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【1-6】鋼鉄の右腕

 意識が研ぎ澄まされていく。

 お守り代わりのペンダントは光を放ち、そこから半透明の膜が身体全体を覆う。

 続いて合金製の鎧が形成される。自分の右腕に機械仕掛けの鎧。赤と銀を基調とした鋼鉄製のガントレットが指先から肘まで覆うように展開する

 掌の部分にはヒカルのペンダントと同じ鮮やかな青白い光が宿っていて、まるで生きているかのように光り輝いていた。

(これ……もしかしてI.De.Aなの? 右腕だけ?)

 ヒカルはジッと掌と右腕を見つめる。普通のI.De.Aなら全身とは言わず身体の殆どに合金製の鎧が展開されるはずなのに、いつまでたっても右腕だけだ。

 これで完成なのか。ヒカルが眉をひそめると、突然頭の中に甲高い電子音が鳴り響いた。

 ターゲットシステムにロックオンされた。本能的に電子音の意味を察し、すぐに前を向く。

 先ほど吹き飛ばしたはずのアンドロイドが体勢を立て直し、今にも襲い掛かろうとしている。

 青みがかっていた視界がぐるりと回り、赤みがかる。同時に、アンドロイドがスラスターから推進剤を噴射して突撃してきた。

(やっぱりきたっ!)

 ショートソードを構えてこちらへと向かってくるアンドロイド。ヒカルが後ろへ下がって避けようとするその前に、ヒカルの右腕が動き出す。

 相手に向かって掌を突きつける。手の甲から見える青白い光が輝き、フィイィイィンと風を切るような音を発生させる。

 なにかがくる──そう思ったとき、ヒカルの掌から青白い光線が撃ち放たれた。

 亜音速をゆうに越えるビームはまっすぐに飛翔し、飛び込んできたアンドロイドの右腕を貫き、I.De.Aごと破壊する。

 とはいえ相手は機械だ。攻撃によって勢いは失うものの、痛みに悲鳴をあげることなく、右手に持っていたショートソードを左手に持ち替えてヒカルへと迫ってきた。

 立ちふさがるアンドロイド。左手に持ったショートソードを逆袈裟で振り下ろしてくる。

 ヒカルがアンドロイドの動きを見つめる。コンマ一秒の世界で、ヒカルの体に生体電気が迸り、右腕が勝手に動き出す。

 振り下ろされる相手の動きにタイミングを合わせ、開いていた手が閉じて拳を作り出す。動かすというよりもまるでそこへ誘導されるかのように、ヒカルの身体は自然に動く。

 一歩前に踏み込んで腕を突き出す。握りしめた拳の甲で振り下ろされたショートソードの腹を叩いて弾き、そのまま手を開いてアンドロイドの左腕に突きつける。

 再び鳴り響く風を切るような音。ヒカルの右手の掌から青白い光線が放たれ、アンドロイドは両腕を失った。

 アンドロイドは攻撃の勢いそのままにぐるりと回った。ヒカルの目に映りこむのは推進剤を噴き出すスラスターだ。

(今しかない!)

 咄嗟に右手を伸ばすヒカル。スラスターを掴むと思いっきり力を込める。

 バキィイィンッと合金製のスラスターが砕け、続けてもう1基のスラスターを掴んだ。

 グッと全身に力を入れて踏ん張り、そのままアンドロイドを振り回す。

「らあぁあぁっっっ!!!」

 もう1基のスラスターを砕き、空中へと投げ飛ばす。乱回転しながら飛んでいくアンドロイドに目線で照準を合わせ、もう一度右手を突き出した。

 ターゲットシステムがアンドロイドのI.De.Aのチェストコアをロックし掌が光り輝く。

「これで、終わり!」

 フィイィイィンと風を切るような音が室内に鳴り響く。圧縮された青白い光線が放たれ、ものの一瞬でチェストコアごと、アンドロイドのボディを撃ち抜いた。

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