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【6-6】Verseday第2回戦その2

 そしてBLAST.Sが始まる。

 ヒカルは専用I.De.A『ハートブレイカー』を身に着け、対戦相手である萌は量産型I.De.A『デルフィニウム』を身に纏う。

「とりあえず2連勝、させてもらうから」

 I.De.Aを着た萌が不敵な笑みと共に宣言する。

 強気な言葉と態度に会場は盛り上がり、囃し立てるように「オォオォー」と低い声が響く。

 ヒカルは口を引き結んで構えるだけだ。クールに構えて無視をしたわけではない。単純に盛り上げるような言葉が思いつかなかったのだ。

『ヴァザーリ屋久萌! 堂々と勝利宣言です! デビューからまだ半年も経っていないというのにこの圧倒的な自信! これは自らの実力を確信しているのか、それとも過信しているのか!? 対する千倉ヒカル! クールな表情で右手を構えるだけ! 効いてないアピールか!? それとも警戒心丸出しか!?』

 実況役のアナウンサーが楽しそうに捲し立てる。

 既にパフォーマンスで先手を取られている。ヒカルは生唾を呑み込み、右の掌をさらに前へと突きつけた。

「そっちも本気でやってよ、ヒカル」

 言葉と共に萌が構える。腰をかがめて、左足を前に出して両手で武器を持つ。

 楕円形のレールが取り付けられた黒い円筒状の得物は、それだけ見れば護身用にもならない謎の武器だ。

 萌の脳波にデルフィニウムが反応し武器が起動する。円筒の先端からオレンジ色のエナジービームが放出されその場に留まる。

 長さにして1メートルほどの光刃は萌の顔を淡く照らした。

(……あれが、エナジービームソード)

 エナジービームをその場に収束し続け発振させる近距離用の武器。特徴はなんといってもその威力。ビーム由来のその攻撃を受け止められるのはエナジービームの力場に干渉できる武器だけ。

 基本的には攻撃を避けるしかない。それはヒカルのハートブレイカーでも同じことだ。

(でも……あれだけなんだよね。萌さんの武器は)

 明らかな弱点に注目し、ヒカルはフレームに搭載されているバイザーで武器の情報を改めて確認する。

(付け入る隙はあるはず……)

『さぁまもなく始まります! Verseday2回戦! 千倉ヒカル対ヴァザーリ屋久萌! 互いに1勝をしている2人! この曇天の下! 勝利という名の陽射しを浴びることができるのはどっちなのか!』

 ステージ上方に巨大なホログラムが投影される。カウントダウンを告げる数字が表示され、会場内の興奮は最高潮へと達する。

 グッと掌に力を込める。バイザーから見える青みがかかった視界が赤く染まり、萌をターゲットシステムが捕捉した。

 そして、戦いの始まりを告げる電子音が、会場中に鳴り響いた。

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