「【酒蔵】があると、どんなお酒も簡単に出来るんですよ」
「便利よねぇ。昔さ、ワイン造りしてるところを見たんだけど、大変そうだったもん」
「普通はどうやって作るんでしょうね?」
「なんか、大きな木のタライにブドウを入れてさ、女の人が踏んでたの」
「ブドウをですか!?」
「そう。素足で、踊りながら。まぁ、あれはショーでもあったんだろうけどね」
素足でブドウを…………そして、それを飲む!
「みなさん! 頑張ってブドウを収穫しましょう!」
「魂胆と下心が見え見えなんですけどぉ-」
キッカさんがボクを冷ややかな目で睨んでくるが、睨まれたって構わない。
アイナさんの素足で作ったワインが飲みたい!
いや、もういっそ、アイナさんの踏んだブドウが食べたいっ!
えぇい、まどろっこしい! アイナさんの素足を舐めたいっ!
そしてボクは立派な『素足ペロリーナ』に…………
「…………ボクは、ダメな男です」
「シェフ!?」
世界に等しくかかる重力に、ボクは負けた。
地面に四肢を突き、うな垂れる。
素足を舐めたいは、ダメだ。アウトだ。犯罪……いや、変態だ。
っていうか『素足ペロリーナ』ってなんだ!?
確実に妖怪じゃないか、それ!
そういうことばっかり考えてしまうから、アイナさんに「きもっ」とか言われてしまうのだ…………素足は、舐めちゃダメだ……舐めちゃダメだ……舐めちゃダメだ……
「だ、大丈夫か、シェフ? どこか悪いのではないか?」
「大丈夫です……素足は、舐めるものではないと学習しましたから」
「なんの話をしてるのかよく分かんないけどさ……タマちゃん、ちょっとキモいよ?」
くぅ……やっぱりかっ。やっぱりなのか!
むっつりはキモい……何を考えているのか分からないあたりがキモい。そうに違いない!
「じゃあ、爽やかに微笑みながら『土踏まず、舐めたい☆』って言えばいいんですか!?」
「それはもう、一般人のカテゴリーから外れた話だから」
爽やかに言えばなんだって許される……そう思っていたのに。どうやら違うらしい。
「しかし、足で踏むとは……。不衛生ではないのだろうか?」
「お師さんに聞いたところによると、うどんという麺類も、踏んで作るらしいですよ」
「うどん? 踏むのか?」
「はい。そうすることでコシが出るんだとか」
「腰が……出る?」
アイナさんが自分の腰を掴んで首をひねる。
「ぶかぶかのズボンを穿いて行うのだろうか?」
そうすれば、うどんを踏んでいるうちに腰が出ちゃいますね、ちらって。
でも、そうじゃないですよ。
「いつか、やってみたいものだな」
「ホントですか!?」
アイナさんの手料理ならぬ足料理、ゲットのチャンス到来!
ワインの作り方は分からないからブドウ踏みは出来ないけれど、うどんならば作れる! 踏んでもらえるっ!
打ちましょう、うどん! 出しましょう、コシ!
と、叫びたかったが、キッカさんの鋭い視線が突き刺さっていたのでやめた。
命は、大切。