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第3話 思いがけない助けが現れた


水野玲子はさまざまな修羅場をくぐり抜けてきたが、まさか自分が客の相手をさせられる羽目になるとは思ってもみなかった。


エレベーターが途中階で「ピン」と音を立てて止まる。


オーダーメイドのシャツにジーンズ、両手をポケットに突っ込んだ若い男が、気だるげな様子で入ってきた。


エレベーター内の状況を見て、彼は眉をぴくりと上げただけだった。


その時、玲子は激しく嘔吐しだし、うつろな目で制御できず、その若い男にしがみつく。


「オェ――――」と、汚物が高価なシャツにぶちまけられた。


ツンとした酒の臭いが充満する。男は反射的に玲子を強く突き放した。


「クソッ!」と小さく悪態をつき、殺意すら覚えたが、玲子はすでに床に崩れ落ちていた。仕方なく、彼は隣で呆然としている山本に目を向ける。


「お前の女か?」


九条景は見た目は凶悪そうではないが、チビで太った山本茂より頭ひとつ分は背が高く、全身から近寄りがたい気配を放っていた。


山本茂は床に倒れた女を軽蔑するように一瞥し、せっかくの獲物を逃したことに未練たっぷりだ。


「このシャツ、八十万だ。弁償しろ。」九条景は鼻をつまみながら、汚れたシャツを脱いで床に投げ捨て、引き締まった上半身を露わにした。


「男娼ごときが八十万だと?ふざけんな!」山本茂は九条景を上から下まで値踏みし、軽蔑をあらわにする。


男娼?


九条家の次男として、九条景は今までこんな侮辱を受けたことがない。即座に足を振り上げ、山本茂の脂肪たっぷりの腰を蹴り飛ばした!


「ぐあっ!」山本茂の巨体は制御できずエレベーターの枠に激突し、痛みに悲鳴を上げ、怒りに燃えて九条景に殴りかかろうとした。


「クズが。」九条景は鼻で笑い、拳を握りしめて関節を鳴らし、見事な背負い投げを決める。


「ドサッ!」と重い音と豚が殺されるような悲鳴が廊下に響く。


山本茂はみっともなく起き上がり、尻尾を巻いて逃げ去った。


九条景は舌打ちし、床に転がる「厄介者」を見下ろす。

「もう演技はいいぞ。あいつは行った。」


玲子は薄く目を開け、人が去ったのを確認して、やっとの思いで立ち上がった。


「ごめんなさい……シャツのお金は必ず賠償ます。」彼女の声はかすれていた。


「いっそ、部屋に行ってこの件はチャラにするか?」

九条景は口端を吊り上げ、尖った犬歯を見せて笑った。


玲子の頭の中で警報が鳴り響き、思わず数歩下がる。


「はっ、思ったより肝が小さいな?俺と寝たがる女は山ほどいる、お前なんか順番待ちにも入れねえよ。安心しろ」

九条景は鼻で笑った。


「では、口座番号を教えてください。お振込みします。」

玲子は少し落ち着きを取り戻した。


そのとき、再びエレベーターの扉が開いた。神崎航だ!


彼がエレベーターの中を見たとたん、顔色が一瞬で真っ黒になる!


「少しも我慢できなかったのか?」

神崎は冷笑しながら、乱れた服の玲子と上半身裸の九条景に鋭い視線を向ける。


玲子は彼に傷つけられることにはもう麻痺していた。そのまま調子を合わせて言う。

「そうよ、山本社長一人じゃ足りなかったから。」


神崎は目を細め、突然玲子の手首をつかみ、強く壁に押し付ける。

「誰かに触られたのか?」低く危険な声で。


玲子は目に涙を浮かべて微笑み、顔を背ける。

「これこそ、あなたが望んでいたことでしょう?」


手首が急に痛くなるほど強く握られる。神崎の怒りは唐突で、理由もわからない。


彼が何かを言いかけたその時、傍観していた九条が意味ありげに笑い出す。


突然の拍手。


九条景は手を叩きながら近寄り、面白そうな目で言った。

「さすが持てる神崎くん、どこにでも女を作るんだな。」


神崎航は振り返り、ようやく相手の顔に気付く。

「九条景?」


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