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第5話 強敵が現れたっす!

「ダンジョンなのに雪が降ってるっす。摩訶不思議っすね……」


 ダンジョンは雪ゾーンに入っていた。困ったことが一つある。私達は防寒具を用意してない。そして私は寒いのが苦手だ。


「寒いのかシャンテル? ここにサイードが居たら魔法でなんとかしてくれるだろうけど、居ないし。仕方ない撤退するか」


「そ、そうっすね……配信の視聴者数も数千人集まってるし、お金も十分稼げたっすよね。潮時っすね」


 鈴木のアニキは魔法使えないし、私も炎魔法は専門外。これ以上進んだら帰れなくなると判断した私達は、来た道を戻っていくのだった。



◇コメント


『おいまだ二階層目だぞ!? 帰るのか!?』


『いやまあ、勇者のステゴロでギリギリ持ってるパーティだし、回復役は居ても役に立たないし』


『↑回復術者軽視論者だ』


『まあ実際、勇者パーティは優秀な魔法使いが抜けた今、火力不足が否めないよ』



        ◇



「オデの眠りを妨げるやつは誰ダモ~!」


 鈴木のアニキじゃない声が聞こえてきたので、咄嗟に振り返ってみると、5メートル以上はあるであろう雪男が佇んでいた。


 大まかだけど私は相手の魔力を測れる魔法が使える。それで計測してみたが……


「魔王最高幹部相当の魔力を保有してるっす、あの雪男! ヤバいっすよ! サイードのアニキが居ない今、勝てないかもしれないっす!」


「火力の大半はサイードに任せてたからなぁ。よし、撤退だ!」


「えっ、ちょ!?」


 瞬間、鈴木のアニキは私をお姫様抱っこしたあと、雪男から背を向けて逃げ出した。



◇コメント


『てぇてぇ~』


『てぇてぇ~』


『危機的状況なのにみんな心配してないの草生える』


『信じられるか? コイツらくっついてないんだぜ?』



        ◇



 雪男が猛烈なスピードで追いかけてくる。雪男が振りかぶって殴ってきた。私は防御魔法を展開して攻撃を阻止。その隙に、鈴木のアニキが走る。しかし、目の前は行き止まりになっていた。


「お、降ろしてほしいっす……」


 久々の地面に降り立ったあと、片手に持っていたスマホ棒を手放し、本気で雪男と対峙することにした。


「鈴木のアニキ、配信を見やすくするためにスマホの固定頼むっす! 私はその間時間を稼ぐっすから!」


「了解!」



◇コメント


『命大事にって場面じゃない今?』


『配信者魂スゲー』


『おいなんか勇者様雪玉作ってるぞ!?』



        ◇



 対物理と通常の防御魔法。さらに一定期間回復する魔法を自身にかけた。


 雪男が攻勢を強めていく。次第に防御魔法がひび割れていき、そして粉々に破られてしまった。


 雪男の攻撃が、防御魔法が無い状態でくる。私は思わず目をつぶってしまった。


「ダモ~!?」


 攻撃が来なかった。私はゆっくりと瞼を開いてみると、鈴木のアニキが雪玉を雪男へ投げつけていた。


 雪男は不敵に笑っている。すると雪男が雪玉を鈴木のアニキに投げつけてきた。


「うわっ、冷たっ!」


 ずるいと思った私も雪男に雪玉を投げてみた。雪男から笑みが溢れている。


 このあと雪合戦になった。



◇コメント


『さっきまで殺伐としてたのに、みんな楽しそうだ』


『ええっ……』


『結果的には勇者様のファインプレーだけど、どうして雪玉投げつけようと思ったのか』



        ◇



 少しの間遊び続けた雪男は満足そうにその場から去っていった。


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