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それでも私は全人類を愛している。
それでも私は全人類を愛している。
森崎こはん
文芸・その他雑文・エッセイ
2025年06月26日
公開日
4,627字
連載中
二人称視点で語られる、蝶よ花よと檻に入れられ育てられた女の話。 どこからが嘘でどこからが本当なのか。確かな記憶なんてどこにもない。『あなた』は最後まで聞くことができるだろうか? 語っている『私』は『あなた』かもしれない。

第1話 はじめまして。

 あら、いらっしゃい。どうぞお掛けになって。見ないうちにすっかりと立派になって……。最後にお会いしたのはいつだったかしら?


 あら?今日、初めてお会いしたのでしたっけ?それはそれは申し訳ございませんわ。では、改めまして。



 はじめまして。ようこそ。蝶よ花よと檻に入れられ育てられた少女のお話を聞きにいらしたのですね。


 まずは、わたくしの自己紹介から致しましょうか?紹介する程の自己や自我なんてございませんが……



 名前は岡崎友紀と申します。本名ですよ?ええ、ええ、言いたいことは分かります。それは同姓同名の別の方です。


 ん?聞いていた名前と違う?気の所為ですよ。私もどれが本名か分からなくなってしまったので。



 年齢?忘れました。レディに年齢を直接尋ねるのは失礼とどなたかおっしゃっていませんでしたか?


 あ、でも私、レディではないかもしれませんね。お下品なところもあるので。ええと、年齢……二十五歳ということにしておいてで宜しいでしょうか?はい。



 身長と体重?そんな事をお聞きになってどうされるのでしょうか?見て分かる通り、日本の女子小学六年生の平均身長と体重ですよ。それにしては貫禄がある?それは……どうも。



 好きな食べ物ですか?好きな食べ物を答えたら、持ってきてくださるのですか?違いますでしょう。なら、答えを作るだけ無駄です。ご自身で想像なさってください。ああ、でも乳製品と果物は食べられません。アレルギーがあるので。それ以外は別になんとも。



 そろそろ本題に入ってもよろしいでしょうか?人間の性格なんて地層のようなものでございます。それまでの行動の積み重ねなのですから、今、私の性格を問われるよりは、私の過去の積み重ねを聞く方が早いかと存じます。


では。

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