「腹ごしらえも済んだことだし、いざダンジョンへ行こう!」
「オーっす!」
◇コメント
『俺たち、これから何回勇者様の安い土下座を見せられることになるんだろうな?』
『↑鈴木だぞ』
このダンジョンは陥没型なので、東京の企業から借りたハシゴを使って降りた。
地面に着地すると、そこはダンジョンの風貌をしていた。
「十五年前、魔王が日本に現れてからダンジョンが各地に現れ始めたんだっけ?」
「そうっすね。それと同時期に魔法を扱える人達が世界中各地に現れるようにもなったんす」
十五年前、日本政府は各地に起きる異常事態を『RPGの世界やん』と思ったのだそう。勇者やら聖女等、職業を公式に制定し始めたのもこの頃だそうだ。
◇コメント
『勇者になる方法を教えてください』
ちょうどいいコメントが出たから拾っていく。
「年に一度、勇者と聖女を決める大会があって。勇者は、日本国の中で一番力強い人。聖女は国の中で一番回復魔法が得意な人が選ばれる流れなんすよね確か。だから最低でも過去十五人は勇者と聖女に任命されているっす」
まあ、そのうち三分の二は再起不能か殉職しちゃってるんすけど。
◇
しばらくの間、私達は何も起きない道を歩いていた。すると、鈴木のアニキが急に立ち止まって口を開いた。
「あっ、宝箱だ」
鈴木のアニキが発見した宝箱は、とても豪華な装飾が施されている。
「偶にあるんすよ。ダンジョンには、大金が入ってる宝箱が出現することが! 期待してもいいっすね!」
「なんて幸運なんだ。大金をゲットしたらまた怠惰な生活をしたいと思ってたんだ!」
◇コメント
『いや、ミミックだろどうみても』
『もしかしてこの人達、ダンジョン初心者だったりする?』
『あっ、案の定勇者様がミミックに喰われた』
「鈴木のアニキ~!?」
なんということだろう。
鈴木のアニキが宝箱を持ち上げた瞬間、急に宝箱から巨大な口が現れて、そのまま鈴木のアニキの上半身に齧り付いたではないか。
鈴木のアニキを助けようと、一定時間回復する魔法をアニキにかけて、私自身はミミックにひたすら杖で殴打した。
◇コメント
『こいつら本当に魔王倒したの?』
『もしかしてこのパーティー、サイードという魔法使いありきで成り立ってたんじゃね?』
しばらく殴り続けていると、鈴木のアニキがミミックの口を力づくでこじ開けようとしてることに気がついた。
そこで作戦変更。ミミックの口に杖を突っ込んで、テコの原理でこじ開けようとした。
「頑張るっすよ鈴木のアニキ! まだ、こんなところで死んでもらったら困るっす!」
杖に全体重を乗せた甲斐あってか、少しずつ口が開いていく。そして……
「グエッ!?」スポンッ
鈴木のアニキは無事に、ミミックから脱出したのだった。