彼女は思い切ってまた横になり、掛け布団を引き寄せて頭からかぶった。
寝返りを打ったとき、体の傷口に触れてしまった。
「……っ」 彼女は思わず、息を呑んで小さく呻いた。
神崎航はその声を聞き、眉をひそめて近づいてきた。
「起きろ。傷口を圧迫するな」 珍しく彼がこれほど多くを語るのは初めてで、気遣いを示すのも初めてだった。
その変化は、玲子に安心感を与えるどころか、心をますます重くした。
彼女は何も言わず、そのままの姿勢でコウの手から掛け布団を引き戻し、ぎゅっと目を閉じて眠ったふりをした。
コウは彼女の横顔を見つめ、ふいに身をかがめて、傷に触れないように注意しながら、彼女をそっと抱き上げた。
突然体が宙に浮き、玲子は思わず目を見開いた。
状況を把握し、また無理矢理されるのかと一瞬思った。
彼女はとっさに手を上げ、彼の胸を叩いた。
女の力とはいえ、心のあたりに当たるとやはり鈍い痛みが走る。
コウは呻き声を漏らしたが、手を離さず、すぐに彼女をベッドに下ろした。
ただ、彼女の寝る姿勢を整えてやっただけだった。
「黙っているなら、俺が手を出すしかないだろ」航の口調は淡々としていて、まるで当然のようだった。
玲子は感謝することもなく、彼の言動にまったく無関心だった。
最初から最後まで、彼女は視線さえ与えず、さっきの一瞥が例外だった。
それはほとんどコウ一人の独り芝居のようだった。
以前なら、彼はとっくにドアを乱暴に閉めて出て行っただろう。
だが今は、彼女に反論してほしい、罵ってほしいと、強く願っていた。
この止水のような沈黙、長い無視こそが、本当に不安にさせるものだった。
病室のドアが再び静かに閉められた。
玲子はそのままの姿勢で、布団を頭からかぶり、顔全体が暗闇に包まれた。
知らず知らずのうちにまたうたた寝し、目を覚ますと窓の外はもう暗くなっていた。
白熱灯が病室を明るく照らしていた。
九条景が、ぎっしり詰まったお菓子や果物の大きな袋をいくつも提げて入ってきた。まるでスーパーを丸ごと運び込んできたかのようだった。
何日か休養したおかげで、玲子の気分も少しは良くなった。
「お金があっても、そんな使い方しなくていいのに」
景はかなり疲れた様子で、荷物を置き、服の端で扇ぎ始めた。
「謝るべきなのは俺だよ。こんなの大したことじゃない」 彼の顔には罪悪感が浮かんでいた。「何か望みがあれば何でも言ってくれ。必ず叶えるから」
「君が俺と乗馬クラブに行ったからこんなことになったんだ。あそこのスタッフたちはもうしっかり叱っておいたし、白石のことも……」
「もういいって」
彼がくどくどと話すのを、玲子は頭が痛くなって遮った。
ちょうどお腹が空いて、彼女は無造作にクッキーの袋を二つつかんで気ままに食べ始めた。
「もう怪我しちゃったんだし、辛い思いもしたし、今さら何を言っても仕方ないじゃない」彼女は本当は、もう終わったことだと言いたかっただけだ。
だが景は単純で、坊ちゃんらしい負い目はますます深まった。
「ちゃんと償わせてくれないと、俺の気がすまないんだ」彼は異常なほどに固執していた。
ちょっと責任感あるじゃん……玲子は眉を上げ、彼への印象が少し良くなった。
「ほら、私こんなに元気で、食べてるし喋ってるし、すぐにでも飛び跳ねられるよ」彼女はふた声ほど舌打ちしながら、景の肩をポンと叩き、まるで何でもない人のように逆に彼を慰めた。
「誰かお見舞いに来てくれた?」景はふうと息を漏らし、テーブルの上のすっかり冷めた朝食に目をやって、ついでに尋ねた。