキッパリ答えるマリナ。


「冬の間は、子づくりするものなのであります! あ、あるじどの! 寝かさないでありますよ! フゥッフー!」

「ちょ、マリナ! 最初は私なのです!」

「わかってるでありますよ、姫。冬は長いのであります!」

「あー、ずるい! わたし……私だって!」

「じゃあ私も私も!」

「……順番なら私も早いほうじゃないかな」

「ボスはカナン族はダメですか?」

「めめめ、メイドはどうでしょう!」

「メイド二号もいるよー」

「あっはっは。楽しいね。私も立候補させてくれ」


 なんだか、ぎゅぎゅうと抱きしめられてしまった。

 こうなったらもう認めるしかない。ハーレム状態だ。気付いたらハーレム野郎だ。


 たくさんの夢と期待と希望。

 数えきれないほどの愛を受け取って、これからも人生は続いていくのだ。


「うおおおお! みんな大好きだ! みんな! 全員! 愛してる!」






 ◇◆◆◆◇




<エピローグ>





「シャマシュおばあちゃん、またご本読んでー!」

「あー、ちゃんと校長先生って呼ばなきゃダメなんだぞう! それに、キョウカばっかりズルい! 私にも私にも!」

「あたしあたし、おじいちゃんのお話聞きたい!」


 チャイムが鳴り休み時間になると、校長である私のところに子どもたちが群がってくる。

 キョウカ、ユリ、アコ。3人とも可愛い可愛い私の孫だ。

 正確には、この学校の生徒はほとんどが私の孫。

 もっと正確に言えば、私たちの孫・・・・・だ。


 せがまれて、彼のことが書かれた子ども向けの本を読む。

 これを読むと、どうしようもなく彼のことを思い出してしまう。まあ、元々彼のことを忘れた日など一日だってないのだが。


 ……一生をたった一人で生きようと思っていた私に、これ以上ないほどの幸せを与えてくれた彼が亡くなって、もう10年以上経つ。


 今でも昨日のことのように思い出す。


 最初の冬の間中、本当に休む間もないほど入れ替わりで彼を求めたこと。

 あの時のことは、今でも懐かしく思い出す。

 バカみたいにみんな若かったな。


 新婚旅行ということで、みんなでヘリパ湖へ行った。

 精力増強に効くヘリパイール(彼はウナギって言ってたっけ)を食べて精力絶倫、新婚旅行のはずなのに、ずっと宿に籠りっきりになってしまって、お導きが達成できず精霊さまに彼が怒られてたっけ。


 鏡を抜けて、彼の世界に行ったこと。

 初めて会った彼の両親は、私たちを見て泡を吹いて倒れたからビックリしたっけ。

 車に乗って観光したこと。

 見たこともない景色、新しいものばかりで、年甲斐もなく興奮した。


 マリナさんが、ヒトツヅキのモンスターから出たドロップアイテムを使って、騎士から、特別な天職『セイクリッドクロス』になったこと。

 そして、彼の騎士隊はドラグーン、パラディン、ジェネラル、セイクリッドクロスを擁して、次第に世界をも動かす力を持つようになった。

 騎士隊は、アルテミス騎士団と名を改めて、ソロ家三男だったエフタ・ソロをバックアップ。鉄道事業を始めたエフタは、他の兄弟を出し抜いて、無事にソロ家当主に。

 その関係で、まさか本当に帝国と戦うことになるとは思ってなかったけど、彼の機転とアイデアで、ほとんど血を流さずに革命を成し遂げることができた。

 表向きは民衆のためなんて言ってたけど、本当はイオンのためだったんだよね。彼は最後の一線でどうしようもなく優しかったから。


 新しい国は素晴らしい国になった。

 戦えば最強だが、決して戦わず、領土的な野心もない国。

 彼に言わせれば「ただのチート」らしいけど、でも世界は本当に良くなった。

 騎士職の女性は騎士になれるようになったし、人種による迫害もなくなった。


 彼は目立ちたがらなかったけど、私たち、彼と関係した女たちは全員知っていた。

 彼が、彼こそが英雄だって。


 数多の発明。国造り。道徳観。

 特に、天職がすべてじゃない、好きな人が好きなことをやれるって価値観は、今でこそ当然のものとされているが、最初のうちはなかなか受け入れられなかったっけ。

 ヒトツヅキの戦略だって、新しいものをいくつも実践して、死者が出ることはほとんどなくなった。


 彼が興したお店は、いまではいくつかのチェーン店となって、どの街にもある有り触れたものになった。

 はじまりは、エリシェの小さな露店だったって、今では伝説みたいに語られてる。


 彼は本当に、語りきれないほど、いろいろなものを残したのだ。


「シャーマシュ。いる? 今夜、ひさびさに一杯付き合ってよ」


 子供たちに絵本を読んでいたら、コンコンというノックの音と共に校長室にまたお客さんが来た。


「ああ、神官ちゃんか。いいとも」

「その呼び方はやめて。彼を思い出しちゃうでしょ」


 神官とは、あれから文字通り100年来の親友となった。

 正確には、ふたりとも彼の妻なのだから、家族というべきか。


「あら? またそれ読んでいるの?」

「せがまれてしまってね」


 私が子供たちに読んでいるのは、彼とディアナとの物語だ。

 二人が出会い、いろいろな困難を乗り越え、ヒトツヅキでの戦いの末、結ばれるという美しい物語だ。

 ただし、彼はこれを見て「こんな困難はなかったぞ」と笑っていたものだが。

 ちなみに、子ども向けの本なのでハーレムのことはぼかされ・・・・ている。


「ほらー、はやく続き読んで、シャマシュおばあちゃん!」

「最後、最後はどうなったの?」


 私は肩をすくめた。

 最後どうなったか? そんなものは決まっている。


「はいはい。

『こうして、ジローとディアナは結ばれました。二人は愛し合い、たくさんの子どもを作って、仲良く暮らしましたとさ』。

 ……あなたたちも、この二人の子孫なのよ。胸を張って、愛を伝えていってね?」


「はーい!」


 子たちが元気よく返事をして校長室を出ていく。


 子どもたちは、きっとその愛を正しく次の世代へ伝えてくれるだろう。

 また自らも人を愛し、子を産み、育てるだろう。

 彼を愛した私たちのように。


 愛は、永遠にずっと続いていくものだから。





 おわり






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