『彼は、ママは家族の元に帰ると言ったらメイメイは家族じゃないの?と泣いて、
『先生…仕方ないですよ。どちらにしろ…。』
『そうだけど…。』
少し泣き声に近くなったので
『わかりました。今日はもう寝てください。明日は俺も付き添いますから。』
『雪久、来ないつもりだったのか?』
『え?いや…そうではないですが。』
『僕は一人でなんてごめんだよ!』
ガチャンと電話が切れて雪久は受話器を持ったまま苦笑する。
とにかく明日は無事に全てが終わるようにしたい。そして新しい明日が迎えられるように。受話器を置き、背伸びをすると自室に戻り床に入った。
翌日の朝は晴れた日だった。比較的暗めのスーツを選んで着替えて車に乗り込むと
『おはようございます、煉陽明さん。』
小鹿が車を降りると煉陽明は軽く会釈する。
『おはようございます。今日はよろしくお願いします。』
『ええ、お一人ですね?』
『メイメイが来たがりましたが…シャオにお願いしてきました。』
『また泣いて?』
煉陽明はフフと笑う。
『ええ、まだ小さいですから。遺骨があればママが帰ってくると思っているんです。お空に行ったと言ってもわからずで。でも今日は我慢してくれました。』
『うん?』
『フフ、今日はパパとママがおでかけする日だと言ったんです。あの子は了解してくれました。笑顔で送り出してくれました。』
小鹿は苦笑すると頷いた。
『そうか。では行こう…今日は約束どおりに頼みます。』
『ええ、分かっています。無事に帰してあげたいだけなので。』