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第10話 「平和な世界」

 長きに渡る戦いに終止符が打たれてから、数週間後……。


 城下では華やかな結婚式が行われようとしていた。

 すっかり平和になった城塞都市からは物々しさがなくなり、人々の顔は笑顔で溢れている。


 悪役令嬢という汚名を着せられ、冤罪をかけられた挙句、追放されてしまった公爵令嬢。

 マキナ・ブルートは魔族との戦いに幕を下ろした功績により、その全てが偽りの聖女によって陥れられたことが証明され、無実となり帰還した。

 救国の聖女マキナの温情により、偽りの聖女アンジェリカには相応の懲罰を与えることで死刑を免れた。


 ***


 平和となったルンセント王国は幸福に満ち溢れていた。

 失った生命が多く、全ての者が笑顔になることは難しい。

 それでも今日この日だけは、誰もが心から微笑んだ。

 教会で式を挙げた二人は互いに手を繋ぎ、祝福してくれる民衆たちへと手を振った。


「とても綺麗です、マキナ様」

「恥ずかしいですわ。あなたの口からそんな甘い言葉が聞けるなんて、騎士団長としてしか知らなかった頃には想像もつきませんでしたわ」

「あの頃は生真面目で通ってましたから」

「あら、それじゃあ今は生真面目じゃなくなったんですの?」

「今では一人の女性を愛する、ただの甘やかし過ぎな男ですよ」


 互いに微笑み、からかい合う。

 人々から祝福されながら、二人はこれまで別々に歩んで来た道を、これからは共に歩んでいく。 


 祝福する参列者の中には、国王命令により再教育を受けることとなったリカルド王子の姿があった。

 そしてその隣には、ちゃっかり王子の正式な婚約者となったアンジェリカも、ほんの少しふくらんだお腹を大切そうに撫でながら、周りの民衆と同じように二人を心から祝福していた。

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