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第13話


 レイルは街に出ると、取引相手と待ち合わせをしたカフェに入った。

 木製のドアノブに手をかけると、からからと軽やかなベルの音が響く。


 レイルは扉の前で立ち、待ち合わせた取引相手を探した。

 まだ来ていないようだ。


 もう一度店内を見る。どこに座ろう。

 カウンターには、サイフォンが四台も置いてある。コーヒーに力を入れている店のようだ。


 今度オリヴィアを連れてきてやろうなんて思ったとき、脳裏にふとコーヒーを飲んできゅっとした顔をした彼女を思い出す。


 頬が緩んだ。オリヴィアにはシュガーとミルクは必須なのである。

 ちなみに、紅茶もストレートよりミルクティーをよく好んで飲んでいる。


 ついさっきまで一緒にいたというのに、もう会いたいと思ってしまう。レイルは大概だな、と苦笑を漏らした。


「いらっしゃいませ、お客様」


 佇んでいると、ウエイターに声をかけられた。顔を上げて目を合わせると、ハッと驚いた顔をした。


「これはこれは、レイル王子」

 ウエイターはレイルに気付くと、うやうやしく頭を下げた。


「待ち合わせなんです。テーブル席にいいですか」

「もちろんでございます。二階の個室もご用意できますが」

「いえ、ここで大丈夫ですよ」


 レイルは通された奥の席に腰を下ろすと、店内を見渡した。 


 少し古ぼけた木のテーブルや椅子には、数組のカップルや家族連れが座っていた。

 落ち着いた雰囲気の古風なカフェだ。


 からからと再びベルが鳴る。レイルは扉に顔を向けた。


 そこに立っていたのは、ラファエルの新しい婚約者となった、この乙女ゲームのヒロイン、ソフィア・ハミルトンだった。



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