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第13話 真夜中の救急

千雪の唇にはまだ赤ワインのほろ苦さが残っていたが、涼太は彼女を押しのけて窓際へ駆け寄った——新宿の夜空が不気味な緑色の霧に包まれている。街角のコンビニのテレビからは緊急ニュースが流れていた。


「警告! 不明なガスによる大規模な昏睡事件が発生…」


画面には倒れた通行人たちが映し出され、鎖骨のあたりにはバーコード状の赤い痣が浮かび上がっている。


「Eシリーズか…」涼太はスマートフォンを握り潰しそうになりながら呟いた。「やつら、ウイルスを都市の水道に混ぜたんだ!」


千雪は彼の手首を強く掴む。「父が地下クリニックで私たちを待ってる。彼なら抗体を持ってるはず…」


その言葉が終わる前に、涼太のスマホが神宮寺綾の位置情報を表示した——東京中央病院が緑色の霧に呑み込まれようとしている。


【最終選択】


【A. 千雪とともに抗体を手に入れる(メインストーリー進行)】

【B. 病院へ向かい綾を救出する(好感度リセットのリスク)】


***


救急車のサイレンが夜空を切り裂く。涼太が病院の救急入口を蹴破った時、緑の霧が通気口から噴き出していた。医療スタッフたちは次々と倒れていき、中央には防毒マスクをつけた早川健一が銀色の試薬箱を手に立っていた。


「残念だな」彼は足元の看護師を蹴り飛ばしながら言う。「抗体は三つしかない。綾ちゃんは君のために一つ残してくれてたのに…」


奥の手術室からガラスの割れる音が響いた! 綾が骨ノコギリを手に飛び出してくる。白衣には血痕が飛び散っていた。「涼太、来ちゃダメ! あいつ、通風システムに神経毒を仕込んでる!」


早川健一は高らかに笑い、リモコンを掲げた。「さて、今新宿中でどれだけの人間が変異していると思う?」


その瞬間、涼太の〈病原体ビジョン〉が暴走し始める。視界には人間たちの体内微生物の活動がデータの奔流となって映し出される。システムが激しく点滅する。


【遺伝子兵器の宿主を検出】

【一時解放:抗体合成(全好感度消費)】


彼は即座に確認を押した。脳内に無数の分子式が流れ込む。早川健一は、涼太が素手で注射液を調合しているのを見て顔色を変えた。「そんなはずは…そのレシピはE計画だけのもの…!」


「お前たちは東大の研究を盗んだんだろう」涼太は注射器を綾に投げ渡す。「十年前、霧島遥たちのチームはすでに抗体を完成させていた。それをお前たちが闇に葬ったんだ。」


綾は手術用ナイフを閃かせ、早川健一の首筋に注射針を突き立てる。「お前には生きて罪を償ってもらう。」


【神宮寺綾の好感度+70】

【現在値:130(上限オーバー)】


***


夜明け前の病室。抗体合成の副作用で、涼太は激しい頭痛に苦しんでいた。綾は氷のタオルを額に当て、そっと自分の看護服の裾をめくる——白い腹部には「E-108」のタトゥーが刻まれている。


「昔、私たちの研究室全員が実験体だったの」彼女は涼太の手を傷痕に押し当てながら言う。「遥先輩がデータを持って逃げたとき、抗体の核心式を…私へのラブレターに忍ばせたの。」


彼女が身を屈めると、うなじの古い注射痕が髪の隙間から覗く。「だから私、医者って仕事がどうしても嫌なの。」


突然、涼太は彼女をベッドに押し倒す。綾の瞳は朝の光に細まり、耳元で彼が囁くのが聞こえた。「通気システムの毒素はまだ拡散中だ。君の権限で院内の浄化を始めてほしい。」


「それが君の反応なの?!」綾は彼の肩に噛みつく。「ここまで見せてるのに…」


【重要選択】


【A. そのまま抱きしめる(好感度100消費)】

【B. 先に危機対応を優先(“責任者”称号獲得)】


***


浄化システムの轟音の中、涼太は病院の屋上へ駆け上がる。都市の上空にはヘリコプターが舞い、中和剤を散布していた。彼のスマホには、五つのメッセージが届く。


1. 霧島遥:「温泉旅館の水源は浄化完了」

2. 藤原麗子:「証拠は検察庁に提出済み」

3. 星野葵:「父が目覚め、偽ウイルスで早川家を脅したと認めた」

4. 早川千雪:「父がすべての抗体レシピを渡した」

5. 小野麻衣:「迎え酒のスープ、君の部屋の前に置いといたよ」


朝日が雲間を突き破ると同時に、システムのホログラムが浮かび上がる。


【任務「五重奏」完了】

【最終スキル「運命の選択」解放】

【効果:分身3体を同時に24時間維持可能】


涼太は、徐々に活気を取り戻す街を見下ろし、疲れた微笑みを浮かべた——この嵐は、まだ始まったばかりだ。

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