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第10話 赤い人じゃなくて鈴木なんですけど!

 ミミックから無事脱出した俺は、シャンテルに礼を言った後、再びダンジョンを攻略するため歩き始めた。


「結局、お宝じゃなかったんだなぁ……」


「残念っすね……」


 それはそれとして、宝箱に期待していた俺とシャンテルは肩をがっくりと落としていた。



        ◇



「ん? なんだこの看板?」


 しばらく一本道を進むと、木でできた看板を見つけた。


「赤い人、この先危険故に立ち入り禁止って書いてるっすね」


 赤い人?


 シャンテルは青と白がベースの服を着ている。俺は、レッドドラゴンの鎧に、赤いバンダナ、赤いスカーフを巻いている。


 もしかして俺は、赤い人に該当するのだろうか?


「赤い人じゃなくて鈴木なんですけど!」


 俺は看板に向かってそう言い放った。



◇コメント


『もうええ! いつまで経っても鈴木。誰彼構わず鈴木。三度の飯よりも鈴木!』


『真面目な顔で言うことか?』


『赤い人なのは間違いないだろ』



        ◇



「アニキ~。誰がどうみてもアニキは赤い人っすよ~? 視聴者さんもそう言ってるっす」


 そうシャンテルが言うのであれば、俺は赤い人なのだろう。不服だ。俺には立派な名前、鈴木があるのに、そう呼ばれないなんて。


 だから、その場で赤いバンダナ、赤いスカーフ、赤いシューズ、赤い靴下、レッドドラゴンの鎧を外した。最後に残ったのは赤いパンツだったのでそれも脱ごうとしたら、シャンテルに杖で叩かれた。


「なっ、なななななっ!? 何考えてるっすか鈴木のアニキ!? ちょっと気になるっすけど、いやいや、なんでここで全裸になろうとしてるんすか!? 正気じゃないっすよ!?」



◇コメント


『全裸になったら、垢BANされるぞ~?』


『聖女様って勇者様の全裸、気になるんだ』


『にしても、なんで赤い人は立ち入り禁止なのだろう』



        ◇



 俺はシャンテルに小一時間みっちり叱られ、渋々装備を着た。シャンテルの顔の方がよっぽど赤いよとは思ったが、胸の内に収めておくことにした。


 そうして、再びダンジョンを攻略するために俺たちは歩き始めた。


「ダンジョンと言っても一本道だから迷わなくて済むな」


「そうっすね~」


 道中、弱いモンスターを倒しつつ、先へ進む。すると、やけにだだっ広いところに出た。


「闘技場みたいだな……?」


「むっ、気をつけてくださいっす鈴木のアニキ! あっちからモンスターがやってくるっす!」


 確かに、空気の揺れ具合から何かがやってくるのは明白だ。それも怪物が……


「魔力自体は大したこと無いっすけど……」


 なんとなくだが、魔力では推し量れない怪物がこちらに向かってきている。俺はすぐに臨戦体制に入った。


 奴は影からゆっくりと現れて、姿を見せた。

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