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第6話 異能力(アビリティ)の奴隷たち

「ヒヤマさん!」


 ワタシがキャストの休憩室に入ると、衣装のままのミミさんが手を振ってきた。フリルのついたレースのドレス。細身の体に詰め込まれたたわわな胸が、今にもこぼれそうになっている。


「ミミさん、どうされましたか?」


異能力アビリティって……何なの?」


「ララにも教えて~!」


 双子の妹・ララさんも便乗してきた。

 ミミさんと対照的に胸は控えめだが、尻はマリアさん以上に豊満で、尻フェチの客からの指名が多い。

 性的魅力が対照的なこの2人は、ペアで指名されることも多い。

 クイーン×ビーにとって大切な稼ぎ頭だ。


 なるほど、2人は異能力について何も知らないか。

 本来、ただの風俗嬢の2人に教える必要はない。

 だが、いずれ彼女たちを異能力者サーヴァントにするなら、今説明しておいても損はない。


「いいでしょう。教えましょう」


「「やったー!」」


 双子は軽く手を叩いて小躍りした。

 まるで、社交辞令みたいな喜び方だが、まぁ、いいか。


「じゃあ、2人は異能力って何だと思いますか?」


「ミミ、わからない」


「ララ、わかるよ! えっと、超能力みたいなやつでしょ! マンガに出てくる」


「ララさん、いい線いってます。超能力に近いけど、火を出したり、水を出したりなどの派手なものはありません」


「そうなんだ~。じゃあ、ミミいらなーい」


「ミミさんはどんな異能力なら欲しいと思いますか?」


「空が飛べるやつ!」


 ……体は大人、頭は小学生以下か。


「ララさんは?」


「う~ん、お金をたくさんもらえるやつ!」


「ミミもそっちがいい!」


 まったく、バカなことに関しては息ぴったりですね。


「でも、マリアさんが全部の異能力を産んでるんだよね」


「そう通りです、ミミさん。全ての異能力はマリアさんの天地創造クイーンから産まれています」


「へぇ~。じゃあ、その天地創造は誰が産んだの?」


 ララさん、意外と鋭いところ突くな。


「それは誰にもわかりません。鶏が先か卵が先かと同じで、始まりは謎のままです」


「鶏? 卵? それって親子丼の話?」


「あ、ララ、お腹空いてきちゃった……」


「ミミも~。ヒヤマさん、親子丼買ってきて~!」


「はいはい、わかりましたよ」


 異能力への関心はすっかり親子丼にすり替わってしまった。まぁ、彼女たちに理屈で説明しても理解は難しいだろう。


***


 親子丼で満足した双子は、その後の接客も絶好調だった。やはり2人の人気は凄まじく、2人セットでの指名ばかり。マリアさんには及ばないけど、指名率が抜かれるのも時間の問題かもしれない。


「ヒヤマさん、お疲れ様!」


「ミミさん、お疲れ様でした」


「ララ、気になったことがあるの」


「何ですか?」


「異能力者って言うでしょ? サーヴァントってどういう意味?」


「仲間って意味ですよ! 天地創造から産まれた仲間って意味ですよ」


「そうなんだ! ララも異能力者になる!」


「ずるい! ミミもなる」


「ありがとうございます。お二人とも、またご指名が入りましたので、準備してください」


「「は~い!」」


 双子は元気いっぱいに返事をしてプレイルームへ向かう。

 どうして、あの子たちに本当のことを言わなかったのか?


「サーヴァントは奴隷。ワタシを含めた全ての異能力者が異能力の奴隷なのですよ」


 まぁ、知らない方が幸せなこともある。

 もしかしたら、嫌でも思い知らせる日も近いかもしれないでしょう。


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