シモリくんへ
あなたは、統合失調症でした。あなたは、統合失調症が寛解することはあっても、完治することはないと、よく理解していましたね。
「死ねば治る」それがあなたの口癖でした。
どうだろう、シモリくん。統合失調症が治ったのかな?
あなたの行先が天国か地獄なのかは分からないけれど、そこでまだなお統合失調症に苦しめられていないことを祈ります。
シモリくん。あなたは、自分が制御できないということをよく理解していた。
自分が制御不能になって、もしかしたら他人に害を与えたり、自ら死を選んでしまったりするのではないかと、心配していましたね。
少なくとも、もう、その心配は無くなったかな?
あなたは統合失調症と闘った。高校在学中に学校に行けなくなって、病院も拒んで、でもいよいよ病院のお世話にならなきゃって、家族に無理矢理連れて行かれて、統合失調症という病名を貰ったね。
それから数十年?あなたはよく闘った。健闘した。
あなたは、街中で急に大声を出すこともあった。怖がられる人の側面もあった。
でも、見知らぬおばあさんの荷物を持ってあげるような優しさもあったね。
シモリくん。あなたはコントロール出来なかった。ノット・アンダー・コントロールだった。
だから、あなたがこういう結果になったのは、きっとあなたの本意じゃないと思う。
それでも、あなたが苦しんだこと、死ぬまで闘いの中にあったこと。私たちは、忘れないから。絶対に覚えておくから。
あなたの一面しか知らない人は、あなたのことを害悪と思ったかもしれない。
でも、善の部分もあったとちゃんと知っているから。
だから、そんなあなたにこの賞を贈ります。
シモリくん。あなたに統合失調賞を贈ります。おめでとう。
【了】