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第24話 致命な陰謀と生き抜く知恵


メディア関係者にとって、スクープはまさに金脈だ。一級のネタを手に入れれば、表に出さずとも裏で売買できる――そんなチャンスを彼らが逃すはずもない。


カメラの前で、早川奈緒は言い終えると、さっと背を向けてその場を離れた。


「奈緒、覚えてなさいよ!」愛花は悔しさを噛みしめ、歯を食いしばる。さっき奈緒がカメラの前に立った瞬間、心臓が喉まで飛び出しそうだった。もう少しで、奈緒にすべてを壊されるところだったのだ。


「愛花、気にするな。」智洋は妹がふらつくのを見るや、すぐに支えた。


愛花は智洋の腕をしっかりと掴み、ほとんどもたれかかるようにしていた。カメラの死角に入ると、声を潜めて震える声で言う。「兄様、お姉ちゃん、私のこと狙ってるよね?この番組で、わざと嘘を言って私を陥れようとしてるんじゃない?」


智洋は愛花を守るように抱き寄せ、冷たく答えた。「心配するな。そんなことは絶対にさせない。」


「忘れないで、兄様は前にあの人に高額生命保険をかけたんだよ。最悪の時のために……もし本当に私を潰しに来たら、その時は……」智洋が声を落とすと、二人の間に言葉はいらなかった。


「でも……」愛花が小声で続ける。現場には多くの人がいると警戒しているのだ。


智洋は優しく頭を撫でた。「大丈夫だよ。君は優しすぎるんだ、いつも彼女のことを気にして。忘れないで、君こそがこの家で大切に育てられた子なんだ。僕たちは、君の味方だよ。」


愛花はようやく微笑み、そっと「兄様、ありがとう」と呟いた。


二人は言葉を交わしながら、冷泉慎也の後を追う。竹下周平は黙ってその背中を見送り、ふと複雑な表情を浮かべていた。


カメラマンも急いで後を追う。ディレクターの永田茂は空を見上げ、考え込む。


「早川奈緒の言ってたこと、本当かもしれないな……もし風が強くなったら厄介だ。」彼は小声で呟き、すぐにスタッフへ近くの安全な場所へキャンプを設営するよう指示を出した。三十人を超えるチームにとって、安全が最優先だ。


一方、早川奈緒は手首を軽くさすりながら、あたりを見回していた。


「この林の中で食料を探すなら、狩りしかないけど、道具がないな。」内木克哉が言い、水鉄砲を取り出した。


「短刀、ロープ、水鉄砲、催涙スプレー……これじゃ狩りはほぼ無理ね。」小野寺美咲は首を振る。


小関夏葵が催涙スプレーを手に、「これって動物にも効くのかな……?」と不安げに尋ねた。


「ぷっ……」美咲は思わず吹き出す。その光景を想像すると、どうしても笑ってしまう。


「何かに使えるかもしれないから、しまっておこう。」奈緒が指示を出す。「今のうちに罠をいくつか仕掛けておきましょう。今日の夜に無理でも、後で役立つはず。」


みんなが一斉に動き出す。奈緒は短刀で木の枝を削り、内木克哉は穴を掘り、美咲と夏葵は枝や薪を集める。それぞれ役割分担もばっちりだ。


あっという間に罠が完成し、薪も山ほど集まった。


「薪は先に洞窟まで運んで。僕と内木さんで食料を探してくる。」奈緒が手際よく指示を出す。


美咲は夕焼けに染まる林を見上げ、不安そうに夏葵に話しかける。「もう少し薪を拾っておこう。もし本当に風が強くなったら、夜は焚き火が必要になるから。」


「うん。」夏葵が頷く。


奈緒と内木克哉は海辺へと向かった。距離はそれほどなく、すぐに到着した。奈緒は浜辺に立ち、何かを思案している。


「魚を捕るつもり?こんな浅瀬じゃなかなか……」内木克哉は周囲を見渡した。


その時、奈緒はそっと脇に寄り、何種類かの葉を摘んで手のひらで揉み、それを海に投げ入れた。


内木克哉は不思議そうにその様子を見ていたが、何も言わずじっと見守った。


すると、驚くべき光景が広がった。魚の群れが、何かに引き寄せられるように集まってきたのだ!


内木克哉は息を呑み、目を疑った。カメラマンも慌てて近づき、レンズを向ける。


奈緒は靴を脱いで水に入り、手際よく二匹の大きな魚を捕まえて岸に放り投げた。内木克哉も必死で魚を捕まえようとしたが、滑って逃げられてしまう。


「逃がさないぞ!」内木克哉は焦って追いかけた。


奈緒は素早く近くの木の枝を手に取り、見事に三匹の魚を突き刺した。ずっしりと重い枝を抱えて引き上げる。


「やった!僕も捕まえた!」内木克哉は嬉しそうに手のひらサイズの魚を持って戻ってきた。奈緒の大きな魚を見比べ、思わず苦笑いする。


「どうやったの?さっき葉っぱを海に入れただけで、魚が集まってきたなんて……」内木克哉は思わず聞かずにはいられなかった。


奈緒は靴を履き直しながら説明した。「岸辺にはドクダミが生えてて、その匂いがすごく強いの。いくつかの草と混ぜて海に投げ入れると、魚にちょっとした幻覚作用があるのよ。同じ匂いに引き寄せられて集まってくるし、浅瀬は酸素が少なくて動きも鈍い。だから今のうちに捕まえやすい。でも、海水が流れると匂いが薄れて、魚もすぐに逃げちゃう。」


内木克哉は説明を聞きながら、今までのクールなイメージが崩れていく。その目は奈緒を見つめ、まるで新しい世界を発見したかのような熱いまなざしを向けていた。寡黙な国民的俳優が、すっかり「なぜなぜ少年」に変貌してしまった。


【兄様キャラ崩壊!この知識欲!】

【奈緒、チートすぎるでしょ?素手で魚群を呼び寄せるなんて!】

【草のレシピ教えてほしい!サバイバルの神技!】

【魚を捕まえる姿が可愛すぎる!ギャップ萌え!】


配信画面は「内木克哉のギャップ萌え」と「奈緒のチート技」でコメントが一気に溢れ返っていた。


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