「ここか……」
待ち合わせ時間に高層ビルの屋上には、ウチ以外誰もいねぇ。
目の前に広がるのは無数ビル群と光。それを見下ろしながら、ウチはチームメイトを待った。
ミサキとナギ。あのバカたちは何やってんだよ!
腕時計と睨めっこしていると、針が1分過ぎる度にウチの眉間にはシワが1本ずつ増えている気がする。
「アイツらがいないと仕事にならないだろ!」
「カレンちゃん、遅れてごめん~!」
屋上の出入り口がバタンと開いて、ナギが手を振りながら駆け寄ってくる。
遅れたのに、ノリが軽いな!
「ナギ、わりいじゃねぇよ! 1分過ぎてるだろ!」
「え~!? マジで! おれっちの時計はピッタリだよ!」
は?
てめぇの細いキツネ目じゃ秒針見えねぇのか!
あぁ、ムカつく。
その後ろから無言でもう1人現れた。
巨体のミサキ。坊主頭、無表情、声も小さい。いつも通り。
お前ら、少しは「遅れて悪い」と謝れないのか?
「ミサキ。ビル管理人に口止め
ミサキはレザージャケットの内ポケットからスマホを取り出し、口座の送金画面をウチに見せた。
口座振込完了。相手は、ビルの管理人。
「よし。ナギ、
「えっとね、アイちゃんの情報によると、あのホテルの21階にいる。今、カレンちゃん、座標情報を送信っと!」
「よし、ミサキ。あれを出せ!」
ウチが指示すると、ミサキが無言で空間を裂くようにして黒いギターケースを出す。
ケースを開けると、中にはミサキが創り出したカスタムスナイパーライフルが入っている。
パーツを丁寧に組み立てていく。肌寒い夜風の中、鉄の冷たさが指先に染みるな。
「ちょっと失礼!」
ナギがチャラい口調でウチの頭にポンと手を添える。
コイツの
こんなチャラ男に頭なんて触られたくない。
マジでキモい。
「ターゲットが見えたぞ」
スコープ越しに覗きながら、ウチは異能力者を見つけた。21階の部屋でモジャモジャ頭の中年がパソコンに向かっていた。カーテンも閉めず、油断しきった顔。
「たしか、作家だったよな。売れたアピールのホテル暮らしかよ。調子に乗りやがって」
ホテルの部屋で、モジャモジャ頭のじじいがホテルの机でパソコンを使って何か作業をしている。
事前情報だと、アイツは元売れねぇ作家らしい。
売れて調子に乗ってるみたいで、高級ホテルで書きたいって編集者にこのホテルを予約させた。
高層階だと思って油断しているのか、カーテンをしてない。丸見えじゃねぇか。
「ナギ、弾の誘導頼むぞ」
「OK!」
スコープの中央に異能力者の後頭部を捉えた。
ウチが引き金を引けば、アイツの人生は”終わる”。
だけど、ウチには関係ない。
「よし……死ね」
引き金を引くと、銃声は消音装置が飲み込む。
弾は風に流されたが、ナギの異能力で修正される。
命中。
でも、窓も割れていない。ターゲットは血を流していない。
これでいい。ウチらは”殺し屋”じゃない。
弾に込められたウチの
その証拠にターゲットは、パソコンを打つ手を止めると狂ったように頭を抱え始めた。どうやら、成功したようだ。小説が書けなくなって、売れないダメ作家に逆戻りか?
まぁ、異能力で良い夢を見たんだから、もう満足だろ? お前みたいな異能力者に生きる権利はないんだよ。
「よし、駆除完了!」
「カレンちゃん、お疲れちゃん!」とナギがウチにハイタッチを要求する。
ウチは、嫌々ナギとハイタッチをした。
「ミサキ、頼む」
ミサキが手を差し出すと、ライフルは一瞬で姿を消した。
「よし、アイに報告して帰るぞ」
「OK! アイちゃんに完了報告メール送信っと!」
ナギが軽々とスマホの画面をタップする。
ウチとミサキはそれを無視して屋上の階段へと向かう。
また、異能力が1つ死んだ。
いつになったら、ウチらが探している”あれ”は出てくるんだ。
それに、ウチが探している”あの”
「いつになったら、こんなこと辞めれるんだろう」