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第2話 間髪入れずに隣国からお迎えが来ました

両親から輿入れの話があった三日後、隣国からの迎えの馬車がやってきた。

すんごい早いお迎えで正直焦ったわ。

まあ、荷造りは自分でするわけじゃないから準備に困ることはないのだけど。



このお迎えの馬車がなんかすごいのよ。帝国ってなんかすごい。

お金持ってそうな煌びやかな装飾。それと、護衛の数名の騎士たち。

こんなに金の匂いをプンプンさせたまま、よく山賊に襲われずに到着できたものね。

きっと護衛の騎士たちが優秀なのでしょう。見れば全員、上等そうな鎧を身に付けていて、まるで王族の親衛隊って風情ね。



にしても、ウチの親ときたら……。

娘の輿入れだというのに、嫁入り道具は数個の木箱のみ。

まあ、必要なものは全て先方が用意するから体ひとつで来てほしい、という申し入れだったけど、ここまでケチる必要あったのかしら?

おまけに侍女すら付けてもらえないなんて。それも現地調達しろってこと?

……よほど親に疎まれていたんだね、私って。



まもなく、馬車から怪しげなローブ男が降りて来た。

へんなアイマスクに、へんな装飾品を身に付けている。

そして宝石のついた大きな杖を持っている。

魔導師? 錬金術師?

本物なんて見たことないので、正直わかんないけど。

我が国では魔導師なんて滅多にいないから。



で、そのアイマスク男が私の前にやってくると、うやうやしく礼をして言う。


「私は皇帝陛下の命により、お妃様となられる貴女様をお迎えに上がりました。宰相にして宮廷魔導師のジェックスと申します。道中、お嬢様の身の安全は私が保証いたしますので、どうぞ安心して皇国までの旅をお楽しみください」


「よ、よろしくたのむわね」


え、こ、ここ、皇帝?

私の結婚相手って、皇帝なの?

いま初めて聞きました。いやマジで。



……で、何人目のお妃なんだろうね。

そっかあ。

やっぱ後妻コースは回避できないんだ、私って。

ま、もうどうでもいいけど。


こんな家とおさらば出来るのなら、何でもいいわ。

ここにいるよりはマシそうだしね。



「さあ、お嬢様、こちらへどうぞ」


アイマスク魔導師が私に手を差し伸べてきた。

なんか思ったより若そうな人だわ。

魔導師っておじいさんばっかだと思ってたけど、帝国じゃ若い魔導師もいるのね。


「ええ」


両親が背後で何か言ってる気がしたけど、私は無視して馬車に乗り込んだ。

振り返ってなんてやらない。

私を売った連中なんて、滅んでしまえばいいんだ。

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