私は、どこにでもいるような、ド貧な地方領主の娘。
まあまあ美人だと自負している。
で、気付いたら隣の帝国様への輿入れが決まったらしい。
まあ、お年頃だし。なお相手は知らない。
そういえば、本国の王族との婚約は一体どうなったのかしら。
やっぱキャンセルしたのかしらね。帝国が積んだ持参金、いい額だったらしいし。
まあ、知らないおじさんとの結婚、しかも後妻なんて御免だから、せめてそれよりマシな相手なら、もう誰でもいいわ。
ところで、我が家の領地がド貧になったのは父の失政によるところ。
おじい様がこの領地を国王様から拝領して、一代でまあまあの街に作り上げたの。何もなかったわりには、ちゃんと都市の体裁も整えられたし、まあまあ栄えてもいたわ。でもそれは、おじい様がご存命のうちだけだった。
おじい様が亡くなると、お目付け役がいなくなったせいか、父は放蕩放題しまくって、あれよあれよと貧乏になってしまった。
おじい様が大事にしていたコレクションも、気づいたら宝物庫はからっぽ。草葉の陰でおじい様が泣いているわよ。
でもまあ、息子の教育に失敗したのはおじい様の責任でもあるわよね。
父は幾度もこの没落の危機を回避するチャンスがあったのに、私をふくめ、周囲の忠告も聞かず、贅沢三昧を続けた結果、このザマよ。
正直いって、この家はもう、手遅れ。ムリムリ。
どうせ積まれた持参金だって、父はすぐに食いつぶすに決まってる。いや、父だけじゃない。私以外の家族全員、贅沢をやめられずに今に至っている。
こんな実家、さっさとお取り潰しになって、王家にまるごと返納すればいいのよ。
そしたら本国から来た代官がいいカンジになんとかして……くれたらいいわね。
というわけで、口うるさい私と引き換えに、父は帝国様から資金援助を取り付けたワケなんだけど、いやあ、よくもまあ、こんな家に援助なんかする気になったものよね。一体なにが目的なのかしら。こんな辺境なのに。
だけど、おじい様を慕って遠くからついてきてくれた領民たちが、つくづく不憫。おじい様と一緒にこの地に腰を据えて、一緒に街づくりをしてきたみんなが可愛そう。
せめて手元にある陳情だけでもなんとかしてあげられないものかしら。
それだけが、私の心残り……。