私はこれから一人の女性の人生を残そうと思っている。
彼女の名前は『クラリッサ・フォン・アルゼンティア』。
アルゼンティア伯爵家の令嬢であり、稀代の『悪逆令嬢』と呼ばれた女性。
その罪状は、国家反逆罪、国家転覆罪、国家騒乱罪、王家不敬罪、王家侮辱罪などなど。
そして、彼女の人生は断頭台の上で幕を閉じることになった。
その不名誉な悪名と共に永遠に語り継がれることであろう。
しかし、彼女は後世に伝わるような『悪女』では決してない。
決して語られない物語がある。
彼女はどんな裏切りに合いながらも前を歩き続けた。
彼女はどんな侮辱に合いながらも後ろを振り向かなかった。
目指した未来は唯々より良い治世。
この国の将来を憂いた一人の貴族。
愛する人と共に生きられなかった女性。
そんな彼女の知られざる半生を語ろう。
私の名前は『マリア・ベル』。
私は彼女の付き添いメイドだった。