「まずは魔力回復薬を九十九個。聖水を九十九個。傷薬を九十九個。後払いで頼む」
私たちは全財産を配信機材に注ぎ込んだ影響でお金が無かった。なので、後払いである。
◇コメント
『後払いって絶対返す気ないやつじゃん』
『ていうか、魔王討伐時にたくさんお金もらってたよなコイツら?』
『出し渋りなのか、ただ単に金を浪費しすぎてないのか』
すると店員さんが頭を掻きむしりながらこんなことを言い始める。
「お客様、これ以上の後払いは出来かねます」
そんな困ったような声でそう言う店員さんに、鈴木のアニキはこう答えた。
「お客様じゃなくて鈴木なんですけど!」
◇コメント
『ノルマ達成』
『実家のような安心感』
店員さんは鈴木のアニキの言動に困惑しながら『魔力回復薬を九十九個。聖水を九十九個。傷薬を九十九個は後払いでいいので、今日のところは帰ってください。鈴木様』と述べた。
◇
「さ~て。準備も出来たし、ダンジョン行くか」
「その前に、視聴者さん。何か質問があれば今のうちに答えておくっすけど、大丈夫っすか?」
唐突に視聴者さんに向けて問いを投げかけてみると、いろんなコメントが流れてくる。
◇コメント
『勇者様と聖女様って結婚してるんですか?』
『どうして後払いにしたんですか? 勇者様ほどの人間ならする必要ないですよね?』
『ラーメン食べたい』
答えられないものや、配信と関係ないコメントが多数送られてきた。その中でも、私が選んだのはこれだ。
◇コメント
『勇者様と聖女様の装備品って魔王討伐の時と同じものなんですか?』
「そうなんっす。鈴木のアニキは選ばれし勇者の手袋。ドラゴンの鎧。私は聖女の杖って感じで、魔王討伐した時の装備をそのまま使ってるんす」
◇コメント
『勇者様……鈴木さんは勇者のくせに剣とか使わないんだ』
『それ思った』
『勇者像が破竹の勢いで崩れていく……』
「鈴木のアニキはステゴロタイプで剣は全く使わないっすね。まあ、見てたら画面越しでも強さがわかるっすよ」
「シャンテル。視聴者の質問コーナー終わった? 終わったならさっさと行こうぜ。日が暮れてしまう」
鈴木のアニキが妙にソワソワしながらダンジョン前へ突っ立っている。これは、待たせすぎてしまっただろうか?
◇
ダンジョンに入ってすぐ、私たちはモンスター達に囲まれていた。
「鈴木のアニキ! スライムがそっち行ったっす!」
「はい、チョップ! シャンテル、後ろに大蛇の化け物がいる」
私は回復魔法が専門。防御魔法こそあれど攻撃魔法は一切覚えていない。使えた所で私の魔力では何十発も撃てない。
だからここは……
「えい!」ボコッ!
杖で大蛇の急所をひたすら殴打するしかない。
大蛇を気絶させてる頃には鈴木のアニキが大半のモンスターを仕留めてくれていた。
◇コメント
『コイツら、火力不足じゃね?』