「改めて、トルトーネに出発!」
あの後、日が暮れたのでカルボナーラに戻って一泊した。なのでまた昨日と同じ町の出口から出発する。今の俺はカメを見たら何を置いてもぶっ飛ばす決意に満ちている。
「ところで、道化師になって新しいスキルは覚えたのかぁ?」
道を歩きつつ、ゲンザブロウが聞いてくるので冒険者カードを改めて見てみた。
『空中ブランコ』
それピエロの仕事だっけ? ていうか使う場面が思い浮かばないんだけど?
「おお、かなり高度なスキルを覚えたね!」
どうせ金儲けしか考えてないユウホウが喜んだ。どこで披露する気だ?
「役立つようには思えんな」
うるせーハゲ! 俺もそう思う!
「それで、最初の目的地はどこなのだ?」
アイちゃんがライアンにたずねる。トルトーネには潜入という形で行くわけだから、やはり見つかりにくい隠れ里とかを経由していくのかな?
「うむ、山あいにあるクルナ村という場所を目指す」
来るな村?
「知ってる、病気に効く秘湯があることで有名な村だね」
秘湯……つまり温泉!
温泉といえば!
男のロマン!!
「またソウタがトリップしてるよ~」
なにをおっしゃる狐さん、俺にはやましい思いなど何もないぞ、うん。大事件を解決して疲れてるだろうし、温泉にゆっくり使って疲れを癒すというのも悪くないんじゃないかとね?
「……一緒に入る?」
悪戯っぽい顔をして耳元でささやくティラミスちゃん。
「ふ、ふおおおおお!!」
「ああ、テンション上がり過ぎて壊れちゃった。ダメだよあんまりからかっちゃ」
「えへへ、反応が面白くって」
「本当に仲が良いなお主等。少し羨ましいぞ」
「そんなこと言うとまたソウタが昇天するぞぉ」
……
…………
………………あれ? 俺は何をしてたんだっけ。
「お、目が覚めたな」
気が付くと、ライアンが俺の顔をのぞき込んでいた。近い、近いよハゲ!
「うう~ん、何してたんだっけ?」
「クルナ村に行くぞぉ」
ああ、そうだった。温泉が俺達を待ってるんだ!
「またテンションが上がってるね、少し冷やしておこう」
ユウホウが何やら呪文を唱える。え、魔法使うの?
『クールダウン』
おお~、その名の通り気分が落ち着いてきた気がする。頭がスッキリしたぞ!
「便利な魔法だなぁ。さすが大魔導士」
気分も落ち着いた俺達はカルボナーラから東にある国境付近の山を目指した。
「この辺には変わったモンスターが出るから気を付けろ」
わざわざライアンが警告するということは、その変わったモンスターに遭遇するフラグですねわかります。
まあ、戦力的にはそうそう危ない目にはあわないだろうけど。
「あれかぁ?」
いきなり発見するコソ泥……じゃなかった義賊。その指差す先には!
「何あれ?」
あまりにも風変わり過ぎて何なのか分からない物体が空中に浮いていた。
なんて表現したらいいのかな?
ピカソ?
「キュビズム(※色々な角度から見た形を一つの画面に収める絵画の技法)ってやつだね。うん、変わってるね」
知っているのかユウホウ!
変なモンスターは、何となく威嚇をしているような気がした。