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アニメの中に取り込まれたら、ラスボスの悪役令嬢と結ばれました。
アニメの中に取り込まれたら、ラスボスの悪役令嬢と結ばれました。
専業プウタ
異世界恋愛悪役令嬢
2025年06月25日
公開日
2万字
完結済
俺はブラック企業でメンタルを崩し、社会からドロップアウトした。大学時代から付き合っていた彼女から2股をかけられていた上に捨てられる。女と社会への恨みを書いた小説が運良くメディア界のフィクサーの目に留まりアニメ化する。しかし、そのアニメのクオリティーの高さに制作会社のブラック企業ぷりを想像してしまった俺は社畜時代の苦しみのフラッシュバックに陥った。気がつけば俺は自分の小説が原作のアニメの中に取り込まれ、主人公ライオット・レオハードに憑依していた。主人公を利用しまくる予定の絶世のラスボス悪役令嬢との接触を避けようとするも、その行動が思わぬ予想外の展開を生む。ラスボス悪役令嬢はチート級の能力を持つ危険な女、逃げろ! 惹かれずにはいられない魅力に贖い世界を救え!

第1話 創造主様に帝国一の美女を献上しなくてわ。

「ライオット・レオハード皇子殿下に、エレナ・アーデンがお目にかかります」

黄金を溶かしたような金髪にルビーのような赤い瞳をした絶世の美女エレナ・アーデンの登場だ。

俺が創造したキャラクターである彼女は、まさに悪役令嬢だ。


俺との婚約話が持ち上がった彼女と俺は皇宮のガーデンテラスでお茶をする。

アニメ『赤い獅子』の第一話の場面だ。


彼女は自分の美しさを武器に、ライオットを誘惑しまくり利用する。

俺は彼女と婚約することになっているが、すぐにあっさり捨てられることを知っている。


「婚約の話は無しで良いよ。俺は、もう顔が良いだけの女は卒業しているんだ」


「私が顔だけの女に見えますか? 皇子殿下のお役に立てる女ですよ」


「皇子殿下を利用する女の間違いだろう。薄っぺらい女だな、俺はお前と婚約する気はない。弟のアランとの婚約できるチャンスが来るのを待ったらどうだ? 俺と婚約しても、未来の皇后にはなれないぞ」


ライオットは皇帝と踊り子の息子で、血筋的に皇后の息子であるアランに劣るのだ。

この後、次期皇帝として立太子するのは弟のアランだ。


「いいえ、私があなたを次期皇帝にします。第一皇子であるライオット・レオハード皇子殿下が皇太子になり次期皇帝になるに決まっております。アーデン侯爵家があなたの後ろだてになります」


「よくもまあ、そのような適当なことが言えるな。俺は未来が見えるんだ。このあと、弟のアランを立太子させる話が出て来る。皇后陛下は立太子のお祝いに、帝国一の美女のエレナ・アーデンを可愛い息子アランに献上するんだ。俺との婚約話は白紙になる」


「私をまるでモノみたいにおっしゃるのね」


「モノだとは思ってないよ。俺はお前を強かな蛇だと思っている。エレナ・アーデン、お前は強欲でアランのことも利用しようとするんだ、他国の王族と通じて彼のことさえも陥れようとする」


「私のことをお前だとか呼ぶのをやめていただけませんか?私はライオット皇子殿下と正式に婚約するつもりですし、弟君に乗り換える節操のない行動もするつもりはございません。他国の王族と通じるなどと、レオハード帝国で最も尊敬されるアーデン侯爵家の家紋の名に傷がつくようなことするわけがありません」


「申し訳ないけれど、何を言われようとアーデン侯爵令嬢と婚約するつもりはない。侯爵令嬢は俺の嫌いな女に似ているんだ。ちなみに、俺は本当は可愛い系の女がすきなんだ。侯爵令嬢は美人系だよな、そもそも俺の好みではない。さようなら、もう会うこともないよ」


「ライオット・レオハード皇子殿下、初めてお見かけした時からあなたをお慕いしておりました。嫌いな女と似ているとおっしゃいますが、私はその女とは違う人間です。どうか、私自身をみてください。婚約する仲なのです、エレナとお呼びください」

俺にすり寄って来るエレナ・アーデンに、そこまでするかと呆れてしまう。

彼女は俺の作ったキャラクターで、目的にのためなら何でもする女だ。


「初めてあった時っていつですか?子供の頃ですよね。エレナ、適当に作った過去話で俺を誘惑しようとしているのはバレているんだ。俺は今は皇宮で悠々自適生活を送る皇子だけど、このあと立太子できず戦場に送られて死を望まれる。俺はそんな不遇な俺を支えてくれる優しく可愛い女と一緒になるんだ。エレナのような権力を求め女を武器にして、のし上がるような女には興味がない」


「そうですか、では私はこれより女としてではなく、あなたの相棒として寄り添います。女としての私が欲しくなった時に、私を女を武器にする強欲な女扱いし侮辱したことを後悔してください。これから、あなたが後でどれだけ願い乞うても女としてのサービスは一切してあげませんから。私は正式にあなたと婚約しますよ。そうでなければ、私の力であなたを次期皇帝にすることはできませんので」


エレナは静かに俺に言うと、横にいた皇室の騎士の剣を抜き取った。

「侯爵令嬢、殺傷沙汰は⋯⋯」

動揺する俺の顔をみて彼女は少し微笑み、その長い髪を剣でバッサリと切り落とした。


美しい金髪が地面に落ちる、赤いルビーのような瞳が俺だけを見据えていた。

俺の作ったはずのキャラクターである、エレナは俺の思っていた女を超える存在だった。


「何を企んでいるのか知らないが、周りの者がエレナの行動に動揺してる。今日のところは帰ってくれ」


突然のことに周りの使用人達が、動揺しつつもエレナの落ちた髪の毛を必死に集めている。


「これから、皇帝陛下のところへ行って、正式に婚約することをお伝えに行かねばならないでしょ。ライオット」


俺の頬に手を添えて、魅惑的な眼差しで見つめて来る彼女を見て髪を切ったのはパフォーマンスだと認識した。


「エレナ、俺は君と婚約する気はない。実は俺はこの世界の創造主なんだ。だから、君の浅い考えなんてお見通しなんだよ」


俺は自分の書いた小説『赤い獅子』のアニメ第1話を見ている時にこの世界に取り込まれた。

主人公ライオット・レオハードは最終的に心優しいヒロインであるレノア・コットンとくっつく。

しかし、その前に散々苦しい目にあうのは全て絶世の美女エレナ・アーデンが原因だ。


「あら、では帝国一の美女を創造主様に献上しなくてわ」

エレナはそう言うと俺の腕にしがみつき、誘惑するように俺を見つめた。









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