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第12話 暗黒料理対決

涼太の指先が選択肢の上で止まった瞬間、突然スマートフォンが着信で強制的に画面を占拠された——小野麻衣のアイコンが激しく点滅している。

「佐藤くん、早く配信を見て!」泣きそうな声で叫ぶ。「グルメチャンネルの特別番組!」

コンビニのテレビ画面には、星野葵がエプロン姿でキッチンカウンターの前に立っている。その前には真っ黒に焦げた卵焼き。司会者は必死で笑いをこらえながら、「星野さんの“分子料理”、本当に…独特ですね」とコメントする。

カメラが審査員席を映す。涼太の瞳孔が一気に開く——藤原麗子が優雅にイカの刺身を切っている。その隣にいるスキンヘッドの審査員の右手小指には、早川家に伝わる翡翠のシグネットリングが光っていた。


【緊急ミッション:料理対決】

【目標:審査員の毒盛りの陰謀を暴け】

【報酬:永久料理スキル】


***


スタジオの控室で、葵は焦げついた弁当箱を強く握りしめていた。「先生のレシピ通りに作ったのに…」

「誰かが君の食材をすり替えたんだ。」涼太は葵が使ったみりんの瓶を手に取り、【テイスティングマスター】のスキルですぐに異常を見抜く。「これ、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤が混入されてる——味覚が麻痺する成分だ。」

突然スタジオが停電し、暗闇の中で涼太は葵を隅に押しやる。サーモグラフィーで三つの赤いシルエットが調理台に近づいているのが見える。そのうちの一人は注射器を持っていた。

「動かないで。」涼太は葵の震える手を握り、「今から実践化学を教える——重曹でスモークを作る方法だ。」

調理台のベーキングパウダーをシンクに投げ入れると、沸騰した泡が一気に広がる。その隙に涼太は葵を引っ張って審査員席へ駆け込む。彼女の耳元で素早く指示する。

「麗子さんの左隣の審査員、あの人のソースを一口試して。」

スキンヘッド審査員の小皿を、葵が勢いよく奪い取る。相手が驚愕する目の前で、涼太は高らかに宣言する。

「せっかくの審査ですから、審査員同士で料理を交換しましょう!」

配信画面が復旧した瞬間、スキンヘッド審査員は泡を吹いて倒れ、麗子のナイフの先にあったイカ刺しからは、致死量のフグ毒が検出された。


【星野葵 親密度+50】

【藤原麗子 親密度+30(評価アップ)】


***


サイレンが鳴る中、麗子はウェットティッシュで涼太の顔についた泡を拭き取りながらつぶやいた。「残念ね、本当は早川家の手先を毒殺するつもりだったのに。」

突然、何か小さなものを涼太のポケットに押し込む。それは「人体実験ファイルEシリーズ」と書かれた小型ハードディスクだった。

「これを綾に渡して。」麗子の赤い唇が涼太の頬にキスを残す。「ついでに伝えて。十年前に退学したのは霧島先輩だけじゃないって。」

葵が大きな目を見開いて声を上げる。「先生、まさか藤原さんまで…」

その時、涼太のスマホが激しく震える。早川千雪からのメッセージは殺気立っていた。


『父さんが考え直した。今夜のパーティー、あなたは私の料理パートナーになって』

『すっぽかしたら許さないから』


【ミッション「五重奏」進捗更新】

【現在の親密度:早川千雪40/藤原麗子55/星野葵90/霧島遥50/神宮寺綾60】


***


宴会場のシャンデリアの下で、千雪が包丁をまな板に突き立てた。「ルールは、各自アシスタントを連れて和牛料理を作ること。負けた方は…」

彼女は審査員席の中央に座る早川健一を指さす。「彼の特製食後酒を飲まなきゃいけない。」

涼太の【病原体ビジョン】には、あの赤いワインが毒々しく光って見えた。健一はキツネのカフスを撫でながら微笑む。「佐藤さん、解毒が得意だと伺っていますよ?」

対決の合図が鳴った瞬間、千雪は指を切ってしまう。涼太は彼女の手首をつかみ、流れる血を吸い取る。周囲がざわめく中、低い声でささやく。「君のお父さんは病気なんかじゃない。自分を囮にしているんだ。」

厨房のモニターが突然ノイズで切り替わり、地下のラボ映像になる。早川家当主が自分の腕に注射を打ち、ベッドのネームプレートには「E-001」と記されている。

「よく見てて。」涼太は千雪の手を握り、一緒に包丁を持つ。「毒を使う奴を倒す方法は…」

鉄板で和牛が弾ける音とともに、ナイフでソース皿を審査員席に向かって弾き飛ばす!早川健一が慌てて避けた拍子に、スーツの内ポケットから「Eシリーズ」と記された薬剤ケースが落ちる。

「…自分で証拠を晒させることだ。」


【早川千雪 親密度+60】

【現在の親密度:100(最大値)】

【警告:100ポイントで親密イベントを即時発動可能】


千雪は歓声の中、涼太にキスをする。その瞬間、システムのアラートと早川健一の怒声が同時に響き渡った——

「E計画を始動しろ!」


東京湾の方向で鈍い爆発音が鳴り響き、すべてのスマホに緊急警報が強制表示される。

『心筋ウイルスガスが漏洩、新宿区全域に避難指示』

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