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第10話 やっと見つけた大事な人。(エレナ視点)

クリス・エスパルの戴冠式を終え、帝国に帰ると私とライオットは結婚式を挙げた。

やっと、彼を私だけのものにできると私は安堵した。


「私、ライオット・レオハードはあなたの夫となるために自分を捧げます。そして私は今後、あなたが病める時も、健やかな時も貧しい時も、豊かな時も、喜びにあっても、悲しみにあっても、命のある限りあなたを愛し、この誓いの言葉を守って、あなたと共ににあることを約束します」


私、エレナ・アーデンはライオットと結婚した。

アーデン侯爵家がライオットと婚約するならば、彼が皇太子になることが条件だと言ったのは彼と結婚させたくない為だった。

伝統のある侯爵家だ娘の結婚相手に平民の血が混ざった男は選ばない。

しかし、皇室から婚約するよう要請があった以上、ライオットとの婚約を断ることができなかった。


だから、絶対に私とライオットが結ばれることがないように、ライオットが皇太子になることを条件に婚約を結んだ。

皇后陛下の実子であるアラン皇子が立太子するのは暗黙の了解だった。

それを、私はライオットと男女の仲になったと主張して、ライオットを無理やり立太子させた。


「私、エレナ・アーデンはあなたの妻となるためにあなたに自分を捧げます。そして私は今後、あなたが病める時も、健やかな時も、貧しい時も、豊かな時も、喜びにあっても、悲しみにあっても、命のある限りあなたを愛し、この誓いの言葉を守ってあなた共にあることを約束します」


私は誓いの言葉を言いながらライオットのことを本当に愛していると実感した。


帝国一裕福な家に生まれ、奇跡の美少女とも呼ばれた美貌を持った私に手に入らないものはなかった。

小さい頃に皇宮でライオットを見た時に、私のために神がつくった存在だと一目惚れしたのは事実だ。


赤い髪に黄金の瞳を持った彼は、金髪に赤い瞳を持った私の横に置けば私の美貌が引き立つと思った。

私はいつだって自分が一番輝いていたいと思っていた。


帝国の皇后になろうと、皇帝ではなく私が世界の主役だと考えていた。

それなのに、いつからか私はライオットに尽くすことに喜びを見出していた。


「エレナ、何を考えてるの?」

ライオットがとろけるような顔を私に向けてくる。

自分より大事と思える人を私はやっと見つけたのだ。


「どうして、あなたの為に尽くしたいと思い始めたのか、こんなにもあなたへの愛を深めているのは何故なのかを考えていますわ」

私の言葉にてっきりうっとりした顔をしてくると思ったのに、ライオットは顔面蒼白になった。

彼はいつも私に対して怯えているようなところがある。


「何を怯えているのですか? 帝国一の美女である私を夢中にさせる、あなたの方が非常に恐ろしい存在だと思うのですが。」

風で乱れた彼の髪を整えながら甘い言葉で囁くと、彼の顔はますます顔が青くなった。


「初夜で2人きりになったところで、俺を殺す気なのか?」

彼が私を引き寄せ耳元で囁いてきた言葉に、思わず顔を顰める。

私が殺戮を見せてしまったから、彼はこれほど怖がっているのだろうか。

彼を守りたいから、秘密を明かしたのに少し傷ついてしまう。


「あなたがいなくなったら、私が死んでしまいますわ。一体、初夜でどうやって殺すというのですか?」

私は精一杯可愛い声で言った。

彼が美人系より可愛い系が好きだと言ったから、可愛い自分を演じるよう心がけているのだ。


「腹上死とか⋯⋯」

彼が青い顔で呟いた言葉に、呆然とする。


「乙女の私にそんなに期待しないでください。ダンスもできない、剣術もできない、一体あなたはどうしてしまったのですか?」

彼は私をふしだらな女だとでも思っているのだろうか。

私だって初めてで初夜が怖いのに腹上死させろとアピールしてくる。


「卓球部だって言ったじゃないか!」

彼は何かというと卓球部を言い訳にするが、卓球部とはなんなのだろうか。


「とにかく、これからは私だけにしてくださいね。浮気も2股もダメですよ!」

私は娼婦のような夜の技術も持ち合わせていないが、彼を繋ぎ止めていたい。

そして、彼は私のような絶世の美女を隣に置きながら、レノア・コットンのような他の女に目移りする浮気者だ。


「それは、俺のセリフだよ。あと、世界征服も無しの方向で考えてくれ!」

世界征服をしたいと思っていた時は確かにあった。

しかし、今は目の前のライオットを征服したいと思っている。


「あなたが私を愛で満たしてくれたら、世界に興味は無くなるかもしれませんわ」

ライオットと私はお互い囁き合いながら、笑い合った。

(本当に何を考えているのか分からない男。でも、愛しているわ)


「では、誓いの口づけを」

神父が私たちが戯れあっているので、見計らっていってきた。

暗殺ギルドの長でもある私はいつだって神経を尖らせていた。


そんな私が、こんなにも周りが見えなくなるほど夢中にしてくれる彼に出会えたことが嬉しい。


ライオットは私のベールをあげると、そっと口づけをしてきた。


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