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第3話:見送り


早起きして身支度を整えると屋敷を飛び出そうと玄関ホールに立っていると、父が走ってきた。


「父上。おはようございます」

「朝食は?」

「早くしないとマルセロが、出立してしまいます」


難しい顔を見せる父は俺の肩を優しくたたき、背を押してくれた。


「そうか。今日が出立の日か。彼はムツ公爵家の軍閥だが、優秀な男だ。顔を見せて上げなさい」

「はい」


許可をもらい玄関から朝露の滴る庭を通り、霧の中馬車に乗る。

向かうのは軍の中央司令部。ではなく、王都の窓口、西門である。

御者窓を叩き、合図をすると馬車が動き出す。かと思えば、ちょっと動いた瞬間に騒がしくなり、ドアが開く。


「グスタフ」

「おはようございます、お兄様」

「あ、そうか。お前がいないと魔術強化してもらえないよな」

「はい。お任せください」


グスタフは俺の隣に座るとちゅっと口づけをして来た。


「ん」

「西の門まで時間がかかりますし……」


するりと足を触られグスタフの頬を張った。


「嫌に決まってんだろ」

「はい、すみませんでした」


分かればいいんだ。

ガタガタと揺れる馬車の中で無言の時間が過ぎるがグスタフは鼻歌交じりに俺の髪を梳く。


「やめろ」

「何故ですか」

「気持ち悪い」


その言葉にグスタフは目を細めて低く唸る。


「……は?」

「き、気持ち悪いだろ!俺は兄貴だぞ!」


やせ細った体に父に言われて伸ばしている長い髪。まるで病弱な少女のような見た目の俺。

何より兄弟でそんなことは良くない。うん、良くない。

殺されそうだし。

気持ち悪いと言った瞬間からグスタフは俺の臭いを嗅ぎ始め、溜息を吐く。


「良い匂いじゃないですか」

「洗剤の臭いだろ」

「ふーん?」


ぺろりと唇を舐められ、咄嗟にがっしりとしたその体を押し返そうと叩いた。


「やめろ!」


がぶりと口を吸われ、固く閉じた歯列を分厚い舌が舐る。


「んっ」


絶対に歯は開かないという信念を持っていたが股間を弄られて慌てて叫ぶ。


「ちょっやめろよ!」


その隙を縫って口の中を分厚い舌が蹂躙する。


「ふっあっ」


水音、互いの唾液が混ざる音。時折グスタフは俺の舌を吸い、俺が逃げないように後頭部をその大きな掌で支えていた。


「はなっん、ふぅっんっんっぅう」


ぢゅっと音がすると口が離され解放された。


「ふあっ」

「勃起しました?」


するすると触られてもなんとも反応しないそこにグスタフは残念そうだった。

俺は盛大に舌打ちした。そりゃそうだろうよ。女扱いされて喜ぶ男がどこにいる。

お前の性欲処理には問題ないならそれでいいだろ。

どんと逞しい胸板を叩き睨み上げる。


「どうしましたそんなもの欲しそうな目で」

「物欲しそうじゃねえ!やめろっつってんだろ!」

「何て愛らしい……」

「てめえ!馬鹿にすんのも大概にしろ!!」


ぱあんと頬を張ると残念そうな顔で俺の足をさする。


「触んな」

「魔術強化」

「うっ」


また顔が近づいてくる所にドアが開く、そちらを見ると御者がお辞儀をした。


「着きました、お坊ちゃま」

「うん。ありがとう」


そそくさとグスタフから離れて馬車から出て軍人の一団に向かう。

向こうからマルセロがすぐ来た。

マルセロは笑顔で周りの軍人達もどこかピリピリしているのに、なんとなくマルセロを見る目は穏やかだった。


「リカルド!来てくれたんだな」

「マルセロ。弟がお前に魔術強化してくれるって」

「ロドニー中将閣下が?」


その一言に準備をしていた軍人達がざわめく。

グスタフの【戦闘能力向上EX】と言うスキルは相手にも付与できる。これはスキルを持っている全員が出来るという訳ではなく、グスタフがそれだけの鍛錬を積んだという証左である。

グスタフがその巨躯を見せると軍人全員が敬礼し、マルセロも敬礼した。


「楽にしていい」

「はっ」


グスタフはマルセロに近づき、その手を取って、かっと光るとマルセロは驚いた顔を見せる。


「特別だ。兄が、どうしてもと頼んだから。1月もつ」

「うん。マルセロ。絶対、帰って来いよ。みんなもな」


軍人達を見渡し皆きらきらとした目でこちらを見ている。


「ありがとうございます、閣下」

「無事にな」


俺はさらにマルセロに話しかけようとしたがグスタフが肩を掴んで馬車に回れ右させられ押し込められると馬車が動き出す。

思わず隣に座るグスタフをどつき倒す。


「なんだよ!マルセロは半年は戻ってこないんだぞ!?」

「魔術強化したんですから、直ぐ帰ってきますよ」


このっこのっ!!ああ言えばこう言う!!!

どすどすと腹を殴っていても涼しい顔。


「どうですか。嬉しいですか」

「うん?うん。マルセロは無事に帰って来るかな」

「大丈夫ですよ」

「そっか」



ぎしり、と椅子を鳴らす。

溜息交じりに下を見た。


「下手くそ」

「ふあい」


巨根を咥える部下は机の下、椅子の前で必死に奉仕しているが、まるで勃起しない。

こいついつまで経っても下手くそなんだよな。

見た目が幼げでかつ髪の色も珍しい紫色。今は長くさせている最中だ。今はまだ兄には程遠い長さである。


「んっ♡ぢゅっ♡あっふっんぢゅっ♡♡」

「はあ」


乱暴に頭を掴み喉の奥に思い切り挿し入れる。


「んぶっ」

「てめーはオナホなんだからさっさとすませろ、下手くそが」

「ん」


射精し喉奥に大量にぶちまけるとキナンは目をとろとろにして喉を鳴らす。


「閣下ぁ……ください。淫乱おまんこにぶちこんでください♡」

「ああ、やだ」


気分じゃなくなった。こいつ下手くそすぎるし、初めての兄を味わった後だ。

こいつで上書きするには早すぎる。


「ええええ」

「仕事しろ」

「はあい」




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