牛鬼との決戦後、私達は一本道をひたすら歩いていた。
「……階段見えないっすね」
「困ったぞ。こんなに長いとは思ってなかった」
既に数時間は経っているだろう。進んでいくにつれて段々と道が崩れてきてるから、着実に近づいてるとは思うのだが。
「一体いつになったら地下三階に行けるっすかこれ~……」
未だ、地下一階で彷徨っている私達に暗雲が漂ってきていた。
◇
「シャンテル。ここさ。壊せるかもしれない」
あれからさらに数時間後のこと。鈴木のアニキが地面を指差してこんなことを言ってきた。
「いや確かに壊れかけっすけど、いくらなんでもアニキじゃ壊せないっすよ」
そう返すも、アニキは人の話を聞かずに地面へパンチを繰り出していた。瞬間、衝撃波が巻き起こる。
◇コメント
『ダンジョンって普通、階段で上がり下がりしない?』
『マジかよアイツ。地面を叩き壊しやがった!』
『どんな馬鹿力やねん』
そうだった。鈴木のアニキはステゴロで勇者になった人。脆い壁なら何枚でも壊せるのだ。
しかし、地面は予想以上に崩れてしまい。ガラガラと音を立てて、アニキ諸共地下へ落ちてしまった。
「ア、アニキ~!? 大丈夫っすかぁ~!?」
「大丈夫。上手く着地に成功した」
私は恐る恐るアニキが開けた穴を覗いてみると、彼はピンピンとしていた。
瞬間、アニキが驚異的な跳躍力で穴から私がいる地下一階へ舞い戻ってきた。
「これで地下二階に行けるな」
そう口を開いたあと、彼は私目掛けて両手を広げてきた。
「そ、その両手はなんすか?」
「ああ。シャンテルを抱いて二階に降りようって構えだな」
◇コメント
『イチャコラタイムきた~!』
『はよくっつけや』
『あっ、また聖女様の顔が赤くなってる』
『ていうか、勇者様の身体能力ヤバない? 一階分の高さから落ちたのに無傷なんて』
『↑地味にヤバいよな』
『↑派手定期』
こうして私達は、少々反則な気もするが地下二階に降りることができた。
「この時点で視聴者さんは数千人っすか。一万人になればそれで食っていけるっすかね?」
私はここで視聴者さんに質問を投げかけてみた。すると、たくさんのコメントが配信に書き込まれていく。
◇コメント
『最近は収益率が大分シビアで、同接一万人行ってやっと人並みの生活が一日過ごせるかなってくらいしか稼げないよ』
『数千人のままじゃ良くて数千円にしかならないからね(スパチャを除く)』
『ダンジョン配信も飽和状態だから、今の君たちだと一万人いけないよ』
「手厳しいっすね。そうかぁ、ダンジョン配信って飽和してるっすかぁ。なにか現状打破する起爆剤が必要すね。分かったっす」