調査人によると、渋谷の道路が陥没して、そこがダンジョンになったらしい。
とある最新機械を使って地下三階だとまでは突き止めたが、何がいるかまでは分からないと。
「鈴木のアニキ。一応このダンジョン、政府から機密にしてくれと言われてるんすけど、本当にやるんすか?」
「大丈夫大丈夫、『ああ、君たちは最近ダンジョン配信をやっているんだったね。勝手にするがいい』って首相が言ってたし」
鈴木のアニキは首相の声真似をしながら、変顔を披露している。
「えへへ……何すかその顔、首相にそっくりっすねぇ! まあ首相がOK出してるんすから、後で文句言われる筋合い無いっすかね。始めるっすよ~!」
配信機材、OK。スマホ棒もOK。配信開始まで五、四、三、ニ、一。
「どうもっす! 勇者チャンネルの聖女、シャンテルっす!」
配信を始めて数分。早速、コメントが書き込まれていく。
◇コメント
『おはようございます聖女様』
『どうもっす! 聖女様!』
『こんどは逃げないでくださいね?』
『これです、これです。聖女様なのに、誰に対してもフランクに接してくれる聖女様に私は惚れたのだ』
数千人が登録者になってくれたおかげか、コメント欄の勢いが凄い。
「すっかり有名人になっちゃいましたっすね鈴木のアニキ!」
「そうだなぁ。でも、魔王倒した割にはあんまり注目されてないように見えるけど」
「まだ、みんな気づいてないだけっす。いずれは登録者百万人のインフルエンサーになれるぐらいには、私たち有名人なんすから!」
「登録者百万人になったら、どれだけお金もらえるんだろうな?」
「魔王討伐の報酬が一億円だったので、おそらくそれの半分ぐらいは貰えるんじゃないっすか?」
◇コメント
『魔王討伐の報酬やっす!?』
『魔王って日本を足がかりに全世界を支配しようとした極悪人だよね?』
『日本だけで数十万人が魔王軍に虐殺されて、世界中が混乱の渦になった際に、勇者様達が魔王を倒してくれて、あれからモンスターの活動も減って世界は平和になっていったのに』
『↑博識ニキ解説ありがとう』
「とりあえず、ダンジョン潜る前に腹ごしらえしようか。腹が減っては戦はできぬというしね」
私は一応、財布の中身を確認して、何も無いことを確認した。
「そうっすね。けどお金が無いっす」
◇コメント
『マウンテンゴリラ¥3000これで食事に行ってください』
『ナイスバ』
『ナイスバ』
「あっ、鈴木のアニキ! 初スパチャが来たっす! マウンテンゴリラさんありがとうございまっす!」
「やったな! これで食事にありつけるぞ! 一日ぶりの食事だ!」
このあと、鈴木のアニキと一緒にひとしきりバンザーイをした。
◇コメント
『ブリティッシュ田村¥200腹の足しにでもしてください』
『サラリーマン佐藤¥200聖女様がこんな貧困生活を送ってるなんて、微力ながらお金を恵みます』
『勇者様と聖女様って思ったより世俗的なんだなぁ』
『俺、ニートだから金無いわ。メンゴ』