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第42話 再会の兆し

 姫ちゃんが姿を消してから三日、毎日、仕事がない時間は姫ちゃんを探し続けた。


 いないってわかってても、謝りたくて、ちゃんと考えるからって伝えたくて、でも、彼女を見つけることはできなかった。


 そんな日々を過ごしていると、スマホのニュース速報で物騒な情報が目に飛び込んでくる。


 【指名手配犯が京都市内で多数目撃される】という記事だ。


 それも、一人や二人じゃなく、何年も捕まっていない凶悪犯が何人も目撃されてるという。

 そして、何人かは通り魔的にナイフで一般市民を斬りつけられたという被害も出ていた。まだ死人は出ていないようだが、このまま放っておくわけにはいかない。


 それに、この事件の原因をオレとイーリスは知っていた。


「勇者ダン、これは」


「ああ、姫ちゃんだな……」


 今朝から、オレの気配察知スキルに姫ちゃんの反応が出ていた。そこに向かおうとしたら、このニュースだ。


 きっと、あの子が凶を司る女神の力で、邪悪な者をオレの周囲に集結させているのだろう。オレを殺すために。


「オレはまず、凶悪犯を無力化してくる」


「わかりました。ご武運を」


「ま、人間相手なんて余裕だよ」


「いえ、姫さんのことです」


「……そう、だよな……」


 今日、この後、戦いになる。姫ちゃんと。


 その予感をイーリスも感じているのだろう。


「そっちも、任せてくれ」


「わかりました。信じて待っています」


 オレは頷いてから玄関を出た。


 気配察知スキルに反応している悪意の塊の居場所を調べる。一番反応が多いのは北東だ。まずはそこに向かうことにした。


 マンションの四階から隣のビルに飛び移り、ビルの屋上伝いに凶悪犯の元に向う。


 いくつものビルを飛び越え、反応が多いエリアにやってくると、その周囲には不気味な曇り空が広がっていた。


「きゃー!」


 そして、眼下に凶悪犯の一人目を見つける。女性を襲おうと、ナイフを振り回していた。

 ビルから飛び降り、そのまま背中を蹴ってやる。


「がっ!?」


 カラン。ナイフを落として気絶する男。


「通報をお願いします」


「……は、はい……」


 手足を縛ってから、呆然とする女性にそれだけ告げ、次に向かった。この調子で二人、三人、四人と気絶させていく。


 このあたりはもういない。次はどこだ。気配察知スキルを確認すると、次に凶悪犯が集まっている方角は、南西だった。


「ん? 増えてるな……」


 さっきまで、南西の辺りにいたのは二人だったのに、別の場所にいたやつも近くに集まっているのがわかった。その数は四人。ここに集まっていたのと同じ人数だ。


 なにか、姫ちゃんの意図を感じるが、考えてもわからないので、南西の方角へと向かう。


 ビル伝いに走っていくと、南西エリアでも、すぐに犯罪者たちを見つけることができた。気絶させてから交番の前に放り投げておく。


 これで全部だ。


 姫ちゃんは、一体なにをしたかったのか……


 いや、そんなことよりも、早く謝りに行こう。


 そしてオレはまた走り出した。姫ちゃんの反応が出ている場所目がけて。

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