吉田は美月を指さして叫んだ。「とぼけないで!リークしたのはあんたでしょ!私が星野夏のジュエリーデザインのチャンスを掴んだからって、わざと仕返ししたのね!」
考えれば考えるほど、吉田の中で確信が強くなった。――さっき、美月がパソコンの画面を拡大してデザイン画を見ていた様子、どう見てもパクリに気づいていたはずだ。あのブランドなんてほとんど誰も知らない。デザイナー仲間の美月以外、誰が気にするだろう?
「美月!自分の行動がどんな影響を及ぼすかわかってる?私に仕返しするだけじゃなく、カラフルジュエリースタジオまで巻き込むつもり?」
オフィスの視線が一斉に美月に集まり、吉田と仲の良い数人はひそひそと話し出し、探るような目を向けてきた。
美月は呆れたように言い返した。「今まで気づかなかったけど、あなたって本当に話をすり替えるのが得意なのね?私があなたの手を取って、他人のデザインをパクれって強制した?それとも、私が無理やりあなたに盗作したジュエリーを提出させたの?」
吉田はすぐに悲しそうな顔を作り、目に涙を浮かべた。「パクリなんて、仕方なかったのよ!星野夏がデザインに何度もダメ出しして、どうしても納得してもらえなかった。カラフルジュエリースタジオだって高額の違約金を払う羽目になるところだったの!」
彼女が目をこすると、そばの後輩がすぐにティッシュを渡した。「奈江さんも本当に頑張ってたよ。星野夏に十回以上も修正させられて、誰だって限界だよ。」
「限界だからってパクっていいの?」美月は眉をひそめた。「インスピレーションを得るのはいいけど、他人のデザインをそのままコピーするなんて、真珠の細かい部分まで変えずに……本当に考えなしなの?それとも、周りのみんなも自分と同じだと思ってる?」
「な、なによ!」吉田は顔を真っ赤にして話を逸らした。「私が選んだブランドなんて、公式サイトのアクセス数も一桁よ。あんたがリークしなきゃ、誰にも気づかれなかったはず!なぜネットに投稿したのか、説明しなさい!」
「私じゃないよ。」美月は落ち着いて答えた。「あなたの盗作に気づいたのもついさっきだし、そんな暇なかった。」
「ありえない!絶対あんたよ!」吉田はしつこく食い下がった。「さっきパソコンをじっと見てたし、荷造りの日に気づいてたのかも。十分リークする時間はあったはず!」
吉田の無茶苦茶な言い分に、美月はもう呆れて相手にしなかった。「いつ気づいたかなんて関係ない。盗作したのは事実でしょ。ごまかさないで!」
「それに、星野夏が登場したらネットの注目を集めるのは当然。ネットには目ざとい人がたくさんいるし、マイナーブランドに気づく人がいてもおかしくない。」
「そんなはずない!」吉田は何度も首を振った。「普通の人があのブランドを知ってるわけない!」
突然、吉田は美月のデスクに駆け寄り、机の上のスマホをつかみ取った。「そのサブアカ、絶対あんたでしょ!アカウントのログイン履歴を調べれば分かる!」
美月はまさか公然とスマホを奪われると思わず、慌てて取り返そうとした。「返して!」
「調べないと気が済まない!」
何度か取り返そうとしたが無理だと悟り、美月は手を止めた。「バカなの?スマホにはロックがかかってるし、奪っても意味ない。もし壊したら、三倍払ってもらうから。」
吉田はスマホを握りしめて、いらだちを隠せなかった。「やましいことがあるから見せられないんでしょ!違うって言うなら、みんなにスマホを見せなさいよ!」
美月は冷たく笑った。「なんで私が自分で証明しなきゃいけないの?やってないものはやっていない。リークしたって言うなら、まず証拠を出しなさい。」
吉田は言い返せず、指先に力を込めてスマホを握った。
「違うって言うなら、証拠を見せなさい!」
「そもそも私じゃない。」美月は吉田が気を取られた隙に、さっとスマホを取り返した。「疑う側が証拠を出すべきでしょ。証拠もないのに私に罪をなすりつけないで。」
スマホを取られた吉田は、ますます美月が黒だと信じ込み、今度は嵐に訴えかけた。「嵐さん、見たでしょ?彼女が私を陥れるためにリークしたんです!」
美月も嵐に向き直った。「もう一度言うけど、私じゃない。もし納得できないなら、今すぐ警察を呼んで調べてもらいましょう。」
そう言いながら本当にスマホを手にして、通報しようとした。
嵐が大きな声で遮った。「もうやめなさい!そもそも最初に悪いのは吉田でしょ!誰がリークしたにしろ、盗作した事実は消えないんだから!」
「私……」吉田はまた涙をにじませた。「私だってカラフルジュエリースタジオのためを思って……」
嵐は机を叩いて怒った。「ネット見なさいよ!カラフルジュエリースタジオがどれだけ叩かれてるか分かる?本当は今回のチャンスを使って、セカンドラインを売り出したかったのに、全部台無しよ!」
「星野夏はレッドカーペットで映える、唯一無二のデザインが欲しかっただけなのに、あなたは既製品のコピーを出して……今さらどうするつもり?」
「嵐さん……私、本当にどうしようもなくて……」
その時、嵐が床に投げたスマホが突然鳴り出した。画面はひび割れて蜘蛛の巣状になっており、着信は「星野夏マネージャー」と表示されていた。
嵐は慌ててスマホを拾い上げて応答し、受話器からは怒号が飛び込んできた。嵐は何度も謝りながら、顔色がみるみる青ざめていった。
電話を切ると、嵐は重い声で言った。「星野夏のマネージャーから。彼女はいくつも広告契約があるのに、イメージダウンしたから解約されそうで、違約金を請求されるって。」
「今回の件は私たちの責任だから、その補償を求めてるって。」
「えっ?」吉田は泣き止み、足元が崩れ落ちそうになった。「いくら請求されるの?」
嵐は疲れ切った顔で答えた。「まだ金額は言われてない。ただ、電話は怒鳴られただけ。」
「あなたが偽物を着けてたなんてレッテルを貼ったせいで、仕事もドラマも吹っ飛ぶかもしれない。違約金を払えって言われても当然。契約書にも書いてあったでしょ。」
吉田は唾を飲み込み、震える声で聞いた。「そのお金……私一人で払うんじゃないよね?」
嵐は黙ったままだ。
吉田は突然、取り乱したように叫び出した。「私だけのせいじゃない!美月がリークしなければ、こんなことにはならなかった!払うなら彼女も一緒に払うべきよ!」
美月は冷たく言い放った。「私には関係ないから、巻き込まないで。」
「全部あんたのせいよ!あんたさえいなければ、こんなことには!」
吉田が取り乱して叫ぶ中、誰かが声を上げた。「見て!早乙女薇薇がSNSを更新してる!しかも美月にだけメンションしてる!」