「ヒヤマさん!」
ワタシがキャストの休憩室に入ると、衣装のままのミミさんが手を振ってきた。フリルのついたレースのドレス。細身の体に詰め込まれたたわわな胸が、今にもこぼれそうになっている。
「ミミさん、どうされましたか?」
「
「ララにも教えて~!」
双子の妹・ララさんも便乗してきた。
ミミさんと対照的に胸は控えめだが、尻はマリアさん以上に豊満で、尻フェチの客からの指名が多い。
性的魅力が対照的なこの2人は、ペアで指名されることも多い。
クイーン×ビーにとって大切な稼ぎ頭だ。
なるほど、2人は異能力について何も知らないか。
本来、ただの風俗嬢の2人に教える必要はない。
だが、いずれ彼女たちを
「いいでしょう。教えましょう」
「「やったー!」」
双子は軽く手を叩いて小躍りした。
まるで、社交辞令みたいな喜び方だが、まぁ、いいか。
「じゃあ、2人は異能力って何だと思いますか?」
「ミミ、わからない」
「ララ、わかるよ! えっと、超能力みたいなやつでしょ! マンガに出てくる」
「ララさん、いい線いってます。超能力に近いけど、火を出したり、水を出したりなどの派手なものはありません」
「そうなんだ~。じゃあ、ミミいらなーい」
「ミミさんはどんな異能力なら欲しいと思いますか?」
「空が飛べるやつ!」
……体は大人、頭は小学生以下か。
「ララさんは?」
「う~ん、お金をたくさんもらえるやつ!」
「ミミもそっちがいい!」
まったく、バカなことに関しては息ぴったりですね。
「でも、マリアさんが全部の異能力を産んでるんだよね」
「そう通りです、ミミさん。全ての異能力はマリアさんの
「へぇ~。じゃあ、その天地創造は誰が産んだの?」
ララさん、意外と鋭いところ突くな。
「それは誰にもわかりません。鶏が先か卵が先かと同じで、始まりは謎のままです」
「鶏? 卵? それって親子丼の話?」
「あ、ララ、お腹空いてきちゃった……」
「ミミも~。ヒヤマさん、親子丼買ってきて~!」
「はいはい、わかりましたよ」
異能力への関心はすっかり親子丼にすり替わってしまった。まぁ、彼女たちに理屈で説明しても理解は難しいだろう。
***
親子丼で満足した双子は、その後の接客も絶好調だった。やはり2人の人気は凄まじく、2人セットでの指名ばかり。マリアさんには及ばないけど、指名率が抜かれるのも時間の問題かもしれない。
「ヒヤマさん、お疲れ様!」
「ミミさん、お疲れ様でした」
「ララ、気になったことがあるの」
「何ですか?」
「異能力者って言うでしょ? サーヴァントってどういう意味?」
「仲間って意味ですよ! 天地創造から産まれた仲間って意味ですよ」
「そうなんだ! ララも異能力者になる!」
「ずるい! ミミもなる」
「ありがとうございます。お二人とも、またご指名が入りましたので、準備してください」
「「は~い!」」
双子は元気いっぱいに返事をしてプレイルームへ向かう。
どうして、あの子たちに本当のことを言わなかったのか?
「サーヴァントは奴隷。ワタシを含めた全ての異能力者が異能力の奴隷なのですよ」
まぁ、知らない方が幸せなこともある。
もしかしたら、嫌でも思い知らせる日も近いかもしれないでしょう。