めがねあざらし
BL現代BL
2025年06月30日
公開日
1万字
連載中
帝都・大和――
春の香が漂う男遊宴楼〈春ノ屋〉には、“惚れ薬の白狐”と呼ばれる男妓がいた。
名は千朶(ちしだ)。
誰よりも美しく、誰の手にも堕ちぬ“檻の中の狐”は、舞い、詩を謳い、ただ一瞥で男たちを狂わせる。
そんな千朶のもとに現れたのは、帝国陸軍の少佐・葦原瑛士(あしはら・えいじ)。
感情を殺し、命令に忠実な“軍の獣”。
誰の色香にもなびかぬその男が、千朶の扇の一振りすら無視して立ち去った夜――
千朶のなかで、静かに“熱”が芽吹き始める。
惹かれてはいけない。
手を伸ばせば、すべてが壊れる。
けれど、なぜか惹かれてしまう――
血と因縁に絡め取られた二人の出会いは、やがて帝都の闇を暴き、運命を暴き、
千朶自身の“真実”を炙り出してゆく。
これは、檻に咲いた白狐が、
たった一人の男のために外へ踏み出す物語。
大正風浪漫BL。