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異世界最先端の村へようこそ! 〜元モテ男のTS悪役令嬢ですが、賢者の彼女と一緒に土地開拓します
異世界最先端の村へようこそ! 〜元モテ男のTS悪役令嬢ですが、賢者の彼女と一緒に土地開拓します
八ッ坂千鶴
異世界ファンタジースローライフ
2025年07月03日
公開日
1.3万字
連載中
※イラストは私の相棒GPTの未来が作成したものです。未来のこだわりで角材に棒をつけています! 「咲夜くん!! 早くしないと置いてくよ!!」 「未来待って!!」 「ふふっ、ジョーダンだよー」  オレの彼女に声を掛けられ、家の外に飛び出す。オレは金森咲夜。17歳男子。のほほんと暮らしたい高校3年生。  学校いちのモテ男という、人に絡まれやすい体質のオレは、この日も焔未来(ほむらみらい)と登校していた。  しかしそれは、玉突き事故の目撃者になったタイミングで、全て崩れてしまう。 『サクラ・ドロワット!! 起きなさい!!』 「オレはサクラじゃねぇ!! 咲夜だ!! サ・ク・ヤ!!」  無作為に転生し、巨乳美少女系悪役令嬢になったオレは、異世界でサクラと呼ばれて……。 『今お父様のライム・ドロワットが狙われているの。例の醜い賢者に』  と、殺害の申し出を受け……。冒険者ギルドへ行くとそこには……。 「咲夜くん!!」 「未来!!」 「お前賢者?」 「そう……みたい……」 「ごめん、一度刺す」  その瞬間冒険者になったオレは、彼女を狙う公爵家を騙しながらの開村計画を始める!! ※DIY感覚で書いていますが、未経験者が勉強しながら書いています。食い違いについては大目に見てください。

第1話 彼女と登校中……オレ転生(TS)しました

 ◇◇◇現実世界 群馬◇◇◇



 ――「皆さんおはようございます。本日は各地で夏日となり、空も青く澄んでいます」


「この番組が終われば登校時間か……」


 オレは悪愚魔アグマ学院高等部の3年生。名前は金森咲夜さくや。17歳。まだ誕生日前で高校一位のモテ男。


 とは言っても、好きでモテ男になったわけではない。天のランダムセレクトでモテているだけ。


 黒い制服に青いネクタイ。髪は……まあ、寝癖より派手なボサボサ頭で、青みがかった黒髪。この寝癖は天然パーマだ。


 親のいない自宅で身だしなみを整える。親がいないのは死んだのではなく、ただ早出出勤でいない。両親は共働きなのだ。


 代わりにオレには彼女がいる。今日も彼女と登校するのだから当然のこと。


 元々、女には興味が無い。むしろ女になりたい。なんせ小顔美人の女性顔。小さい頃は、よく近所から女と間違われてきた。


 男で生まれたのは、神のイタズラやら運命さだめだろう。興味が無いからランダムセレクトとしておく。


 そもそも神など信じてはいない。自由に性別を選択できるのなら、それ以上嬉しいことは存在しないはず。


 よってオレは、生まれ変わるなら女か男性顔の純正男子を希望。叶う可能性は低いが……。


 ――「それでは皆さん。今日も元気に行ってらっしゃい!」


 テレビを消して席から立ち、一人戸締りを進める。カバンを近くに置くと、ソファに座って彼女の呼び出しを待つ。

 テーブルから見て奥は廊下。右は玄関。左にはトイレがある。真正面はオレの部屋で高級感など皆無の一軒家。


『咲夜くーーん! 一緒に行こ! 早く来ないと置いてくよ!』

未来みらい待って!」

『ふふっ。ジョーダンだよーーー』


 オレはカバンを鷲掴みにして、勢いよく扉を開ける。そこには、玄関前で壁を作るセーラー服の小柄な少女。

 セーラー服の襟元には、黄色と緑のラインが入っている。そんな彼女は、オレが唯一好きになった同学年のほむら未来みらいだ。


「今日は暑いね」

「まだ春なのに夏日だってよ」

「地球温暖化のせいかな?」

「かもな。ってことは排気ガスか……。田舎臭いここじゃあ車が便利だからなぁ……」

「たしかに電車少ないもんね……。もっと交通網増えればいいのに……」

「事故ったら終わりだよ……。未来みらい

「自動車も電車も……。飛行機だったらもっと怖いよ」

「おお、恐ろしいこと言うな!」


 彼女との会話はとても楽しい。なぜ好きになったか? それはオレを見てもキーキー言わないから。

 彼女はオレを一人の男として見ている。


 他の女子はウザいし声援も暑苦しく、イケメンアイドル扱い。実際オレはアイドルではない。ただの一般人だ。


「行こうか」

「うん!」


 オレは未来みらいの左側に立ち、歩調を合わせて歩道を歩く。家を出てすぐに車道。学校に近づくにつれてうるさいヒヨコが列を成す。


『咲夜先輩おはようございます!』

『今日の咲夜先輩もかっこいい! サインいいですか?』

『良かったら今日一緒にお昼食べたいです! お弁当二つ作ってきたので!』

『もう、ズールーいー。咲夜君は私のものよ?』

『ちーがーいーまーすー!』

『ちょっと見えないよぉー。アタイにも見せてなのぉー』

『絶対カメラに収めるんだから! セーンパーイ! こっち向いてくださーい!』


「咲夜くん今日も大盛況だね」

「そうだな……」


(ウザい、しつこい、順番守れ、いい加減消えろ……。サインなんか持ってねぇよ小賢しい……)


「咲夜くんなんか言った?」

「う、ううん。何も言ってない。大丈夫」

「それなら良かった」


 全く良くない。うるさい人は嫌いだ。耳が痛くなる。加えて今日は、車のエンジン音が聞こえないくらいの声量。

 迫る信号。点灯している色は赤。埋め尽くす女性陣の声は消えない。直後……。


 ――ズドーン! キィィィィン……。ガシャーーーン!!


「ちょ!? 玉突き事故!?」

「なんか怖いよ……」

「だだ、大丈夫だって!!」


 突然の交通事故。信号待ちの車は衝突したトラックで炎上している。その後ろにもトラックが……。


 ――ドガシャーーーン! ボワンッ!


『かか、火事だアァーーー。こっちに来るぞ!!』

「んな!? 未来こっちに来い!」

「わ、わかった!!」


 オレは未来の手を強く握りしめ、学校の方向とは逆方向に走る。玉突き事故は終わる気配がない。次から次へと被害が大きくなっていく。

 ちらりと後ろを確認すると、うるさいヒヨコは跡形もなく消えていた。せめてオレ達だけでも生き残りたい。


 ――ドグワァン!


「車が跳ねた!? 路地裏にまわるぞ!!」

「了解!!」


 宙を舞う車。玉突きの巻き添いになった反対車線の普通車だ。トラックはというと火をまとって接近中。

 ビルの路地裏も焼け焦げた臭いが充満していて、握る手とは反対の手で口を抑えても意味がない。


「咲夜くん! あれ!」


 未来が一瞬口から手を外し前方を指さす。それはパルクールで移動可能な燃える緑色のフェンスだった。


「そんな……。挟み撃ちかよ……」



 ◇◇◇並行世界 グンマー帝国◇◇◇



「サクラ?」


(サクラって誰だよ……)


「サクラ・ドロワット?」


(だからサクラって誰だよ……)


「サクラ・ドロワット起きなさい!」

「だからオレはサクじゃねぇぇぇぇぇぇ!! 咲夜だ!! サ・ク・!!」


 ――ボインッ!


「ファ!?」


 ――ボイン! ボイン!


「嘘……だ……ろ?」


 ――ボインボイン。ぷにぷに……。ボヨン!


「きょっ! きょにゅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうううう?」


 どう見ても胸が大きすぎる。男の身体じゃない。100パーセント。いや1000パーセント女性の身体だ。

 髪の毛も長い。長い髪がウザい。邪魔。毛先がものすごいチクチクする。

 ショートヘアにさせたい。髪色は黒髪。しかも白のメッシュ入り。


「サクラ・ドロワット。あなたにお願いがあるの」

「の前にアンタ誰?」


 見るからにゴスロリみたいな服装。恐ろしいくらいの悪女ワル顔で、優しい未来みらいと区別できるくらい真逆だ。

 そもそも日本人顔ではない。フランスか? まるでおとぎ話の意地悪女。名前は出てるけど言わないでおこう。


「忘れたの? 姉のライチよ。ライチ・ドロワット」

「いや、オレに姉ちゃんいな……」

「べちゃくちゃ言わないでアタシに従いなさい。サクラはそれだけしてればいいから。

 今お父様のライム・ドロワットが狙われてるのよ。かの有名な女性賢者に……。

 そこでよく出没する冒険者ギルドに張り込みして、殺してもらえないかしら?」

「オレが?」

「ええそうよ」

「いやお前がやれよ。オレにそんな権利ねぇし」

「ここは公爵家よ。長女のアタシにやれと言うのですか? アタシにはお父様をお護りする仕事があるわけ。どうせ暇よね?」

「一体どうなってんだよ……。うるせぇ女だなぁ……」

「まだ歯向かうのね。同時にサクラも女じゃない。その口調は合わないわ」


(んならどう話せってことなんだよ。クズ女。いやここはノーマルで行こう。その方がいい)


「じゃ、じゃあ。わかりました。お、お姉……様……」

「頼んだわよ?」

「任せてください。行ってきます」


(ほんとにこれでいいのか? やっぱ人殺しすんならナイフだよなぁ。今いるのがベッド。目の前にドレッサー。

 左側には装飾付きの窓。ベッドの右隣には小型のチェスト。その先にはクローゼットと入口。まずはチェストの中をっと)


 オレは慣れない胸付きの身体を捻り、チェストへ手を伸ばす。しかし胸が邪魔で届かなかった。


「引き出し開けるなら立てってことか……。仕方ねぇ……。動きづらいけどやるか……」


 のっそりと立ち上がり、チェストの前で屈む。引き出しの数は4段。この中にナイフがあるのだろう。


「一番上は。髪飾りやクシをしまっている可能性が高いよな……。3段目はハンカチ類のはず。

 そういえば、未来みらいは3段目と4段目に折り紙やシュシュを……。ってことはここか?」


 オレは2段目の取っ手に指を引っ掛ける。


 ――ズズズゥゥゥゥゥゥゥゥ……。


「きっとこの奥の方に……。う、腕が入らねぇ……。この……このドレス、袖厚すぎだろ! 

 も、もうちっと……奥に入りゃ……いいんだが……。おっ!? あったあった……」


 引き出しから取り出したのは折りたたみ式のナイフ。試しに本物か確認するため、自分の手の甲を切り裂いた。

 滲み出す赤い血。3段目の引き出しを開き手ぬぐいを取り出す。サッと拭き取ったら今度は一番上の引き出し。


絆創膏ばんそうこうあれば……。っと……。花柄か……。ま、いいや。サイズもちょうどいいし。ナイフは……折りたたんで袖の中に隠しとけば……」


 拭き取ったばかりの手ぬぐいは、キレイな面にしてドレスの飾り風に。できるだけ隠蔽しておく。

 人殺しなんかできっこない。けど動かなければ嫌なことが起きる。それも避けたいことの一つだ。


(あとはどうやって外に出るか……。この家の中を通れば危ないかもしれないな……。

 そういやあの窓、枠を外せられるなら行けそうだな。いっちょやってみっか……。ん? いや待てよ?)


 一度オレは窓の前で立ち止まる。そこに付いてたのは何やら脱出ボタン的な物。

 本当にそれ・・なのかはわからない。ただ単にそう見えただけだ。

 けれども押してみたくなるのが人。一度気になってしまったら……。


「ポチッとな」


 ――ガタン。ガバッ! ヒューーーん……。


「……よっと!」


 ――ボヨンッ!


「だから胸邪魔なんだっつーの! けど、この抜け道使えるな……。覗いた感じじゃあ登れなさそうだが……。

 マークだけはしておくか……。次は冒険者ギルドだな。公爵家ってなるとオレは令嬢だしギリギリ冒険者なれないか」


 本当は冒険者がよかった。成れるのなら……。


 成れるの……なら……。

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