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第8話 純粋無垢(パフューム)の香りはお好きですか?

「そういえば、カレンちゃん」


「なんだ、ナギ?」


「カレンちゃんって、どうしてこの店で働いているの?」


「はぁ? なんだよ、急に」


「いや、別にヒヤマさんに弱みを握られているわけじゃないだろ。こんなヤバいことしないで普通の生活すればいいのに」


 オレたちが次の駆除依頼が来るまで、クイーン×ビーの休憩室で時間を潰していた。そんな中、ナギがカレンに突然質問をぶつける。


 オレは知っている。カレンがここで働いている理由を。

 ナギはしつこく聞くけど、カレンは話すつもりはない。

 カレン、悪いけど話すぞ。


「”純粋無垢パフューム”」


「”純粋無垢パフューム”? なんだよ、ミサキチ、それは?」


「カレンが探している”異能力者サーヴァント”」


「ミサキ! 余計なこと言うな!」


「なるへそ、ヒヤマさんに弱み握られちゃっているね」


「そういう、お前はなんでじじいに従っているんだ」


 カレンは話題を逸らすように、ナギがここで働く理由を訊ねる。


「おれっち? 金かな。この仕事以外にクイーン×ビーの女性用風俗のセラピストやってんだよ」


 ナギは女性用風俗のセラピスト。

 クイーン×ビーは表向きはラブホテルだけど、異能力アビリティを産み出すために風俗営業もしている。

 だけど、女を異能力者にするために風俗で集まるわけがない。その対策として”女性用風俗”も行っている。


 そのおかげで、大量の女の異能力者を増やせてヒヤマさんが喜んでいた。


「お前みたいな奴を指名する女いるのか?」


「ひどいな カレンちゃん。おれっち人気なんだよ。リョウ、マコトの次にね」


「3人しかいないセラピストの最下位じゃねぇか」


「あれ? そうか?」


 やっぱり、ナギはバカだ。

 いや、心の底が見えないというのが正しいか。


「そ、その、女性用風俗っていいのか?」


「あれ? カレンちゃん、興味津々?」


「うるせぇ! ほら、さっさと仕事するぞ!」


 結局、カレンがどうして純粋無垢を探しているのかは、語られなかった。それでいい。オレは知っている。カレンの大切な人が純粋無垢に奪われたことを。


 ヒヤマさんとカレンが2人で休憩室にいる時に、その話をしているのをオレは聞いてしまった。

 その情報を得るために、因果応報キラーの異能力者になったことも。


 カレン、お前は自ら地獄に来たんだな。


 それに比べてオレが武器商人ブラック×マーケットになった理由は単純だ。

 武器が好きだからだ。誰かを殺したいとか、傷つけたいとか、そんな気はない。

 単純に自分が思い描いた武器を手にして眺めていた。


 ここにいるみんなのような深い理由はない。

 武器を創ったり、亜空間から取り出すことしか出来ない異能力。

 禁止事項タブーは自分の創った武器で命を奪ってはいけない。

 創った武器はカレンが異能力を殺す以外に使わない。多分、オレが禁止事項で死ぬことはない。


 2人とも、もし、オレが禁止事項で死んだら笑ってくれ。


「何、やってんだよ。ミサキ、行くぞ!」


「ミサキチ、行こうぜ!」


 オレはこの居場所を失わないために武器を創り続ける。

 せめて、コイツらを守れるくらいの武器を。



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