装備品支給室を見つけると中に入る。
壁にはアサルトライフルやハンドガンが掛けられている。それと一緒に何かの武器らしきものも掛けられているが使い方が想像がつかないものばかりだ。
「すみませーん」
金網につけられた小窓からマッチョな若い男が顔を出した。
「はいよ。ん? 見慣れない顔だな」
相手は僕の顔を見て顔をしかめる。
「ここで装備品を支給してもらえると聞いたんですが」
「ああ、君が噂の新人さんか」
「噂?」
「ああ、気にしないでくれ。俺はガニーだ。アメリカ陸軍からの出向だ。レンジャー出身でガンマニア。よろしくな」
「神成です。日本から来ました。日本では警官してました」
簡単な自己紹介をすると僕は気になった事を聞いてみる事にした。
「ところで……さっき言っていた僕の噂って何ですか?」
ガニーさんは少し間をおいて後、口を開いた。
「君はタチアナ・バリアントと組むんだろ? あの”黒髪の魔女”と組んでどれくらい保つのかって賭けの対象になっているぞ 前回のは一週間だったな」
「あの……黒髪の魔女って?」
「タチアナ・バリアント捜査官の事だよ。ああそうか。まだ何も聞いていないんだな」
「はあ、誰と組むのかもまだ何も……」
「そうか。実は、君の相棒になる捜査官は優秀なんだが、ちょっとな……まあ、気にしないでくれ。えーと、装備品の支給品だったな。書類持ってるかい?」
ガニーは話を打ち切ったが、言いかけたことが気になって仕方がない。
「おい、早く書類」
「あ、はい……」
「銃は選べるが何にする? 俺はグロッグ19をお勧めするけどな。軽いし精度もある」
「SIG(シグ)なら使ったことがあるんだけど」
SIGは即席のSATでの訓練で使用したことのあるハンドガンだった。
ニューナンブしか使ったことのなかったが、それ以外に唯一使ったことのあるオートマチック拳銃だ。
「じゃあ、それにします。どうせ他の銃は使ったことないしね」
「OK、待ってろ」
待っている間に保管室内を眺めていると奇妙なものが視界に入った。
「おまたせ。はいよ。銃と弾薬だ。幸運を祈ってるぜ」
「どうも。あの、ちょっと聞きたいんですけど、あれはんですか? ロボットみたいなものが置いてあるんですけど」
内部に設置された荷物用エレベーターらしきもの傍にロボットのようなものが立っている。二メートルは超えていそうで大きすぎて全体がよく見えない。
「ああ、あれか。あれは零型神機兵。ロボット工学と魔術を組み合わせたトンデモ兵器だ。魔物みたいな超常的な存在に対抗できるように設計したパワードスーツだぜ」
「パワードスーツ?」
アメリカ軍や自衛隊の科学工学研究所も似たようなものを開発しているのは聞いたことがあるし、動画も見た事はあるが、どちらもフレームに駆動用の装置が取り付けたようなもので、ここまでしっかりした造りではなかった。
「駆動モーターや内部のコンピュータは電気で動いているんだが、その電気の本は、なんと魔力だ」
「魔力? 魔法とか?」
「仕組みは俺にもよく分からないが、簡単に言うと魔力バッテリーみたいなものを搭載してる。発電量的でいったらレーザー兵器だって賄えるほどだぜ」
「オ、オカルトパワードスーツってことですか」
「まあ、そんなところだな。装着型の武装パワーアシストスーツだ。米軍のHARC(ハルク)とかが参考にされてるらしいが、それを遥かに超えた性能さ。こいつはヤバめだろ?」
「まるでガンダムだ」
「そいつは知ってる。俺も大好きな日本のロボットだ。あれは最高だよな。あんなもんを作っちまう日本人は凄いよ」
「でも、こんなもの誰が使うんです?」
「ここは変わったリクエストをする連中が多いのさ」
そう言ってガニーさんは肩をすくめた。
「仕事が仕事なんでね」
一体、どんな仕事だろう? ”プレデター”か”エイリアン”でも捕らえるんだろうか?