今日の、皇太子殿下の生誕の祝賀をなんとかやり過ごす。
そして、その先は……。
『一度、私の実家の領地へ下がりましょう。幸いなことに、私の実家は辺境だから、ここまで、通うような貴族の男はいないはずだし、噂が嘘だということは出来るはずよ』
『けれど何か、理由が必要なのでは?』
『病気で静養というのが一番ね』
『さしあたっては、今日の生誕の祝賀を、なんとかやり過ごすのが第一だよ、そして、皇太子殿下の婚約者から、平和に降りれば良いし、『聖なる乙女』に近付かなければ、『聖なる乙女』に悪事を働くこともないだろう。だから、学院へいくことはならない。近付いただけで、何が起こるか解らないからね』
生き延びるためには、それが一番だろう。
両親が、それを必死に考えてくれていたのも、ありがたい。
『私も、お前の不名誉な噂話が消えるように、なんとか動いてみるよ』
兄も、そう言ってくれたのが心強い。
兄、ルーデルスは美貌で知られ、国中の令嬢から、憧れの視線を一身に集めている、華やかな方だったからだ。