◇コメント
『ヤベッ、牛鬼だ!』
『牛の頭に、鬼の身体をしてる。合成獣か』
『獰猛で残忍な性格で、人を襲ったりすると言われてるアレ?』
『噂では、とある町を一日で半壊させたらしい』
牛鬼。今の私達では出来れば相手取りたくはなかった。
「モォォォォ!」
そう雄叫びを上げた後、牛鬼が鈴木のアニキめがけて突進してくる。
「させないっす!」
瞬時に反応した私は、鈴木のアニキに対物理防御魔法をかけた。しばらくの間、物理攻撃の威力を半減させる効果がある。
それでも、アニキは突進をモロに受け、壁まで吹っ飛ばされてしまった。
「アニキ~!?」
尚も標的を鈴木のアニキに絞る牛鬼。再び突進していった。
だが、アニキはタフネス。彼はすぐに立ち上がり、臨戦体制に入った。
牛鬼が振りかぶって、殴りかかる。それをアニキは皮一枚でかわし、クロスカウンターを牛鬼の顔面にかました。
アニキの鉄拳をマトモに喰らった牛鬼は、ダメージがあるのかふらついている。
◇コメント
『すげぇ、牛鬼とやり合ってるよ』
『さすがおかしい鈴木野郎でも勇者だな』
「どうして牛鬼は鈴木のアニキばかり狙いを定めてるのか。いや、まさか。それは後で考えようっす。今は加勢しないと」
私は配信しているスマホを動かないように固定した後、アニキの元へ向かった。
牛鬼と鈴木のアニキは殴り合っている。アニキは殴られる度に血反吐を吐く。それは牛鬼も同じだ。勝負は互角。
ここでサポート出来なかったら私の存在価値は無い。
「パワーブースト! スピードブースト! サステナブルヒーリング!」
アニキに筋力、脚力増強の魔法に加え、一定時間回復する魔法をかけた。これで私の魔力はすっからかんになってしまったが、きっと鈴木のアニキは決めてくれる。
「頼むっすアニキ~!」
形成逆転。鈴木のアニキが徐々にステゴロで牛鬼を追い詰めていく。
「モォォォォ!」
牛鬼がアニキめがけて拳を振ってくる。それをアニキはスルッと避けて、クロスカウンターを腹に決めた。
牛鬼はフラフラと後ろへ下がっていき、程なくして倒れた。
「……このダンジョンの中で一番強いモンスターだった」
「お疲れ様っす。鈴木のアニキ~!」
私は即座に彼の全身の傷を癒していった。流石に魔力が足りないので、初配信の時に買った魔力回復薬を飲みながら。
「シャンテルに矛先が向いてなくて助かったよ」
「それなんすけど。もしかしたら、鈴木のアニキの赤い服装に興奮してたかもっすね……牛だし」
「……えっ?」
◇コメント
『牛鬼は頭が闘牛で、闘牛は赤いのを見ると興奮するので、確かに理にかなっている』